第109話 ダンジョン探索、それは帰還への道筋 (4)
ダンジョンのボス部屋と呼ばれる場所にはある特徴がある。それはダンジョンボスを討伐した後は、討伐者たちが部屋を出て行かない限り魔物が湧かないという点である。
これはダンジョンボス戦で死闘を繰り広げた挑戦者にとっては救いであり癒し。ボス部屋に挑戦しました、ボロボロに消耗しきったところに魔物が湧いて襲われて死亡しましたでは目も当てられないうえに、ボス部屋への挑戦者も激減してしまう事だろう。
「それじゃ一人一人鑑定していくね。まずは闇からいこうか」
ギガントゴーレムという大物との戦闘に勝利した従魔たちは、皆誇らしげにシャベルの前にやって来る。シャベルによる状態確認の<鑑定>にも、“見て見て、僕って凄いでしょう♪”という小学生が百点満点のテストの用紙を親に見せる時の様な誇らしげな気持ちが溢れているのだった。
<鑑定>
名前:闇
種族:アーマードシャドービッグワームリーダー
年齢:七歳
状態:良好
スキル
悪食 振動感知 無音動作 魔力制御 魔力遮断 気配遮断 頑強精強 影魔法 堅牢(New) 隠密(New)
魔法適性
水 土 闇
「何か新しいスキルが増えてるね。<鑑定:隠密>」
<隠密>
その者、闇に生き闇に沈む者。隠密行動時に全ての動作に補正大。
「うわ、凄いや。これなら魔物に気が付かれる事なく先回りも出来るね。
これからも闇の斥候には頼ることになるけど、よろしくね」
“クネクネクネクネ♪”
シャベルに頼りにされてると言われ、嬉し気に身をくねらせる闇。
そんな闇の後ろには“早く僕たちも鑑定して”とばかりに、他の家族たちが集まって来る。
<鑑定>
名前:水
種族:アーマードビッグワームリーダー
年齢:七歳
状態:良好
スキル
悪食 振動感知 無音動作 魔力制御 魔力遮断 気配遮断 頑強精強 堅牢(New) 水中動作(New) 水操作(New)
魔法適性
水 土
<堅牢>
堅くて丈夫、壊れにくい。
<水中動作>
水中で活動する事が出来る。
<水操作>
水を操る事が出来る。水魔法の使用に補正。
<鑑定>
名前:土:風
種族:アーマードクラフトビッグワームリーダー
年齢:七歳
状態:良好
スキル
悪食 振動感知 無音動作 魔力制御 魔力遮断 気配遮断 頑強精強 堅牢(New) クラフト(New) 土操作(New)
魔法適性
水 土
<クラフト>
魔力を操り様々なものを作り上げる。
<土操作>
土を自在に操る。土魔法の使用に補正。
<鑑定>
名前:焚火:夏
種族:アーマードマッスルビッグワームリーダー
年齢:七歳
状態:良好
スキル
悪食 振動感知 無音動作 魔力制御 魔力遮断 気配遮断 頑強精強 堅牢(New) 集団行動(New) 気合鼓舞(New)
魔法適性
水 土
<集団行動>
集団を率いての行動動作に補正。
<気合鼓舞>
気合を入れる、周囲にやる気を起こさせる。全体の能力を上げる。
<鑑定>
名前:春:秋:冬
種族:アーマードビッグワームリーダー
年齢:七歳
状態:良好
スキル
悪食 振動感知 無音動作 魔力制御 魔力遮断 気配遮断 頑強精強 堅牢(New) 登攀(New) 採取(New)
魔法適性
水 土
<登攀>
どんな険しい場所でもよじ登る事が出来る。
<採取>
植物の採取が上手に出来る。
「皆すっかり強くなっちゃって、やっぱりダンジョンの環境が影響したのかな?見た目なんか完全に別物だもん、これって地上に出たらちょっとした騒ぎになるよね。
う~ん、二人ずつ交代で護衛について貰って、他の皆は“従魔の指輪”の中で待機してもらうしかないかな?各パーティーの指導を行って貰うって感じで」
““““““““““クネクネクネクネクネクネ””””””””””
シャベルの言葉に同意を示すビッグワームたち。彼らの思いは一つ、よりシャベルの役に立つ存在になろうという熱い心。
ビッグワームたちは思う、自分たちは決して強くはないと。ダンジョンの罠、迎え撃つ強大な魔物たち。仲間がいたからこそ乗り越えられた、支え合ったからこそシャベルを守り切る事が出来た。
新たに加わった家族、白銀は言った。“僕は何も活躍出来ていない、僕は何の役にも立っていない”と。
己を鍛え、シャベルの役に立ちたいという白銀の思いは、シャベルの従魔たちの心に熱い火を灯した。
いつでも鍛える事の出来る環境があるのなら、その中で努力すればいい。
広大な“従魔の指輪”の中の空間は、従魔たちにとって絶好の修行空間となっていたのであった。
「それじゃ次は雫だね。<鑑定:雫>」
<鑑定>
名前:雫
種族:水精霊
年齢:不明
状態:良好
スキル
水生成 液体操作
魔法適正
水
「うん、鑑定結果としては前に視させてもらった時と一緒かな?という事は雫のスキル<水生成>と<液体操作>は凄い力を秘めているって事になるね。
雫、いつも助かってます、これからもよろしくね」
そう言い雫の身体を優しく撫でるシャベル。雫はその身をプルプルと震わせて、嬉しさを全身で伝えるのだった。
「次は白銀だね。白銀はまだ生まれたばかりだからそんなに凄く変化するって事はないと思うけど、ずっと頑張ってきたもんね。<鑑定:白銀>」
<鑑定>
名前:白銀
年齢:零歳
種族:シルバーホーンタイガー
状態:良好
スキル
咆哮 気配察知 魔力制御 魔力操作 魔力探知 暗視 神速 剛力 収納 雷魔法 氷結魔法 堅牢堅固(New)
魔法適性
水 風 火
<堅牢堅固>
堅くて丈夫。ただ硬いだけじゃなく柔軟に衝撃を分散する。どのような衝撃にも負けない。
「白銀、凄いよ。新しいスキルに目覚めているよ。<堅牢堅固>、白銀の頑強さが更に強化されたって事なのかな?
素早さがあり、力があり、防御にも優れている。これからも頼りにしているね」
そう言い白銀の身体をわしゃわしゃ撫でるシャベル。白銀はそんな主人に、目を細めたまま嬉し気に身を任せるのだった。
「次はボクシーだね。ボクシーは沢山の宝箱を吸収したからね、一体どんな事になっちゃってるのか、怖いような楽しみな様な。
それじゃ行くね、<鑑定:ボクシー>」
<鑑定>
名前:ボクシー
種族:エボリューションミミック
年齢:五歳
状態:良好
スキル
箱擬態 魔力吸収 空間胃袋 舌操作 宝箱ハウス(New) 宝箱統合(New) 罠生成(宝箱)(New) 罠百般(*)(New)
魔法適性
闇
「<宝箱ハウス>がスキルになってるね。なんか俺たちの努力が認められたみたいで嬉しいよ。他にも色んなスキルに目覚めたみたいだし、一つずつ見ていくね」
<鑑定>
<宝箱ハウス>
家のような巨大宝箱に姿を変える事が出来る。家そのものを取り込む事で、その家に擬態する事も可能。
<宝箱統合>
様々な宝箱の性質を取り込む事で、より強固な宝箱を作り出す事が出来る。
<罠生成(宝箱)>
罠を作る事が出来る。但し宝箱の罠に限る
<罠百般>
複数の罠を所持し、いつでも使用できる。
*所持罠:針射出(毒・麻痺・睡眠)・矢射出(毒・麻痺・睡眠)・煙霧噴射(毒・麻痺・睡眠・石化・混乱)・強制状態異常(毒・麻痺・睡眠・石化・混乱・凶暴化・酩酊)・サイレン・誘引・剣射出・槍射出・爆破
「・・・うん、なんか凄いね。でも<罠百般>にある<爆破>の罠ってボクシーも吹き飛ぶ様な自爆系の罠だったりするの?だったら使って欲しくないんだけど」
心配そうな顔で覗き込むシャベルに、カタカタと身を震わせて“大丈夫だよ、僕の周りが吹き飛ぶだけだから”と元気よく答えるボクシー。シャベルはその言葉にホッと胸を撫で下ろす。
「そうなんだ、でも使いどころは気を付けてね。周りに家族がいたら一緒に吹き飛ばされちゃうから」
ボクシーの身体を撫でながら語り掛けるシャベル。ボクシーは“分かったー”という気持ちを伝えつつ、カタカタと身を震わせるのだった。
「最後は天多だね。天多にはいつも助けられてばかりだから、きっと凄い事になってるんじゃないかと思って最後にさせてもらったんだ。
それじゃ視させてもらうね、<鑑定:天多>」
<鑑定>
名前:天多
種族:群体スライム
年齢:不明
状態:良好
スキル
悪食 統合 分裂 学習⇒学習進化(New) 巨大胃袋⇒亜空間胃袋(New) 魔力吸収 液体操作 身体操作(New) 粘体自在(New) 衝撃吸収(New)
魔法適性
水 土
「<学習>が<学習進化>になってるね。それと<巨大胃袋>が<亜空間胃袋>っていうスキルに変わってる。他は<身体操作>と<粘体自在>、<衝撃吸収>って言うスキルが増えてるかな?
それじゃそれぞれ見て見るね」
<学習進化>
物事を学習し身に付ける事が出来る。理解し訓練する事で、様々な物事の再現が可能。
<亜空間胃袋>
その胃袋は別空間になっている。その容量は魔力量による。生物非生物を問わず、物体であれ魔力体であれ収納可能。
<身体操作>
身体を自在に操る事が出来る。
<粘体自在>
身体を伸ばしたり縮めたり張り付けたりを自在に行う事が出来る。
<衝撃吸収>
全ての衝撃を受け止め吸収する。
「やっぱり天多は凄いや、俺なんかよりずっと頭がいいと思ってたけど、スキルにもそれが現れているよ。
でも<衝撃吸収>のスキルに目覚めてくれた事が一番うれしいかな?スライムは打撃に弱いからね、天多の場合切られたとしても<分裂>のスキルでその分増える事が出来るかもしれないけど、衝撃で潰されちゃったらそうもいかなかったでしょう?
その心配がなくなっただけでもうれしいよ。本当によかったね、天多」
シャベルは天多を抱き抱えると、慈愛の籠った笑みを浮かべプニプニした身体を撫でまわす。天多はプルプル身を震わせ、“これからもずっと一緒~♪”と喜びの気持ちを伝えるのだった。
「それじゃついでに自分の事も<鑑定>しておこうかな?
最後に自分のステータスを見たのって、確か宝箱からのドロップアイテムで<鑑定>のスキルに目覚めた時だったかな?
深層に来てからの毎日が濃過ぎて自分の事を調べるなんてしてなかったんだよな~」
<鑑定>
名前:シャベル
年齢:十七歳
種族:普人族
職業:テイマー
(所属: 金級冒険者・薬師ギルド正規会員)
スキル
棒術 魔物の友 自己診断 採取 索敵 カウンター 気配察知 暗視 鑑定 統率(New)
魔法適性
なし
称号
進化魔物の友 精霊を従えし者 万魔の主
「えっと、<統率>って言うスキルが増えてるんだけど。<鑑定:統率>」
<統率>
群れを率いる事が出来る。周辺に対する観察力、状況判断能力に補正大。
「おぉ、俺にピッタリのスキル。ダンジョンから無事に地上に戻るためには必須のスキルだよ。本当にありがたい、これも全て女神様のお導きなんだろうな」
そう言い自身に手を差し伸べて下さる女神様に感謝し、祈りを捧げるシャベルなのであった。
「さて、それじゃ皆の状態も分かった事だし、第三十八階層に向かおうか。あまりボス部屋に長居してたら、他の冒険者の迷惑になるからね。
第三十八階層からはボス部屋じゃないけど、ボス的な魔物が続いていくんだったかな?確か“三十階層台はボスラッシュだから気を付けろ”って話だったんだよね。
第三十八階層がジャイアントスネークで、第三十七階層がレッサードラゴンで、第三十六階層がロックタートル。
ジャイアントスネークは馬車も丸呑みにするくらいの巨大蛇らしいからみんなで合体して戦わないと危ないかも。
みんな~、それじゃそろそろ第三十八階層に移動するよ~。次の相手は巨大蛇のジャイアントスネークです。ですのでまたみんなには合体して戦って貰います。
それじゃ行くよ、ケガの無いように頑張ってね~」
“““““クネクネクネクネクネクネクネクネクネクネ”””””
“ポヨンポヨンポヨンポヨンポヨンポヨン”
“プルプルプルプル”
“カタカタカタカタ”
“グルルルル”
シャベルと家族たちは進む、地上への帰還を果たすため第三十八階層に向かって。シャベル率いる魔物の群れは、シャベルの役に立てる喜びに打ち震えながら、意気揚々と次の階層へと続く出入り口へと進んで行くのであった。




