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ライブ配信で始まった関係は、本物になれるのか  作者: 宮野ひの


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第11話 挨拶のアドバイス【吉瀬来那side】

【挨拶からするのがいいんじゃないかなっ】


 気づいたらわたしはコメントを打っていた。


【上手く話したい気持ちはわかる! けど何もしないとそのままになっちゃうよ。やっぱり行動に移すしかないよ!】


 連投する。


【大丈夫! いどっちのことは、リスナーみんなが応援しているよ! ファイト\\\\٩( 'ω' )و ////】


 ……つい熱くなってしまった。


 いどっちが困っていたから見過ごせなかった。


『ライライちゃん……ありがとう』


 いどっちはお礼を言う。その声は嬉しそうに聞こえた。


【良かった良かった】


【何かあったらここで愚痴ってよ!】


【応援してる!】


 他のリスナーも、いどっちを励ますコメントをしている。


 ——懐かしいな。


 わたしもライバーだったとき、つい弱音を吐くことを言ったら、リスナーがフォローするようなコメントをくれたのを思い出した。


 顔も名前も知らない人とゆるくつながっている。そんな関係性に何度も心を救われた。


 リスナー側に回ったら、ライバーのときには見えなかったことを、感じ取ることができた。立場を変えてみると、勉強になるって、こういうことかなぁ。


 ——その日のいどっちのライブ配信は、数曲歌を歌った後に終了した。


『宿題頑張るぞ!』


 去り際に、いどっちがそんなことを言った。


 そうだ。わたしも頑張らなきゃと思い直し、配信を見終わった後に、自分の部屋に直行して、カバンからテキストとノートを取り出して机に向き直った。その日はやる気に満ち溢れ、途中でスマホを見ることなく、宿題をやり終えた。





 次の日、教室に入ると、髪をひとつ結びにした朝比奈さんから声をかけられた。


「来那ちゃん、おはよう!」


「おはよう、朝比奈さん!」


「あっ。前髪にゴミついてるよ!」


「えっ。……本当だ! 教えてくれてありがとう」


 手に取ると、白いゴミが付いていた。


「いえいえ。また何かあったら言うよ!」


「…………朝比奈さん、頼んだ!」


 いつものように手を振り、自分の席に行くと、既に隣には井戸川さんがいた。一人静かに本を読んでいた。


 わたしはゴミ箱にゴミを入れた後、意を決して彼女に挨拶をしようとした。


「……おはよう、吉瀬さん」


 そしたら、井戸川さんから挨拶をしてくれた。本を読むのをやめて、こっちを見ている。


 まさか、彼女から挨拶をしてくれると思っていなかったので、咄嗟に反応することができなかった。


「……おはよう。井戸川さん」


 声が裏返ってしまう。

 井戸川さんは無表情のまま、数秒そのままでいると、再び本の世界に戻ってしまう。


 ……びっくりした。


 だけど、悪い気はしなかった! むしろ嬉しかった。


 ふと、昨日のいどっちのライブ配信が頭に浮かんだ。


 わたしは、「気になる同性の子がいるなら、自分から挨拶をするのがいいんじゃないかな」というようなことをアドバイスした。


 やっぱり、おはようって言われると嬉しいよ!!!


 ——いどっちも、気になる子に挨拶することができたかな?


 今日もライブ配信するだろうか……。楽しみっ。


 一人、口元をにやけながら、カバンを机の横にかけた。

 井戸川さんは、本のページをぱらりとめくった。


 昨日よりも今日の方が空気が澄んでいるような気がした。





 ——放課後。教室に残って友達と少し話をした後、わたしは一人ファーストフード店にやって来ていた。新作のアボカドバーガーが今月までなので、それを頼み、いつものようにソファ席に座り、ライブ配信アプリを開く。


 ——良かった。今日も配信してる。


 いどっちの枠を迷わずタップした。


『……今日、気になっているって言っていた子に挨拶できたよ。みんなのおかげだよ。ありがとう!』


【良かったね〜】


【いどっちが勇気出したからだよ!】


【尊い( ^ω^ )】


 どうやら、いどっちはアドバイス通り、同性の子に挨拶できたみたいだった。

 声も弾んでいて嬉しそう。


「良かった」


 わたしは小さな声で、そう言っていた。


 しかし、コメントを打たないと、いどっちに気持ちを伝えることはできない。


【良かったね\\\\٩( 'ω' )و ////】


 すかさずコメントを打つ。


『ライライちゃん……来てくれたんだ! いっらっしゃい! そして……ありがとう!』


 いどっちは素早くレスポンスを返してくれる。


【俺にもファンサしてー!】


【ハトゲッチュさん、いどっちのこと好きすぎるからなー】


【いどっちとライライちゃんのやり取り尊い( ^ω^ )】


 ……みんな好き勝手コメントしている。


 しかし、いどっちはスマートに拾い、上手く対応している。


『あのさ……みんなはどんな女の子が好き?』


 配信の流れが落ち着いたところで、いどっちが躊躇いがちにそう言った。

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