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15話:召喚☆

 念願のファイヤーボールを完成させたオレ、堂本ネオウ。

 だが喜ぶのも束の間……いやそれ以下の時間だった。

 

 これを見計らったかのように現れた雑賀スズメさんは、穴の開いた岩盤を食い入るように見つめる。


 

 「こりゃ……お前さん戦争でもおっぱじめる気か?」


 「オレは、せっかく魔力があるんだから、異世界の魔法を再現したいだけだよ。

 ってこの前も言ったし、完成のヒントをくれたのはスズメさんだよ?」


 「短期間で、ここまで仕上げるとは想定しておらんぞ?」

 


 彼女の挙動1つ1つに警戒してしまう、だが恐らく科学者としての好奇心から、オレの発明の進捗を確認しているだけ。

 リン生徒会長の資料によると、彼女は技術顧問。

 つまりマキシム社の正式な社員では無いので、社の方針に完全に従う義務はない……はずだ。

 そうでなければ、ファイヤーボールの開発を、見逃しはしても協力はしないだろう。

 

 

 「ワシのくれたケーブルを使いファイヤーボールを完成。

 威力などは想定以上……だがそれまで」


 「どういう意味かな?」


 「こういう意味じゃ」

 

 

 今まで気がつかなかったが、彼女は背中に、長い布で巻かれた何かを背負っている。

 スズメさんは、それを地面に下ろすと、布をほどき始めた。

 布を全てほどき終える前に、それが何かオレには分かった、いや他の異世界実現部の仲間も一緒だろう。

 

 

 「それ……魔法の杖だよね? オレが作ったのと同じ」


 「別に不思議もなかろう? 構造はこの前見せてもらったし、完成のアドバイスをしたのもワシじゃ」


 

 まるで自分の方が技術は上だと言いたそうだ。

 いや実際そうだろう、バックがバックだし資金面的なのが違いすぎる。

 

 

 「マキシム社は、屋敷……いやこの山の不思議な魔力を調査しとるんじゃが、相も変わらず、ワシ以外は屋敷にたどり着けんでのぉ。

 霧の外の魔力を調査するのが精一杯、本社にお主らの事を報告するにしても、目撃者がワシだけでは信憑性に欠けるじゃろ?

 いや、マキシム社から信頼されてない訳じゃないし、むしろ逆じゃが、流石に夢物語すぎる。

 しっかし異世界の魔法実現などという危険思想を野放しにもできん」


 「その考え方なのに自分で魔法の杖を作ったら意味ないんじゃ無い?」


 「第一堂本ネオウの研究に協力したのは、あなただろう!?」

 

 

 リン生徒会長が珍しくオレの肩を持ってくれた。

 マナさんと聖歌さんも、その後ろで大きく頷いてくれている。


 

 「そこは科学者の好奇心でのぉ、じゃがこの通り良いモノが完成した。

 ネオウ、お主の願いを1つ叶えてやろう」


 「オレの願い?」


 「魔法を使っての戦い、異世界の定番じゃろ?」

 

 

 スズメさんは魔法の杖をオレの顔に向けてきた。

 彼女が来た時から要件は分かっていたようなものだが宣戦布告という事だろう。

 マキシム社の技術顧問である彼女の開発した魔法の杖に何処まで食らいつけるか……

 しかし霧でココに来れなかったという部隊、それがもしマキシム社の傭兵部隊なら、その軍事力は世界最強、ファイヤーボールしかない現状では太刀打ち出来ない。

 ここは彼女の提案通り、異世界ラノベ定番の魔法対決を楽しむとしよう。


 


 ***

 


 

 オレ達は屋敷の庭に移動した。庭と言っても野球場の倍近い広さがある。

 コレなら思いっきり魔法が打てるという訳だ。


 

 「屋敷の裏手がこのようになっていたとは……物理法則無視しておらんか?」

 

 

 この前は表の庭しか見てなかったからか、このスペースに興味津々のようだ。

 とても、これから戦闘が始まるとは思えない。

 乗り込んできたので当然だが、この余裕は自身の表れだろう。


 

 「勝負って何をするの?」


 「さすがに命の奪い合いまではせんのでのぉ」

 

 

 スズメさんはトランクケースを地面を滑らせるように、オレに渡ししてきた。

 これを開けろと解釈し、慣れない手つきで開けると、そこには防弾チョッキが入っていた。

 

 「実物は初めて見たんだけど……」

 

 

 手に持ってみると見た目以上にズッシリと重みを感じる。

 

 

 「ちょっと待ってください!! こんなモノを使う程、危険な戦いをするつもりですか!?」


 「マキシム高校生徒会長として……いや人として見過ごすことはできん!!」


 「そうよそうよ!! マキシム社は私達……ゲフンゲフン。

 異世界の魔法を危険と見なしてるんでしょう?

 なのにソレを使って戦いなんて間違ってるわ。」

 

 

 今まで、どうして良いか分からないといった様子だった、マナさん・リン生徒会長・聖歌さんが止めに入ってくれた。

 オレも異世界の魔法を実現しようとしているが、戦いを遊びにしようなんて考えていない。 火や雷を人間に放つ以上、ボクシングなどのスポーツなんかよりよっぽど危険なのだ。

 

 

 「そこは心配するでない、ソレはワシの自信作でな、装着した者の受けるダメージを肩代わりしてくれるんじゃ」


 「そっちの方が、よっぽどファンタジーな発明なような……」


 「ある程度のダメージを受ければ爆発するのが欠点じゃがな」

 

 

 この一言で、オレの発明の失敗を思い出したのだろ。

 さっきまで加勢してくれていた女性陣3人は、イソイソと遠ざかっていく。

 

 

 「おいおい、このチョッキはマキシム社製じゃぞ? 少しは信用せい!!」

 

 

 この言葉で戻ってくる3人、オレの発明品の時とは反応が大違いだ。

 少し詳しい一般人と大企業なので、信用に差があるは当然だが悔しい。

 それ以前にオレには前科があるわけだが。

 もう何を言っても引き返せないだろう。

 オレはスズメさんに言われるがまま、人生初のチョッキを着込んだ。

 

 

 「このチョッキが先に壊れた方が負けって事でいいのかな?」


 「察しが良くて助かるわい」

 

 

 ふと彼女を見ると、既にチョッキを着終わっている。

 まぁ開発者だしオレより慣れているのは当然か。

 

 

 「ワシが勝ったら、すまんがマキシム社に出頭してもらうぞ?」

 

 

 想定の範囲内だが、出頭という言葉に1番反応を示したのはリン生徒会長だった。

 

 

 「しゅしゅしゅ出頭!? マキシム高校で生徒会長を勤め、生徒からも先生からも信頼の厚い私がぁ!?」

 

 

 いつものリン生徒会長の面影は無い。

 というか、信頼が厚いって自分で言っちゃうんだ。 


 

 「わっわたしは、成り行きと脅しでココにいるだけで、不純な魔力の使用は、むしろ取り締まる側でして……」

 

 

 人とはこんなに早く話せるのかと言うほど早口で言い訳をするリン生徒会長。

 逃がさないとばかりに両肩をマナさんと聖歌さんが背後から叩く。

 

 

 「リンちゃん」


 「往生際が悪いですよ」


 「はい……」

 

 

 実情はともかく、彼女は監視で異世界実現部に入ったので、可愛そうな気がしないでもない……おっと話しを進めなければ。

 

 

 「で? 僕が勝ったら? 見逃してくれるの?」


 「それでも良いが、お主らがここで活動し、ワシがマキシム社で技術顧問をしている以上、無限ループになりかねん。

 幸い今はワシしかここに来れんようだし、まぁ負けたらマキシム社を辞めようかのぉ」


 

 その提案は想定外だった。

 彼女の事を調べ上げたリン生徒会長が1番驚いている様子だ。

 

 

 「いいの?」


 「ワシはこれでまだ13歳、働いてる方が異常じゃしな、まぁ負ける気も負けるハズもないがのぉ」

 

 

 凄い自信だ、確かにファイヤーボールは彼女の技術無しでは完成しなかった。

 だが同じ魔法で、そこまで差が出るだろうか?

 

 いざ戦いが始まってみると、ファイヤーボールのぶつかり合いは互角。

 いや、オレの方が優勢だ!! 勝てる!!


 ……とオレは自惚れていた。

 ファンタジーな魔法を一から創り出せるのはオレだけだと。

 この世界で魔法を1番分かっているのはオレだと。

 大きな思い違いをしていた。


 

 【召喚魔法:ダーク・フェニックス】

 

 

 彼女が杖から呼び出したソレにオレは為す術がなく敗北したのだった。

 ここまで読んで下さりありがとうございます。


 ストーリは一生懸命練っているので少しでも続きが気になったらブクマ登録して頂けると幸いです。


 下の星から評価も、入れてくださるとモチベが最高潮になるとか。


 他の連載作品も見て頂けると、良い事があるらしい。

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