4話:発明
オレの想像より、マナさんの足はだいぶ速かった。
いや、オレの足が遅すぎるだけかもしれない。
いずれにせよ、マナさんは既にナンパ師に絡まれ始めている。
違った……マナさんが絡みに行ったんだった。
少し息を切らせながらも、追いつく事が出来たが、言葉を発するのもままならない自分が情けない……
「なんだ、お嬢ちゃん、オレ達と遊んで欲しいのか?」
「兄貴、流石に小学生に手を出すのはマズいですよ!!」
「高校生ですよ!! 少し人様より小柄なのは自覚していますが……
って違います、あなた方に用はありません!!
そこの異世界人!! 私の聖剣を返してください!!」
ナンパされていた銀髪の女性を、ビシッと指指すマナさん。
さすがのナンパ師も、どう反応すれば良いのか分からないようで固まってしまっている。
その指を指された銀髪の女性はと言うと、一歩下がり冷や汗を掻いている。
マナさんに見覚えがあり分が悪い、そんな反応に見えた。
「はっはっは!! 兄貴、このお嬢ちゃん面白いっす!!
しかも高校生という合法ロリ!! おいらの聖剣で可愛がってあげるっすよ!!」
ナンパ師の子分らしき方が、マナさんの右腕を引っ張り始めた。
聖剣なんて単語、古ラノベの授業を、そこそこ真面目に受けてないと知らないと思うが、このナンパ師以外と勉強しているんだろうか?
そして高校生も違法ロリだ……とか言ってる場合じゃ無い!!
マナさんが連れていかれてしまう。
「ちょっと待て!!」
「あぁん?」
「なんすか?」
男のオレが話しかけたからだろう、マナさんが話しかけた時とは違う、鬼のような形相で睨み付けてくる。
正直怖い、逃げ出せば見逃してもらえるだろうか?
いやいや考えなしに飛び出したのは事実だが、クラスメイトが連れ去られるのを放って置ける程、白状でも無い。
「ええっと……ナンパは良くない……というか連れ去りは普通に犯罪だよ?」
「このガキ!!」
「女の前だからって、格好付けやがって!!」
いやオドオドしてるし格好は付いてないと思うよ?
などと言い返す余裕は無かったが、それでもオレの頭の中は冷静だった。
2人の拳がオレに襲いかかり、直撃は時間の問題。
これが当たったら鼻血が出るか、下手をすれば鼻の骨が折れるだろう。
滅多にない機会だし試作品だが“アレ”を試してみるか。
【バリア】
「うわぁぁぁぁぁ」
「いてぇ!! なんだこれ!?」
ピンク色のドーム状の壁が、オレとマナさんを包み込むように守る。
発動のテストはしていたが、耐久はまだだった、しかしここまで上手く行くとは嬉しい誤算だ
しかし想定外に相手にダメージが入っている。
ナンパ師2人はトラックにでも轢かれたかのように悶絶して会話もままならなそうだ。
「たっ助けて頂き、ありがとうございます!! 今になって怖くなってしまいました」
「マナさん、正義感強いんだね!! でも考えなしに飛び込むのは危ないよ?」
「以後気を付けます」
マナさんはペコリと頭を下げた、この仕草は何度か見たが可愛い!!
じゃなかった、怪我がなさそうで良かった。
ナンパ師の方は、どうだか分からないけど……
「ところで、このピンクの壁は何ですか?」
マナさんはオレの創り出したバリアを、ドアをノックするようにコンコンと叩いている。
「えっと魔力を放出して固めた壁だよ、オレはバリアって名付けた」
「すごい!! もしかしてネオウさんが創ったんですか?」
「うん、現代の魔力って昔の電力やガソリンの代わりって感じで、魔法っぽさが無いからね、魔力を魔法っぽく使う発明をしてるんだ」
バリアを創り出すのに使った魔法石をポケットから取り出して見せると、マナさんは興味津々に顔を近づけて来た。
「まっマナさん? 近いんだけど?」
「しっ失礼しました!!」
顔を赤く染め、凄い勢いで離れて行ってしまった。
……もう少し堪能しておけば良かったかな? というのは流石にキモいか?
「そこ!! 何の騒ぎだ!?」
恐らくナンパ師の騒ぎを聞きつけたのだろう、何人かの警備員が、コチラに駆け足で向かってくる。
……もう少し早く来てくれよ!!
「ネオウさん!! 逃げましょう!!」
「えっ!?」
オレ達は悪いこと何もしてない、と反論する隙も無く、マナさんは力強く俺の手を握り走り出した。
「ちょっとマナさん!?」
走り出して数百メートル、一向に止まる気配が無く、体力が限界を迎えようとしていたオレは、結構な大声でマナさんを制止した。
「あっはい!?」
「はぁ……はぁ……ここまで来れば大丈夫じゃないかな?」
「そっそうですね!! つい夢中になってしまい」
「しかも、オレ達は別に悪い事してないんだし、逃げる必要無かったんじゃ?」
「魔力の加工を、マキシム社の許可無く行うのは、悪い事では?」
「あっ……」
こんなモノを開発しようなどと思う奴は現代ではオレくらいだろう。
なのでマキシム社の法律に対し批判の声は、ほとんど聞いたことが無い。
いやマキシム社の法律が、マキシム市民には当然のように深く刻まれているせいかもしれない。
いずれにせよ悪法も法、軽犯罪程度とはいえおおっぴらにするのは控えるべきだ。
「それはそうと異世界人を見失ってしまいました……」
あぁそういえばマナさんはナンパされていた女性を助けに立ち上がったのではなく、聖剣を取り戻すために飛び出したんだ。
正義感なんかじゃなかった……いやマナさんが悪人だとかそういう事ではないんだけど。
「あの人に聖剣を奪われたの?」
「はい!! 一瞬ですが風で髪が靡いたとき長く尖った耳が見えました!!」
自信満々に答えるマナさん、事実はどうであれ、あの人を探し出さないと納得はしなそうだ。
「さっきの騒ぎでオレも異世界人に顔を覚えられたかも」
「それじゃあ見つけても……」
「すぐに逃げられるし、話してはくれないかもね」
「そんな……」
残念な表情をしているが、オレは彼女に諦めさせる為に、こんな事を言い出した訳では無い。
「顔を覚えたのはコッチも同じだよ、考えがあるから明日まで待ってくれるかな?」
「明日も……一緒に探して下さるんですか?」
「うん!!」
なんで協力的になっているのか自分でも分からない。
正直、ここまで来ても異世界人や聖剣については半信半疑。
いや疑の方が勝っている。
が、こうなったらマナさんが納得するまで付き合ってやろうじゃないの!!
「あの……ネオウさん……ありがとうございます!!」
「いいよ、察しの通り異世界に興味あるし」
「それもですが……今日は楽しかったです!!」
「おっオレも!!」
こんな真っ直ぐな笑顔を向けられたことが今まで……いやこれからの人生含めてあるだろうか?
聖剣に興味はあるけど本物かどうかは、どっちでも良い。
今はただ彼女に協力したいと思った。
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