第12話 好きな女の子【吉瀬来那side】
好きな女の子かぁ。
わたしは自分が女だから、そういうことって考えたことなかったなぁ!
うーん。でも。そっかぁ。
好きな女の子のタイプを考えてみるのってなんだか楽しそうかも!
【わたしは明るく素直な子が好きかな!】
パッと頭に思い浮かんだことをコメントしてみる。
【俺も俺もー】
【素直が一番】
【俺はいどっちがタイプ♪(´ε` )】
みんな追ってコメントをしてくれる。
——ふと考える。
いどっちが知りたいのって、そういうことじゃないんじゃないかな?
明るく素直って、まさに教科書通りの答えというか……。
もっと変わった答えを求めている気がする!
……。
【でもね、わたしはわたしに興味がない人も気になるかも!】
わたしの友達はいい子が多い。クラスの雰囲気も良く、上手くやれている方だと思う。
だけど、わたしが今一番気になる子と言えば——井戸川萌子だった。
釣れなくて、冷たい。
どうしてツンツンしているのと思い悩んでしまうこともある。
——だけど、今日のように挨拶を自分からしてくれたのは嬉しかった。
自分の気持ちを自覚しながらコメントを打った。
いどっちは、わたしの友達じゃない。どこに住んでいる子なのかもわからない。だからこそ、素直にコメントすることができた。
『そっかぁ……』
いどっちがぽつりと言う。
『うんうん。参考になったよ。みんなありがとう』
いどっちは腑に落ちたようだった。その後は気を取りなおすかのように歌を歌ってくれた。
その曲は有名なラブソングで、しっとりとした雰囲気に包まれる。
やっぱり上手いなぁ!
歌い終わった後、すかさず拍手をする。
ふと、ファーストフード店に長居したことを思い出して、いそいそと帰る準備をする。
女性の店員さんがわたしを見て「ありがとうございましたー!」と大きな声で言った。
やっぱり愛想が良いのが一番。
……だけど、記憶に残るのは冷たくする人なのは……何故だろう。
不思議に思いながら、雨が降り出しそうな空の下を足早に帰った。
◇
次の日、教室に入ると、朝比奈さんは、まだ来ていなかった。
バスケ部の永山に声をかけられる。
「やっほー」
「永山、やっほー」
「聞いて。私の昨日の睡眠時間、2時間」
「ぶっ。大丈夫?」
「大丈夫。大丈夫。乙女ゲームで徹夜した!」
「今日は無理せず早めに寝るんだよー」
たわいもない話をして、キリが良いところで別れる。永山は面白いなぁ。
さてと。
井戸川さんは既に席についていた。背筋を伸ばして本を読んでいる。
今日も挨拶してくれるかなという淡い期待があった。
自分の机にカバンを置いて、椅子に座る。
あれ?
しばらくそのままでいても何も起こらなかった。
「……井戸川さん、おはよう」
耐えきれずにわたしから挨拶をする。
……だけど、井戸川さんは返してくれなかった。
き、気まずい。
そしたら彼女はゆっくりと本を置いてわたしに向き直る。
「……おはよう」
井戸川さんが挨拶を返してくれた。
小さな声だったけど、はっきりと聞こえた。ホッとする。
……昨日は彼女から挨拶をしてくれたのに、今日は塩対応。行動に一貫性がないと気になってしまう。
何か話題を作って話しかけたいと思ったけど、何も出てこない。おかしいな。いつもならスラスラ浮かんでくるのに。
そうこうしているうちに井戸川さんはまた本の世界に戻ってしまった。
わたしは横目で彼女の様子を伺うことしかできなかった。




