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第4話「黒翼の断崖 決戦」

討伐クエストを受注した俺たちは、南部に広がる山岳地帯──黒翼の断崖へと向かった。リーヴェルからは徒歩で半日ほどの距離だ。

「天気も良いし、登山日和だな!」

蒼真は相変わらず軽装で拳を鳴らす。美月は少し心配そうに荷物を抱えてついてきていた。

「もう少し防具着た方がいいよ、蒼真くん……。敵だって出るんだし」

「フッ。攻撃を当てさせなければ問題ない!」

「フラグ立てないでよね……」

苦笑しながら俺は前を歩く。断崖までは、森林地帯と細い山道が続いていた。


道中、初めに現れたのは《ヒルバイト》と呼ばれる巨大ヒル型モンスター。ぬるりとした体をうねらせて迫ってきた。

「おいおい、気持ち悪ぃな……!」

蒼真が身を低くし、飛び出す。

「連撃拳!」

素早く放たれた拳がヒルバイトの柔らかい体表を叩き込む。ぬるぬるとした粘液が飛び散ったが、鋼製グローブが滑らずにしっかりと打撃が入っている。

「プロテクション!」

美月の詠唱で、また青白いバリアが全員を包み込む。防御が高まったことで、後ろから襲い掛かってきた2体目のヒルバイトの体当たりも余裕で耐えられた。

「鉄壁の構え!」

俺が大剣を正面に突き出し、全身を盾代わりに仲間の前に立つ。ヒルの体重がのしかかるが、押し返して地面に倒す。

「晴翔くん、後ろ!」

振り返ると別の個体が、俺に噛み付こうとして跳び上がってきた。

「衝撃波!」

剣を地面に叩きつける。地割れのように衝撃が走り、飛び掛かったヒルはバランスを崩して転倒した。蒼真がすかさず追い打ちを入れる。

「捌き→連撃拳!コンボいくぜ!」

回避直後に流れるように拳を叩き込む。蒼真のスキルは、使うほどに動作硬直が減ってきている。まるで流れる流水のような連撃だった。

「やった!全滅!」

美月がホッと息をつく。


さらに進むと、今度は《クリフバイパー》が道を塞いだ。岩肌に擬態していた大型毒蛇で、長さは5メートルを超えている。

「気をつけろ!噛まれたら毒が厄介だ!」

「私、状態異常回復用意してる!」

美月が背後で支援体勢を整える。バイパーが素早く鎌首をもたげてきた──!

「鉄壁の構え!」

俺が前に出て噛みつきを受け止めるが、蛇の顎の力は強烈だ。咄嗟に大剣で押し返す。その隙に、蒼真が真横から滑り込んだ。

「気功練気 → 連撃拳!」

拳に纏う気のオーラが光る。打撃のたびにバイパーの鱗が剥がれ飛ぶ。カウンターの尻尾が振り下ろされるが──

「捌き!」

蒼真が流れるようにそれを避け、逆に腹部へ拳を突き込む。さらに連撃拳へスムーズに繋げるキャンセルコンボ。完全に隙が無くなりつつある。

「よし、あと少しだ!」

俺が剣を大上段に構える。

「ヘヴィスラッシュ!!」

渾身の一撃がバイパーの胴体を両断した。蛇は断末魔を上げて倒れ伏した。


こうして順調に雑魚敵を突破し、ようやく断崖の頂上──ハーピーの巣がある《黒翼の断崖》に辿り着いた。

断崖の上は冷たい風が吹き抜け、羽根の舞う音が耳をつんざく。岩肌に作られた巨大な巣が見える。

そこに──黒翼のハーピーが降り立った。

断崖の上に降り立った黒翼のハーピーは、鋭くしなる翼を広げ、金色の瞳でこちらを見下ろしていた。

「さあ、貴様らを羽根で切り裂いてやろう!」

「来るぞ!」

俺は大剣を構え、蒼真は素早く間合いを詰め、美月は後方で詠唱に入る。

「プロテクション!」

美月のロッドが淡く輝き、青白い光の膜が俺たちの身体を包む。肌の上を優しく撫でるような温かい魔力の感触が伝わる。

「バフ完了!気をつけて!」

「おう!」

ハーピーが風を切って急降下してきた。鋭い爪が俺の頭上を狙う。

「鉄壁の構え!」

俺は大剣を横に構え、巨大な鉄板のようにして受け止めた。ギィンッ──甲高い金属音とともに爪が滑る。

「ここは通さねぇぞ!」

「いいぞ晴翔!」

蒼真がすかさず横から滑り込み、拳を突き上げた。

「連撃拳!」

素早い4連打がハーピーの腹部を叩き込む。しかし、空中での体勢制御に長けたハーピーは、翼をはためかせて離脱した。

「小癪な……!ならばこれでどうだ!」

ハーピーは風の刃を生み出し、複数の真空刃をこちらに放つ。

「ディフェンスライン!」

美月がさらに防御バフを重ねる。重なるように光の結界が展開され、風刃を弾いた。だが、すべては防げない。

「クッ──!」

右から迫る風刃を咄嗟に読み、俺は美月の前に飛び出した。

「鉄壁の構え!」

鋼鉄のように大剣を盾代わりに立てる。真空刃が弾け飛び、地面に土煙が舞った。

「晴翔くん、大丈夫!?」

「平気だ。今のうちに体勢を立て直せ!」

蒼真はその隙を逃さなかった。風刃を避けながらハーピーの背後に回り込む。

「捌き──キャンセルからの連撃拳!」

モンク特有のスキルキャンセルが発動する。回避直後に攻撃へシームレスに移行し、蒼真の拳が高速連打となってハーピーの脇腹へ炸裂する。

「がはっ……くっ、やるわね!」

ハーピーの動きが鈍り始めた。

「今だ、晴翔くん!」

美月が後方で叫ぶ。

「了解!」

俺は大剣を高く振り上げ──

「ヘヴィスラッシュ!!」

全体重を乗せた渾身の一撃。刃がハーピーの胸を貫くように斬り裂いた。

「ぐああああああああっ!!」

悲鳴とともにハーピーは翼を失い、断崖の崖下へと墜落していった。


「──ふぅ。なんとか倒せたな」

「さすが晴翔!トドメが決まったな!」

「うん!蒼真くんの攻撃もすごかったし、晴翔くんもすごい守ってくれたし!」

美月が少し興奮気味に手を合わせて微笑む。

「……いや、美月のバフがあったから助かったんだ」

俺は素直にそう答えた。蒼真がまた小声で「鈍感王め」と呟いたが聞こえないふりをした。


討伐報酬は【黒翼の羽飾り】と、例の博士のサブ依頼だった薬草も無事入手できた。

「さーて、帰って報告だな!また博士がギャラはずんでくれるぞ!」

蒼真が上機嫌に笑う。

この戦いを乗り越え、俺たちはまた一歩、魔王城への道を進んだ。


■黒翼の羽飾り(アクセサリー)

レア度:レア

装備部位:頭部(髪飾り・飾り羽根)

入手先:黒翼のハーピー討伐報酬


◆アイテム説明文

「黒翼のハーピーの誇り高き羽根を用いて作られた美しい羽飾り。わずかに魔力を帯びており、装備者に鋭敏な感覚と冷静な判断力を与える。」


◆性能

【器用さ +10】

【命中率 +5%】

【回避率 +3%】

【集中力上昇(スキル詠唱の揺らぎ軽減)】



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