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第14話「地下神殿の囁き」

スケルトン・ナイトを討伐した俺たちは、しばし休息を取ってから神殿のさらに奥へと進んだ。


神殿内部は徐々に冷たさを増し、天井の高さが下がっていく。古代のレリーフや碑文が刻まれた壁が続き、静寂の中に不気味な囁き声が微かに木霊していた。


 


「なんか……音、聞こえない?」


 


美月が周囲を見回しながら小声で言った。


 


確かに、壁の奥から遠くで囁くような声が断続的に響いている。内容は聞き取れないが、誰かが何かを唱えているようだった。


 


「儀式が進行してるのかもな……」


 


俺が低く呟くと、セリスが一歩前に出た。彼女の銀髪が揺れ、冷静な赤い瞳が前方を鋭く見つめている。


 


「この先には《魔族召喚の祭壇》が存在する可能性が高い。儀式の妨害が間に合えば討伐が容易となる」


 


「急ぐぞ。準備はいいな?」


 


「もちろん!」


 


蒼真が拳を握り、俺は大剣を握り直す。美月も短杖を構え、僅かに背筋を伸ばした。


 


 



 


数十メートルほど進むと、大きな階段を下りる通路に出た。降りるたびに湿気が強まり、苔むした石床がヌメりを帯びている。時折、壁の隙間から小さな虫のようなクリーチャーが這い出してくるが、戦闘になるほどではない。


 


「この階層からは敵の種類が変わるかもな……」


 


蒼真が警戒する中、突然、前方の霧の中から何かが素早く飛び出してきた!


 


「──っ!」


 


素早く大剣を横に構え、俺は反射的に身を低くした。


 


鋭い羽音。目にも留まらぬ速さで滑空してきたのは、漆黒の翼を持つ異形だった。


 


──《シャドウ・バット》


 


それはコウモリに似ていたが、翼は骨と皮膜だけのものではなく、黒紫の霧が常に揺らめいている。鋭利な牙を剥き出しにしてこちらに突撃してくる。


 


「数が多いぞ!」


 


十数体の群れが、音もなく高速で舞い踊るように襲いかかってくる。


 


 



 


「任せろ……!」


 


蒼真が前に出て叫ぶ。


 


「ここはカウンター主体でいく!」


 


彼は拳を肩に引き、構えを低く取る。基本スキル《瞬掌打》を活用しつつ、次々に突撃してくるコウモリを迎撃していく。翼を叩き落とされたコウモリが悲鳴のような鳴き声を上げて地面に叩きつけられた。


 


「一体一体は柔らかいな。ただ動きが速え!」


 


蒼真の拳がコウモリの腹を突き抜け、霧のように消えた残骸が広がる。


 


 



 


一方、美月も慎重に支援に回る。


 


「《リカバリー・フィールド》!」


 


足元に展開された淡い緑色の魔法陣から微弱な回復波が全員に行き渡る。持続回復系の補助スキルだ。


 


「みんな、ダメージは軽いうちに戻すよ!」


 


「助かる!」


 


俺も攻撃の隙を突いて《ガードブロウ》を叩き込む。群れの中心に向けて一閃、大剣の風圧で数体のシャドウ・バットが吹き飛んでいった。


 


「……!」


 


しかし、残ったシャドウ・バットの数体が隊列の後方、美月に向けて急降下してきた。


 


「美月、後ろ──!」


 


「わっ!」


 


急接近する群れに美月は思わず後退するが、そこに俺が素早く介入する。


 


「──守護防御《鉄壁阻断》!」


 


【性能】


瞬間発動型防御スキル


周囲味方への攻撃を代わりに受ける


ダメージ軽減+ノックバック耐性


 


俺の身体が淡く光る障壁に包まれ、美月への突進コースに割り込む形で受け止めた。シャドウ・バットの牙が俺の肩に突き刺さるが、障壁がそれを大幅に軽減する。


 


「ありがと……!」


 


「任せろ。俺の役目だ」


 


再び大剣を振り上げ、回転斬撃で残りのコウモリたちを一掃する。


 


「これで全部──っと、危ねえ!」


 


蒼真の拳の先に、最後の1体が突き刺さるように突っ込んで自爆のように霧散した。


 


「自爆機能までついてんのかよ……油断できねえな」


 


息を整えながら、俺たちは一時休息を取った。


 


 



 


「──まだ中層にも達していない。慎重に進め」


 


セリスが静かに告げた。


 


「こっからが本番って感じだな」


 


蒼真が笑い、美月が緊張した面持ちで短杖を握り直す。


 


俺たちは再び奥へと歩き出した。



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