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底辺魔物と底辺テイマー  作者: @aozora
第四節 再びの城塞都市、新たな旅の始まり
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第128話 出来ること、それは少しずつ

城塞都市ゲルバス、そこは魔の森の中に築かれた冒険者たちの最前線都市。城塞都市の冒険者たちは、都市を取り囲むように存在する魔物の楽園に自ら飛び込み、魔物を狩ることで日々の糧を得る。

そして力を付けた冒険者たちは更なる強力な獲物を求め、魔の森のより深い場所へと歩を進める。そこは魔の森深部と呼ばれる危険地帯、オークやオーガ、ミノタウロスといった強靭な敵が鎬を削る魔力溢れる土地。


「おぉ~、思った通りだ。魔の森深部の癒し草はかなり大きいな、これなら満足のいくポーションを作製できそうだ。量もそこそこ取れたし、これで薬師ギルドでの検証に弾みがつくだろう。

クラック、ジェンガ、メアリー、そっちはどうだ?」

「あぁ、俺たちの方も結構量が取れている。シャベルがどれほどの癒し草を必要としているのかは分からないが、十分量の癒し草は集まったんじゃないのか?」

シャベルの呼び掛けに、クラックが元気な返事をよこす。


「アーマービッグワームたちが癒し草のある場所まで連れて行ってくれるからな、俺たちはただ採取するだけの簡単な仕事だったよ。この場所が魔の森深部だという事を除いてはな」

「そうね、バルとキリーも警戒に当たっていてくれたんだけど、二体が反応するとすぐに魔獣が倒されちゃうのよね。何かビクビクしっぱなしだったわ、やっぱり魔の森深部はとんでもないってことがよく分かったわよ」

ジェンガとメアリーは顔を引き攣らせながら言葉を返す。


「そうか、まぁケガなく目的を果たせたならよかったよ。それじゃそろそろ城塞都市に戻るとしよう。だがその前に天多が集めてくれた獲物をマジックバッグに移さないといけないか、流石に天多が獲物を仕舞い込めるという事を知られたら騒ぎになるからな。お前たちも協力してほしい」

シャベルはそう言うと、クラックたち三人が集めた癒し草を以前城塞都市の監督官から頂いた時間停止機能付きマジックバッグに移し、それぞれのマジックバッグに天多が集めてきた魔の森深部の獲物を移していくのだった。


“ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ”

「・・・シャベル、確かにこれは少しまずいな」

目の前ではアーマービッグワームのプルイチとプルジの頭の上に乗り、次から次へと獲物を吐き出していくスライムの天多たちの姿。そんな天多たちの下には、排出された獲物をマジックバッグに仕舞っていくジェンガとメアリーの二人。


「クラック、私のマジックバッグはもう一杯ね、これ以上は仕舞い込めないわ」

「俺の方も一杯だな。浅部中部で倒した魔物はそこそこいたからな、マジックバッグが圧迫されているようだ。シャベル、どうする? 浅部と中部で集めた獲物は捨てていくか?」

冒険者たちはその日の糧を得るため危険な魔の森に挑む戦士である、だがその前に利益を求める狩人でもある。より金銭価値の高い獲物と価値の低い獲物を入れ替えることは、冒険者家業に於いては往々にして行われる行為なのであった。


「いや、そこまでする必要はない。あくまで冒険者ギルドの解体所に獲物を持ち込むのに、冒険者たちに天多の事を知られるのがまずいといった事情があるだけだ。

俺たちのマジックバッグに詰め込めない分は、クラック精肉店にでも持ち込むさ。あの店は天多のこの力について知っている数少ない店だからな」

あまり公にはできない特殊なスライム、そのスライムの能力を発揮させるための手段。クラックたちはあまりに用意周到なシャベルに、“シャベルは本当に自分たちと同じテイマー冒険者なのか?”と唯々舌を巻くことしかできないのであった。


「<ホーム>、それじゃここから先はクラックたちの従魔での警戒を頼む。俺の家族たちは何かと人目を引くからな」

魔の森深部と中部の境にまで戻ってきたシャベルは、光パーティーと風パーティー、プルイチ・プルジ・プルミのアーマービッグワームたちを従魔の指輪に戻し、以降の警戒をクラックたち“魔物の友”のパーティーメンバーたちに頼むことにした。


「なぁ、俺たち本当に深部に行って帰ってきたんだよな? 俺、まったく自覚がないんだが?」

「そうね、私も何かリッチにでも騙されてる気分よ。だってあんなに平和な魔の森なんて見たことも聞いたこともないもの」

「こら、冒険者ならいつまでも終わったことを引き摺るな。もう俺たちを守ってくれていたアーマービッグワームたちはいないんだ、今度は俺たちがシャベルを守らないといけない番なんだ、しっかりしろ!!」


未だ夢から覚めていないといった様子で先ほどまでの探索を語り合うジェンガとメアリー、そんな彼らを諫めるクラックの姿に、“俺なんかよりよほどリーダーの素養があるな”と感心するシャベル。

クラックたちはその後の帰りの探索も卒なくこなし、金級冒険者パーティー“魔物の友”は無事にパーティーメンバー全員が揃っての初探索を終え、城塞都市に帰還するのだった。


「すまん、“魔物の友”だが従魔の指輪の返却を頼みたい。それと獲物の納品だな」

城塞都市に帰り着いたシャベルたちは早速解体所へと向かい、従魔の指輪の返却を求めることとした。


「おう、無事に帰ってきたな、それじゃ木札を頼む。よし、確認が取れたぞ、それぞれ指輪を受け取ってくれ。

まずは従魔たちを指輪に仕舞ってくれ、それが済み次第魔物の買取手続きを行うとしよう」

従魔の指輪を持ってきた解体所職員は、木札と交換に皮製の紐に括られた従魔の指輪を手渡すと、すぐに従魔を仕舞うように伝えるのだった。


「まぁ解体所を利用するような奴は冒険者と相場が決まっているからそこまで気にする事じゃないんだが、やはり従魔とはいえ多くの魔物が集まっている光景はあまり印象のいいものじゃないからな。

その点従魔たちが従魔の指輪に仕舞われていれば、そうした事を気にする者もいなくなる。城塞都市にはまずいないが、よその冒険者ギルドなんかには従魔を見ただけで討伐しろだのなんだの言いだす輩がいるからな、正直馬鹿が多いんだよ」

「そうだな、俺たちも城塞都市に辿り着くまで大なり小なりそういった経験はしているからな、親父さんの言いたい事はよく分かる。

街の住民にしてみればテイマーの従魔は剣士が抜き身の剣を見せびらかしているのと変わらないからな。この試みがテイマーの間に浸透して、いずれは他所の街でも従魔の指輪があたり前になれば、テイマーの扱いも少しは良くなると思うんだが」


肩を竦める解体所職員に苦笑いで返すシャベル、そのすぐ脇では“魔物の友”のパーティーメンバーたちが従魔の指輪を使いそれぞれの従魔を仕舞っていく。二人はいつかこの光景が当たり前になる日がくるだろうと希望を持ちつつ、テイマーに対する認識が変わってくれることを願わずにはいられないのだった。


「はぁ? 深部で癒し草採取をしながら狩りをして来たらマジックバッグが一杯になった!? お前らは一体何やってるんだよ」

その後解体所職員に今日の魔の森深部での探索の事を伝え、獲物が大量である事を相談したシャベルたち金級冒険者パーティー“魔物の友”は、先日シャベルがダンジョンドロップアイテムの査定に訪れた建物奥の倉庫区画に回され、そこで獲物の買取処理を行って貰う事となった。


「オークにオークソルジャー、オーガにミノタウロス。どれも身体に大きな傷はなく状態も最高、これは頭部の打撃による一撃って凄いな。

マッドモンキー、フォレストウルフ、マッドボアにワイルドフォックスは手足に噛み傷があるものの、査定には問題がない。これらも打撃により仕留められたもので体表の損傷は見られないし、食材としても文句のつけようがない。

いや、正直な話一年ほど前からテイマーたちがパーティーを組んで獲物を納品する事が増えてな、テイマーたちは剣の扱いが苦手だろう? 基本棍棒による撲殺なんだが、出血が少なく剣士系冒険者に比べ獲物の鮮度が断然いいんだよ。

これは昔からよく知られている事だが魔物は出血が少なければ少ない程鮮度が落ちにくい、以前聞いた話では血の中に含まれる魔力が魔物肉を腐りにくくしているんじゃないかって事だったよ。当然そうした事は冒険者たちも聞いているはずなんだが、“魔物は倒すもの、剣で切り倒してこそ冒険者”って考えは根強くてな。

俺たち解体所職員としては商品価値の高い獲物を納品してくれるテイマー冒険者たちには期待しているんだわ」


解体所職員はそう言うと他の職員にも指示を飛ばし、テキパキと魔物の査定を行っていく。シャベルはスタンピードの際共に戦ったかつての仲間が今も頑張ってくれている事を知り、口元を緩めるのだった。


「さて、査定は終わったが、どれも状態は最高だった。ただ冒険者ギルドだからな、出せる金額にも上限があることを許して欲しい。

オーク一体大銀貨八枚、三十体で金貨二十四枚。オークソルジャー一体金貨一枚大銀貨二枚、五体で金貨六枚。オーガ一体金貨一枚大銀貨二枚、十二体で金貨十四枚大銀貨四枚。ミノタウロス一体金貨八枚、七体で金貨五十六枚。マッドモンキー一体銅貨七十枚、十八体で銀貨十二枚銅貨六十枚。フォレストウルフ一体銀貨二枚、十二体で銀貨二十四枚。ワイルドフォックス一体銀貨五枚、八体で銀貨四十枚。マッドボア一体銀貨一枚銅貨五十枚、十五体で銀貨二十二枚銅貨五十枚。

合計で金貨百一枚銀貨十九枚銅貨十枚となる。問題が無いようならここにサインを頼む」


そう言い解体所職員から差し出された査定用紙に目を通し、ササッとサインをするシャベル。


「それとオークションの日程が決まった。シャベルの納品したダンジョン産アイテムは結構な数があったからな、少し日を開けて来週の闇の日に行う事になったよ。詳しい話は後でギルド長にでも聞いてくれ」

解体所職員はシャベルのサインの入った査定用紙を確認すると、「受付カウンターでギルド長に呼ばれていると声を掛けてくれ」と言ってシャベルに査定用紙を手渡すのだった。


「さて、この後だが俺は冒険者ギルド受付に行って換金を済ませてくる。その後バラニムギルド長とオークションについての話があるようだから、今日はここで解散とする。皆は従魔屋に従魔を預けにいって従魔の指輪を返してきてくれ。

獲物の買取金は宿に帰ってから分配する、割り振りは現在のパーティー資金の残高を確認してから考えよう。

それと俺は暫く調薬の仕事に入るから、魔の森探索は三人で行ってほしい。その際は従魔の指輪の使用試験も引き続きお願いしたい。その結果を以って多少運用方法を改善した後他のテイマーにも使用試験に協力してもらうつもりだ。

俺はクラック精肉店のヤコブさんから前に借りていた家をまた貸して貰える事になってな、暫くはそっちで調薬を行っていると思ってくれ。

夜は宿に戻るから何かあったら声を掛けて欲しい」


パーティーメンバーたちに今後の事について一通り話したシャベルは、「何か質問はあるか?」と言葉を掛け顔を向ける。


「ねぇジェンガ、リーダーが目茶苦茶リーダーしてるんだけど」

「ダンジョン都市にいた頃からテキパキと物事を進めるところはあったけど、ここまでじゃなかったよな」

「やっぱりダンジョンの深層部がそれだけ過酷だったって事なんじゃないのか? 何かを形に残したいとか自分が生きていたって証を残したいとか。俺たちじゃ考え付かないような深い思いがあるんじゃないのか?」


シャベルの様子に、顔を突き合わせてコソコソと話し合うパーティーメンバーたち。

そんな彼らの姿を見ながら、“こいつらって本当に仲がいいよな”とどこか的外れな感想を持ちつつ、「それじゃ後で宿屋で」と声を掛け冒険者ギルド受付へと向かうシャベルなのであった。

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