第18話「決死の反撃」
美月が倒れて動けなくなったことで、戦況は一気に厳しくなった。
俺たちは重苦しい闇の圧力に押されながらも、決して立ち止まらない。
「行くぞ、蒼真!」
「おう!」
蒼真は軽やかな足捌きで左右に揺れながら接近する。
俺は真正面から、大剣を肩に担ぎ直して前進した。
◆
──《深淵の魔公・ヴァルゼル》は、再び闇の槍を生成し始める。
「──だが、その技はもう二度と撃たせない!」
俺は大剣を逆手に持ち替え、踏み込んだ。
「《ガードブロウ》!!」
重い衝撃波が魔公の身体を揺さぶり、生成途中だった闇槍の魔法陣がわずかに歪む。
「ぐ……まだだ……!」
ヴァルゼルが唸り声を上げた瞬間──
「今だ、蒼真!」
「──《瞬掌打》!」
蒼真の高速連撃が正面から叩き込まれる。
拳と甲冑がぶつかる度、火花と瘴気が弾けた。
「畳みかける!」
蒼真は新たに取得したスキルを放った。
──《飛翔崩拳》
【性能】
前方ダッシュの勢いを乗せた拳撃
着弾時にノックバック効果
高速移動からの奇襲向き
勢いよく踏み込み、拳がヴァルゼルの胸部に突き刺さる。
巨体がわずかに後ろへ弾かれた。
「くぅ……!」
「ここだ!」
俺はその隙を逃さず、《鋼壁衝撃》を連続で叩き込む。
溜めの衝撃波が再び甲冑の装甲をひび割らせた。
だが──ヴァルゼルは一瞬で体勢を立て直す。
「粘るな……だが、終わりだ」
魔公の触手のような黒翼が広がり、瘴気が渦巻き始めた。
◆
「──《深淵喰らい》」
黒翼が渦となって周囲を一瞬で包み込む。
瘴気の暴風が身体にまとわりつき、皮膚が焼けるような痛みが走る!
「くそっ──ッ!」
蒼真も口元を覆い、必死にその中を耐えている。
「晴翔くん……蒼真くん……」
かすかな声が聞こえた。
倒れていたはずの美月が、辛うじて意識を取り戻していた。
「無理しないで美月──!」
「……でも……支援だけは……まだできるから……」
美月の手が、震えながらも僅かに杖を握る。
詠唱がかすれた声で始まる。
「──《ブレイブブースト》!」
僅かながら筋力強化が再び俺たちに流れ込んだ。
身体が軽くなり、筋肉に力が戻る感覚がする。
「よし……これで──」
「最後の決着をつける!!」
◆
蒼真が先行して突撃する。
足元から《飛翔崩拳》を繋げると、ヴァルゼルの腹部が抉れ、黒煙が噴き出した。
その一瞬の隙に、俺は力を全開まで高める。
「──《ヘヴィスマッシュ》!!」
最大溜めの一撃──
肩越しまで引き絞られた大剣が、唸りを上げて振り抜かれる。
刃がヴァルゼルの胸甲を貫き、その巨体を地面ごと押し潰した!
「……がああああ……ッ!!」
轟音とともに、甲冑が砕け散る。
瘴気が急速に薄まり、玉座の間に静寂が戻った──
──《ボス:深淵の魔公・ヴァルゼル討伐完了》
◆
俺たちはその場で膝をついた。
全身が重く、腕は震えている。
「晴翔……くん……」
美月の声がかすかに響く。
「美月……大丈夫だ。終わった」
セリスがすぐに駆け寄り、治療用の特殊ポーションを注入する。
青白い光が美月の身体を包み、呼吸が安定していった。
「深淵呪毒は除去された。命に別状はない」
「……良かった……」
俺も蒼真も、同時に深く息を吐いた。
◆
そして、討伐報酬が表示された。
──《ドロップ:漆黒の深淵兜》
【性能】
物理防御+高
闇属性耐性上昇
一定確率で闇魔法の威力軽減
「よし……今回は俺が装備するな。これでさらに耐久力が上がる」
俺は重い兜を装着し、視界が僅かに狭くなるが、全身が闇の重装騎士のような姿になった。
「似合ってるぞ、晴翔!」
蒼真が笑う。
美月も弱々しく微笑みながら頷いた。
「無事で……よかった……」




