19話:ロボ☆
異世界が現実を浸食する可能性……
考えた事もなかったな。
俺は確かに、この世界をファンタジーにしたいと思っている。
魔力というエネルギーがあるなら、創作世界を現実に出来るハズと思ったから。
でも、これは昔の人が、未来の世界の猫型ロボットの道具を。
SF映画に出てくるようなテクノロジーが、いつか現実になると信じていたようなもの。
電力というエネルギーを主としていた人々の描く未来がそうだったように、魔力というエネルギーを使う俺達が目指す方向が、そうだという話。
異世界というモノの存在を信じていた訳ではないし、まして今使ってる魔力の出所が異世界だなんて思いもしなかった。
聖歌さんと会った地点で、異世界から人は来てる訳だし、他にもいる来ている人がいる可能性は十分ある。
だけど、どうも実感沸かないんだよな。
聖歌さん自身、聖剣で自分の世界を救う使命を持っていること。
あとは、異世界の知識くらいしか記憶が無いみたいだけど、これも俺の知ってる古ラノベとかと大して違いないからな。
小説のあらすじを聞いているような気分になってしまう。
「……オウさん、ネオウさん!!」
「堂本ネオウ!!」
「あっゴメン」
深い霧の中で考え事をしている内に、屋敷の前に着いていたらしい。
あれから数日しか経っていないハズなのに、何年かぶりに感じられる。
「言っておくけど……リン生徒会長の話、まだ実感ないし、夢もまだどうするか決めてないからね?」
「分かっている、来る途中でも話しただろう?
見て欲しいモノがあるだけだ」
来る途中か……全く記憶に無いな。
そんなことより、さっきから嬉しそうにニヤニヤしているマナさんが気になる。
「マナさん……何かあったの?」
「いえいえ、ただ『夢をどうするか決めてない』って、捨てると決まった訳でもないんだなと思い、嬉しくなりまして」
「あっ……」
“あの日”から長年描いてきた夢、そう簡単には諦められるハズがない。
それに……友達にずっと心配を掛けてもいられないからね。
久しぶりに入った屋敷の中は、全然変わっていなかった。
数日だし当たり前だけど……気持ち、聖歌さんの私物が増えたかな?
チラリと視線を移した先には、服が干してあった。
そこには可愛らしいピンクの……
「ドゴン」
俺の思考を遮るように、頭上に拳が振り下ろされた。
懐かしい……いや懐かしみたくはないが、リン生徒会長からの制裁だ。
「いってぇぇぇぇ」
「何を見ていた、この不純物!!」
「あはは……そういえば聖歌さんは?」
「先に待っている」
入ったのは、不自然に大きな暖炉のある部屋。
ここには、私物どころか、他に家具すらない。
キョロキョロと部屋を観察してみても、聖歌さんが暖炉の横に立っているくらいで気になる点はない。
なんて考え込んでいたせいで、オレはズイズイと迫り寄ってきた聖歌さんに気がつかなかった。
「えい!!」
大きな声と同時に頭頂部に激痛が、どうやら聖歌さんにチョップされたらしい。
「いきなり、どうしたのさぁ?」
アニメなら大きなタンコブが出来ていたであろう頭を撫でていると、彼女は頬を膨らませていた。
「どうしたのじゃないわよ!! 久しぶりに会えたのにキョロキョロしちゃって!!
感動の再会のハグとか無いわけ?」
不服そうに両手を広げている。
これは、感動の再会のハグして良いって……事?
なんて邪な事を考えているのがバレたのか、リン生徒会長から睨まれる。
チョップはタンコブで済むけど、今度は竹刀が飛んで来かねない。
とりつくろったようにシャキッとした表情をすると、何とか見逃してもらえたようだ。
「ホッ」
「聖歌さん、日本では異性にハグという文化はないんですよ」
落ち着いた笑顔で説明してくれるマナさん、助かる。
「私の住んでた世界にも、そういう文化はないわよ?」
ようやく落ち着きかけていた空気を一変させる一言。
一番同様しているのはオレなのだが。
「じゃっじゃあ何故ハグしようとしたのだぁぁぁぁ!!」
「リンちゃん落ち着いて!! 竹刀をしまってください!! 話しが進まなくなってしまいます!!」
マナさんに止められ我に返ったのか、リン生徒会長は咳払いをして落ち着きを取り戻した。
「取り乱してしまった……聖歌、たのむ」
「はい!!」
何を思ったのか、聖歌さんがリン生徒会長にハグをした。
古のラノベで読んだ事がある、これは『キマシタワー』という奴だ。
文字では良さが理解出来なかったが、なるほど、ある意味では自分がハグされるよりも来るモノがある。
それは不意を突かれたリン生徒会長も同じらしい。
「せせせ聖歌!! 何をする!!」
「えっ? だって今頼むって、リンさんいっつもカッカしてるから癒やしが欲しいのかなって」
ここで聖歌さんの手は、撥ね除けられキマシタワー終了。
残念無念、もう少し見ていたかった。
「今日の目的と今の話しの流れで何故その結論にいたる!! 隠し扉を開けてくれという意味に決まっているだろう!?」
「あちゃーーーー」
「何があちゃーーーーだ!!」
リン生徒会長が、竹刀を振り回そうとし、マナさんが後ろから押さえる光景。
こういう女子同士の絡みも、界隈によってキマシタワーと言うらしい。
それはそうと“扉を開けろ”かなるほどね。
オレは無言で、忙しそうにしている、女性陣の横を通る。
彼女達は、気がつく様子もない。
……君らがオレを連れてきたんじゃないの?
とか思いながら暖炉をグイッと横に押す。
思った通り、空の本棚を押すような軽さで、簡単に横に動かすことができた。
さらに思った通り、暖炉に隠されていたのは、地下へと伸びる巨大な階段だ。
「「「あーーーー!!」」」
急に聞こえた悲鳴に思わず背筋が伸びる。
彼女達の視線は、オレに向いていた。
「どしたの!?」
「堂本ネオウ!! 空気を読まんか!!」
「そこは、聖歌さんが暖炉を動かして、ネオウさんが驚くパターンじゃないですか?」
「そうよそうよ!! 驚く顔を見るのが楽しみだったのに!!」
3人とも同じように不満そうに頬を膨らませている。
オレが言うのも何だけど、変な所に拘るなぁ。
「この部屋に連れて来られて、無駄に馬鹿でかい暖炉があれば気がつくでしょ。
似たような仕組みの隠し部屋ならオレの工房にもあるからね」
「リンちゃんも、すぐに気がつきましたもんね?」
「まっまぁ見ないサイズの暖炉だしな」
急に歯切れが悪くなったリン生徒会長。
そんな事をお構いなしに、オレは階段を降りていった。
「ネオウさん待ってくださいよー!!」
「暗いから危ないよぉ」
「案内されるのに先を行く奴がおるか!!」
3人の声は確かに耳に届いていた。
だがオレの歩みは何かに吸い寄せられるように止める事は出来なかった。
長い階段を下ると目の前には扉が見える。
ドンと勢い良く開ける、それは自分の心が踊っているからだとは気がつかなかった。
が今目の前に広がっている光景には、確かに心が躍っていた。
というか男子で、これに心が踊らない者はいないと断言できる。
そこには、あちこちが錆び、歴戦を闘い抜いたとしか思えない、巨大ロボが倒れていたのだから。
ここまで読んで下さりありがとうございます。
ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。
下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。
他の連載作品も見て頂けると、良い事があるらしい。




