第8話「スティールビートルとの激闘」
スティールビートル・エリートは鈍重に見えたが、その巨体からは考えられないほど素早く突進してきた。
「来るぞ!」
俺が叫ぶより早く、鋭い角を突き出して突進してくる。
「鉄壁の構え!」
ギリギリで受け止めたが、大剣越しに重さと勢いが伝わってくる。押し返され、地面を滑る俺。
(硬い…!まるで鉄塊だ)
「晴翔くん、下がって!《ブレイブブースト》!」
美月の新しいバフが発動し、俺の攻撃力が一時的に上昇した。
一瞬、身体が軽く感じる。
「助かる!」
だが、鋼殻の表面は大剣でも簡単には傷つかない。
「蒼真、弱点はどこだ?」
「たぶん脚だ!甲殻の継ぎ目が甘い!」
蒼真が素早く横へ回り込み、鋭く拳を打ち込む。
「捌き! → 煉気掌!」
ズン、と鈍い音と共に、甲殻の合わせ目に小さなヒビが入った。
「効いてる!美月、サポートを!」
「うん!《ヒールオーラ》!」
美月の周囲に淡い光のドームが広がる。微弱ながらも、持続回復が発動した。
スティールビートルは蒼真の攻撃に反応し、羽音を鳴らして急上昇──!
「晴翔くん、上!」
「くそっ!」
上空からの急降下突進が来る!
だが、俺はここで新スキルを試す。
「防御姿勢 → 迎撃突き!」
大剣を逆手に構え、急降下するビートルの角を受け止めつつ、反撃の突きを叩き込む!
硬質音が響き、羽が震えた。
「よし、ひるんだぞ!」
「俺が決める!」
蒼真が空中のビートルの腹部に跳び上がる。
「崩撃連拳・新型だ!!」
打撃音が連続で鳴り響き、腹部の甲殻が次々と砕けていく。最後の一撃で赤黒い体液が飛び散った。
「グギギ……ギャアアッ!」
スティールビートルが断末魔を上げて地面に崩れ落ちる。
「ふぅ、決まったな」
「蒼真くん、すごかったよ!」
「お前も迎撃突き、いい反応だったな。盾役もだんだん様になってきたぞ!」
「ありがとよ」
久々に息を合わせた感覚があった。俺も蒼真も、スキルの成長が実感できる戦いだった。
「……終わった、の?」
アリアが小さく呟く。無事、彼女にも怪我はなかった。
「大丈夫。もう安全だよ、アリア」
美月が微笑み、アリアはほっとした表情になる。
スティールビートルの残骸から《監視結晶》を無事に回収した俺たちは、博士に報告データを転送する準備を整えた。
──だが、この監視結晶が次なる"異変"の引き金になることを、この時はまだ知らなかった。