第10話「新たな幹部の出現」
翌朝、俺たちはギルドから新たな依頼を受け取っていた。
《新規依頼:東方山岳地帯・魔族偵察部隊の討伐》
迷いの森の一件以降、どうやら魔王軍の活動が活発化してきたらしい。特に今回の依頼対象──『幹部直属の偵察部隊』──というのが気になる。
「やっぱり、幹部って聞くと嫌な予感しかしねぇな」
蒼真が気だるそうに肩を回しながら言う。
「でも、アリアちゃんのことも気になるし……魔王軍が何を企んでるのか確かめた方がいいよ」
美月が真剣な表情で続けた。俺も同感だ。博士の話では、アリアが何らかの中心的存在になっている可能性がある以上、無視できない。
「準備は万端だな。よし、行こう!」
アリアは今日も俺たちの後ろにちょこちょこと付いてきている。博士からは「アリアの動向は細かく観察して欲しい」と言われているが、今のところ特に変わった様子はなかった。
◆
東方の山岳地帯は、リーヴェルの平野とは打って変わって切り立った岩山と深い谷が続く過酷な地形だった。地面はところどころ崩れており、不安定な足場が続いている。
「うわー……足元注意だなこれ」
蒼真が岩の割れ目を慎重に飛び越えて進む。俺たちも慎重に進んでいたが、突然──
──シュルルル……!
「!?」
地面の亀裂から飛び出したのは、まるで蛇のように長い触手だった。
「《バジリスクワーム》か!」
鋭い牙を持った巨大な地中生物が姿を現す。口を大きく開き、こちらを狙って突進してきた。
「任せろ、《鉄壁の構え》!」
俺は大剣を構えて触手の攻撃を受け止めた。しかし、触手の力は想像以上に強い。横滑りしながらも耐える。
「晴翔くん、引き付けて!《ヘヴィバースト》!」
美月が新しいバフ魔法を唱える。俺の全身が黄金色のオーラで包まれ、一瞬、筋力が大きく強化された。
「いけええっ!」
大剣を振り下ろすと、触手を斬り裂き、バジリスクワームの顔面に一撃を叩き込む!
「捌き→回転連打拳!」
蒼真が背後へ回り込み、今までにない高速連打を繰り出す。まるで竜巻のような拳撃がワームの後頭部に突き刺さる。
「ギギャアアアアア!!」
巨大な身体が大きく仰け反り、断末魔を上げながら岩の亀裂へと崩れ落ちていった。
「ふぅ……今度は地中系か。毎回パターンが違うな」
「でも……楽しいよ。どんどん成長してるのが実感できる」
美月の声に、蒼真も満足げに笑った。
「オレもスキルキャンセルがかなり上手くなってきた気がする。もう連撃が止まらねぇ!」
蒼真の《求道者》としてのスキル成長は目覚ましい。今では複数の連続スキルをスムーズに繋げられるレベルになっている。
◆
さらに山道を進むと、ついに依頼の討伐対象──魔族の偵察部隊と接触した。
「待ち伏せか……」
細い断崖の上、黒いマントを羽織った魔族たちが現れた。計6体。中央に立つのは一際異質な存在だった。
背は高く、漆黒の仮面を被り、背中からは小さな黒翼が伸びている。まるで人間と魔族の中間のような異形。
──《魔王軍幹部代理・カイル》
システムタグが表示される。
「ようこそ、冒険者たち。まさかここまで嗅ぎつけてくるとはな」
カイルが低く笑った。声は落ち着いているが、その奥に得体の知れない冷気を含んでいた。
「貴様……!」
蒼真が構えを取るが、カイルはあくまで冷静だった。
「その後ろの少女──アリア──も随分と"完成"に近づいてきているようだな。まったく……我らの計画を壊すとは厄介な連中だ」
「アリアが……? お前ら、彼女を狙ってるのか!」
「狙う?違う。我らが“進化”の果実なのだよ。彼女は存在そのものが可能性の核だ」
カイルの言葉に背筋が寒くなる。博士が言っていた『幹部AIの進化』──まさに今、その核心を突かれたような気がした。
「言わせておけば……!」
蒼真が叫ぶと同時に先制を仕掛けた!
「《衝波掌》!!」
重い気流の塊がカイルへ向かって撃ち出される。しかし──
「──遅い」
カイルは指先を軽く振るだけで、黒い結界を展開してそれを消し飛ばした。
「な……!」
蒼真が目を見開く。カイルの実力はこれまでの雑魚とは次元が違った。
「面白い。せっかくだ、遊んでやろう──戦え、僕の部下たちよ!」
その合図と共に、残りの5体の魔族が一斉にこちらへ飛び掛かってきた!
「みんな構えろ!!」
俺たちは迎え撃つ構えを取った。ここからが本番だ──。




