第20話 プレゼント<井戸川萌子side>
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<井戸川萌子side>
今日から顔出し配信を始めることにした。
もしかしたら私は、吉瀬さんに気づいてもらいたくて、顔を隠して配信していたのかもしれない。
正体がバレてしまった今、思い切って隠すことをやめた。
ライライちゃんも顔出し配信をしていた。一度で良い、彼女と同じ景色が見てみたいと思った。
吉瀬さんに「嫌い」と言ったから、もう配信を見に来てくれないんじゃないかと思った。
——だけど、来てくれた。嬉しかった。
初めて顔出し配信をするときに、吉瀬さんがいてくれるのが心強かった。
それに今日、彼女は高額アイテムも使ってくれた。気持ちが嬉しかった。
——とはいえ、心苦しい。
私は、生活のためにライバーをやっているわけじゃない。
クラスメートに3,000コインも使わせてしまったことに、申し訳なさを感じていた。
高校生の3,000円って大金だから……。
そうだ。
私が吉瀬さんにお返しのプレゼントをするのはどうだろう。
例えば、香典返しとかって、いただいた金額の半額の品物を贈るのが一般的だと聞いたことがある。
こういったマナーを、ライブ配信でのアイテムに置き換えて考えるのは、少し変な話かもしれないけど……。
——でも、私がそうしたいと思ったんだ。
そしたら何を贈ろうかな。そもそも吉瀬さんが欲しいものってなんだろう。
コスメ? 小物? スイーツ?
わからない……。
例えば、鳴海にプレゼントを贈るときも、何を選んで良いのかわからなくなることがある。
ピアノを弾くのが好きだからと言って、音符のキーホルダーを贈るのも違う気がするし……。
あー。もう、わからない!
高校生の女子に贈るのにぴったりなものが、最初から決まっていて、教科書にでも載っていればいいのにと思う。
わたしはしばらく悩んだけど、最適の答えを導き出すことができなかった。
「ねぇ。みんなって、どんなプレゼントを貰うと嬉しい?」
——翌日の放課後。わたしはライブ配信で思い切ってリスナーに聞くことにした。もちろん顔出し配信だ。
【何でも嬉しい!】
それが一番困るんだ……。
【お金( ̄∀ ̄)】
そりゃそうかもしれないけど。
【いどっちのハート❤︎】
……。
【ライライさんが遊びに来たよ!】
ナイスタイミングで、吉瀬さんが入室した。ごくりと唾を呑む。
「ら、ライライちゃんいらっしゃい! 今ね貰って嬉しいものについて話していたんだ」
やっぱり彼女に話しかけるときは少し緊張してしまう。
【そうなんだ\\\\٩( 'ω' )و //// わたしはスタバのギフト券が欲しいかな〜】
吉瀬さんがいつも使っている勢いのある顔文字とともに答えてくれた。
……そっか。使い切れるし、便利だもんね。
そんなに高くもないし、ベストな贈り物なのかも!
私の中で一番腑に落ちた回答だった。
「ライライちゃん教えてくれてありがとう!」
悩みが解決した。嬉しくなり、自然と微笑んでしまう。
【笑顔かわいい!】
ハトゲッチュがコメントした。
……そうだ。私はライバーで、ライライちゃんはリスナーの一人だ。
ここは開かれた場で、ライライちゃんとだけやり取りしているわけではない。
ライブ配信だと、彼女に対して素直になれる。
でも、それは他のリスナーのみんながいるからでもある。
吉瀬さんに「嫌い」と言ったことについては、まだ謝っていない。
……。
ライブ配信が終わった後、早速私はスタバへと足を運んだ。プレゼントはお詫びもかねていることになる。




