20話:解体☆
3人がオレに見せたかったモノとは、間違いなくこの巨大ロボだろう。
そもそも、これに興味を引かれない男子はいない。
オレは3人がいることすら忘れ、ロボを調べ始めた。
自立型で所有者の意思のまま勝手に動き出すのか、はたまたリモコンのようなモノで外から操縦するのか、それとも中にコクピットのようなモノがあるのか……
「うーん」
古のラノベはマキシム社により厳しく検閲されているが、日曜朝の番組は500年以上の歴史を持ち、今なお続いている。
番組こそ視聴していなくとも、こういったロボのロマンは日本人に根付いている……とオレは思う。
「背中にジェット機みたいな翼、足にはキャタピラ、腕は新幹線?」
ロボの稼働に明らかに関係の無い場所に見えるキャタピラに、どうやって入ったか分からない位置に刺さった新幹線、間違いなく3つのメカが合体している。
「全部人間が操縦する乗り物……って事は……こうか!!」
力任せにキャタピラ付近のドアらしき部分をこじ開けると、思いのほか簡単に開きバランスを崩して尻餅をついてしまった。
さらに何十年か何百年分かの錆びた鉄粉が舞い、激しく咳き込む。
「ネオウさん!! 大丈夫ですか!?」
「おいマナ!! あまり近寄らん方がいいぞ!!」
2人の声が耳に入り、オレは独りの世界から抜け出したようにハッとした。
「あっゴメン……つい夢中になっちゃって」
「いえいえ、少しでも元気が出たようで何よりです」
「魔法のホウキとやらの次は、このロボで登校してきやしないかと今からヒヤヒヤするがな」
「あはは……」
どう反応したら良いか分からなかったが、2人なりに、本当に心配してくれているのが伝わる。
ん? ……2人?
「聖歌さんは?」
「さっきまで、近くにいたのですが」
「広くない部屋だ、その辺りにいるだろう」
オレ達は、揃った動きでキョロキョロと見渡したすと、彼女を見つけるのに、そう長い時間は掛からなかった。
何やらロボのパーツとパーツの間に体を突っ込んでいる。
聖歌さんの体は、腰から下しか見えていない状態。
加えて彼女のスカートは、とてつもなく短い。
そんな状態でジタバタしているのだから、男としては見たいけど見てはいけない状態が目の前に広がっている。
「ネオウさん!! 見てはいけません!!」
「堂本ネオウ!! 貴様という奴はハレンチな!!」
マナさんに目を塞がれ、リン生徒会長からはチョップを浴びせられる。
悪いのは絶対にオレじゃない自信があるが、そんな反論をする余地は与えられない。
そんな状態に助け船を出してくれたのは、他ならぬ聖歌さんだった。
「ちょっと!! みんな近くにいるの!?
何話してるのか分からないけど早く助けて!!」
今まで彼女が何をしているのか分からなかったが、ここでようやく状況が飲み込めた。
単にロボの観察をしているのではなく、見ている内に挟まってしまったようだ。
「聖歌さん……なぜそんな変な隙間に体を突っ込んじゃったんですか?」
マナさんが彼女の足をガッシリ掴み、引っ張り始めたので、オレは目を背けた。
忘れそうになるが、彼女は見た目に反して、力が相当強かったはず。
なのだが「ヨイショーヨイショー」と祭りのように景気の良いかけ声が聞こえるので、簡単には抜けない挟まり方をしてしまったようだ。
「痛い!! 痛い!! あんまり強く引っ張らないでよ!!」
「強く引っ張って抜けないんですから、弱い力打抜ける訳ないじゃないですか!!
だいたい何でこんな所に入っちゃったんですか!?」
「中にカラフルな線があって、綺麗だなぁと思ってつい」
「聖歌、得体のしれないモノに、闇雲に触るな」
「それはゴメンナサイ!! 私のいた世界じゃ、こんなの無いから珍しくて。
今まで見たいの我慢してたけれど、ネオウ君の目のある所でなら安心安全かなって」
こんなロボ、僕らの世界でも珍しい。
いや存在自体は認知されてるけど、あくまで特撮やスーパーな大戦するゲームの存在というか……
ファンタジー以外の創作は規制されている訳ではないからなぁ。
なんて考えている間に、リン生徒会長も救出に参戦したみたいだけど、抜ける気配は無さそうだ。
「仕方ない、こうなれば最後の手段」
「リンちゃん、何か名案が?」
「堂本ネオウ、このロボとやら、動かし方が分からず動かないだけか?
それとも故障などで、どのみち動かせない状態か?」
「え? まだ分からないけど、色々と錆びついてるし、動かし方が分かっても動かないと思うなぁ」
「なるほど、即ちこれ以上壊れても、大して状態は変わらん訳だな」
「え?」
リン生徒会長と目が逢うなり頷くマナさん。
なんだか嫌な予感がする、恐らくこの予感は当たるだろう。
とてつもない量の冷や汗を流し始めた聖歌さんも、オレと同じ気持ちだと思われる。
「ちょちょっとマナちゃんさん? 何をするつもり??」
「大丈夫、痛みは一瞬です!!」
「最近仲良くなれたと思ったけど聖剣の事、根に持ってる?
せっせめて何をするつもりかだけ教えてぇぇぇぇ!!」
聖歌さんに叫びも虚しく「ドゴーン」という爆音だけが無慈悲に響き渡る。
モクモクと土煙が上がり反射的に口と鼻を覆う中、聖歌さんの咳き込む音が耳に入ってきた。
土煙が晴れ始めると、聖歌さんのモノであろうシルエットが浮かび上がり見え始める。
どうやら脱出には成功したようだ。
「無事に脱出出来たようで何よりです」
「“無事”の意味を辞書で引いてから言ってもらえるかしら!?」
マナさんの力が強いのは知ってるけど、ここまでとは……
内部とはいえロボの一部が見るも無惨な姿に。
オレは声を失いつつも状況を確認した。
破壊された部分も金属のような素材。
とはいえ錆付いていたりして相当痛んでいて、何より厚みは2センチかそこそこ。
これなら壊せる人はいる……のか?
怒っている聖歌さんにキョトンとしているマナさん。
指示した張本人であるリン生徒会長は、そっぽを向いている。
そこに異世界人の聖歌さんが辞書なんて単語を口にした部分にツッコむ隙など無かった。
それ以上にオレの目の前には興味の惹かれる光景が、穴の奥には広がっていた。
2メートルはあろうかという黒い魔法石、発電施設で使われているのも、せいぜい1メートルほどのハズ。
まぁ発電施設ともなると100個とかそういう規模なので量ではロボが劣っているが、それでもこの大きさの魔法石は異常というかマキシム市にあるかも怪しいレベル。
見入っているオレに、3人も気がつき口論をやめたようだ。
「堂本ネオウ、これは?」
「見ての通り魔法石だね、大きさは常識を越えているけど……」
普段使われている魔法石は、だいたい機械内部に埋め込まれているので実物を見る事は少ない。
普通はオレみたいに分解やら改造なんてしないし。
そんなわけでマナさんもリン生徒会長も、魔法石に興味を示している。
「この魔法石は私たちの世界で使われているモノか?」
「どうだろう? ロボそのものは聖歌さんの言うとおり、オレ達の世界での方が馴染みがあるパーツだけど……」
魔法石に手を触れると、やはり砂やらホコリやらを大量に被っていた。
マナさんの破壊行為で舞った分もあるだろうが、大半は長い年月が経過してのモノ。
どれだけロボが放置されていたのかは分からないが、この魔法石は……
「ネオウさん、何かに気がつかれましたか?」
「独りで考察してないで、分かったことがあるなら教えてくれ」
「こんなメカメカしたの、説明されて分かる自信ないけどね」
あちこちに張り巡らされた配線を引っ張ったりしている聖歌さんの行動に多少の不安を感じるが、どのみち壊れてはいるので放置して話しを進める。
「うん、この魔法石、中に魔力がないんだ」
マナさんはキョトンと首を傾げたが、リン生徒会長は“異常さ”に気がついたらしい。
「魔法石は魔力を使っても、時と共に復活するのではないのか?」
「さすがリン生徒会長、その通りだよ」
「それが空とはどういう事なのだ?」
この質問には答えられる。
だが、恐らくオレより魔法石が身近にある生活をしていたであろう聖歌さんに視線を送った。
意図を理解してくれたのか、聖歌さんは右手拳と左手の平をポンと叩いた。
「ええっと、それ単純に魔法石の寿命ね」
「そう、巨大な魔法石ほど寿命が長いハズなんだけど……それだと、この世界の魔法石の歴史と合わないね、単純計算で1000年以上は前の代物って事になるし」
「だが聖歌の世界から来たモノと仮定すると、新幹線やらキャタピラやらの部品に矛盾が発生する……っそうだな? 堂本ネオウ」
その問いに、ゆっくりと頷いた。
オレが異世界について知っているほど、このロボは矛盾だらけ。
だけど不思議と、動かせるようになるという自身、いや確信はあった。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。
他の連載作品も見て頂けると、良い事があるらしい。




