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第2話「いざ、エターナル・オデッセイへ!」

さあ、君たち──準備はいいかね?」


博士の白衣がバサリと舞う研究室の一角。

そこには、巨大なカプセル型のフルダイブ筐体が4台、並んで鎮座していた。世界でここにしか存在しない、博士の完全自作のフルダイブマシンだ。


俺──桐生きりゅう 晴翔はるとと、幼馴染の篠原しのはら 美月みづき、そして友人の**たちばな 蒼真そうま**の3人は、目の前の異様な光景に若干の緊張感を覚えていた。


「ログインテストは順調だ。システムも安定している。問題は──ただ一つ」


博士の真剣な表情が思い出される。

ログインした先で、既に博士の助手である如月結菜がログアウト不能の状態で閉じ込められている、という事実だ。


「彼女を救うためには、魔王討伐が必要だ。気をつけて頼むぞ」


「ま、やるしかねぇな」


俺はヘッドギアをかぶり、カプセルの中に身体を沈めた。蒼真と美月も隣で同時にスタンバイを整える。


《フルダイブ起動──ログイン開始》


意識がすっと吸い込まれていく──


──眩しい光が晴れると、そこは見渡す限りの草原だった。そよぐ風、遠くの山並み、川のせせらぎまで完璧に再現されている。


「……すげぇな」


俺はログイン直後の自分の姿を確認する。

両手には、ずっしりとした幅広の両刃大剣。これが俺の初期装備だ。VRのシステムアシストで重さは制御されているが、実際の質量感も十分に感じられる。まさに“振り回している”感覚だ。


そこへ、美月が小走りで駆け寄ってきた。水色のローブ姿にロッドを背負ったヒーラー職のスタイル。


「わぁ、はると!すごい、本当にゲームの中にいるみたい!」


「リアリティ半端ねぇな……博士の執念、恐ろしいわ」


と、その背後から聞き慣れた大声が響いた。


「うおー!最高だこれー!」


振り返ると、蒼真が満面の笑みで仁王立ちしていた。

だが──相変わらずインパクトが強い。


「……お前、何その格好」


「見ろよ晴翔、素手キャラならこれが正解だろ!」


蒼真は上半身裸。下は柔道着のズボンに白帯、拳には薄手の革グローブのみ。筋肉質な上体が妙にリアルすぎて、思わず目をそらしたくなるレベルだ。


「本当に素手最強目指してんのかよ……」


「お前も大剣選んでんじゃん!重武器仲間だろ? 行こうぜ!まずは最初の街!」


冒険の拠点リーヴェルは、中世ヨーロッパ風の美しい都市だった。NPCたちが生きているかのように自然に動いている。


「ここまでリアルだと、マジで観光だけでも楽しいな」


美月が感心して周囲を見渡している。


ギルドでクエスト登録と簡単な説明を受けた俺たちは、初めてのフィールド戦闘に向けて外へ出た。


「スライム狩り行こうぜ!まずは腕慣らしだ!」


蒼真がノリノリで叫ぶ。


フィールドにはポヨンポヨンと跳ねるスライムたち。俺は試しに大剣を振る。

重い一撃がスライムを真っ二つに叩き割った。


「おお……やべぇ。振りの重さも音もリアルすぎる」


「やっぱり大剣って迫力あるね! はると、カッコいいよ!」


美月は後方からヒール魔法を試しつつ支援に回る。


そして──蒼真は、というと。


「せいやぁああ!そいやぁああ!!」


素手でスライムを投げ飛ばし、グローブでの連打を叩き込む。完全に格闘ゲーの動きだった。


「お前、スライム相手に関節技とかいらんだろ……」


「素手職は投げが命だって!」


俺は呆れつつも、こいつらしいなと思った。


──と、その時。


「……ん? 待て、なんかおかしいぞ」


茂みがガサリと揺れた。次の瞬間──

そこから巨大な狼型モンスター《鋼牙の暴狼スチールウルフ》が姿を現した。


鋼鉄のような銀色の牙、筋肉質な四肢、光る赤い眼。序盤の雑魚とはまったく次元が違う殺気が漂っていた。


「いやいやいや!? これ序盤で出す敵じゃないだろ!!」


「完全に博士の仕込みイベントだなコレ!!」


美月が慌ててロッドを構え、蒼真はニヤリと笑った。


「いいぜ……!こういうのがあるからこそ燃えるんだろ!」


「お前な──ちょ、突っ込むな!!」


蒼真は迷わず突撃していく。

スチールウルフは蒼真を狙って鋭く跳躍、前足を振り下ろす。


「おおっと!!」


蒼真はギリギリで回避、鋭い鉤爪が地面をえぐる。


「晴翔!カバー頼む!」


「おう!!」


俺は大剣を思い切り振り上げ、スチールウルフの脇腹に叩き込む──が、重い手応えのわりにHPは微妙にしか削れない。


「くそ、硬ぇ!」


スチールウルフは怒り狂い、美月の背後に跳躍しようとする。


「やらせるかよッ!」


蒼真が横から滑り込み、関節技のように前足を掴んで投げ飛ばす。


「ひいい!? すごいけど怖い!!」


「美月、今のうちにヒール頼む!!」


「わ、わかった!ヒール!」


回復が入ったタイミングで俺が再び斬りかかる。大剣の渾身の振り下ろしがスチールウルフの頭部に命中、重い衝撃音と共にHPバーが大きく削れる。


「あと少しだ!」


蒼真が拳に連撃スキルを叩き込み──


「はあぁぁぁっ!!!」


最後の一撃を俺の大剣が振り下ろした。


【討伐完了:スチールウルフ】

【経験値大量獲得】

【レアアイテム「鋼牙の首飾り」入手】


戦闘終了後、俺たちはしばらくその場に倒れ込んだ。


「……はぁ、はぁ……なんで序盤からボス戦だよ……」


「いやー燃えた燃えた!やっぱ俺最強だな!」


「服は着てよ……ねぇ?蒼真くん……」


美月は微妙に赤面しながら視線をそらす。


「でも……この世界、悪くないな」


俺は空を見上げながら呟いた。

だが、本当の目的はまだこれからだ──

魔王城に囚われた如月結菜を救い出す、そのための旅が今始まる!

【鋼牙の首飾り】

分類:アクセサリー(首装備)

レアリティ:★★★(レア)

装備条件:レベル5以上


説明

鋼鉄の牙を削り出して作られた魔獣由来の首飾り。

装着者の反応速度をわずかに高め、致命的な一撃を回避する可能性を持つ。

また、一定確率で物理攻撃を軽減する特性がある。序盤では破格の性能。


効果

・AGI+5%

・物理ダメージ軽減+3%

・クリティカル耐性+2%

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