第6層目
懇々と相棒に怒られながら、初心者応援について説明してもらった。
どうやら初心者のうちはスキルの習得が難しいため、少しでも生存率を上げる目的で、免許証と一緒に配られているものらしい。
スキルオーブについては、ダンジョン内の宝箱、もしくは倒した敵から稀に出るという話をよく耳にする。
ただ、それらは基本的に取得できるスキルが決まっており、「〇〇スキルオーブ」という形で入手できるのが普通だそうだ。
そのため、このランダムスキルオーブというのは、かなり珍しいらしい。
そんな貴重なものを初心者応援として配れるほど確保しているのも謎だが、まあ今はいいか。
貰えるものは、有難く貰っておくに限る。
「懇切丁寧に説明いただき、ありがとうございます、相棒」
「どうせDEAの歴史に入った辺りから、集中力切れて聞いてなかったんでしょ」
「説明の最後に初心者応援の話もあったんだから、ちゃんと最後まで聞かないと」
「はい、すみません」
「まったく……」
長時間の説明は、どうにも苦手なんだよなぁ。
ちなみに相棒が説明してくれている間に、職員さんは元の業務へと戻っていった。
「さて、相棒のおかげで初心者応援の内容も理解できたし、早速使用しますか」
「そうだね。できることなら、これからの探索に有効活用できるものだといいけど」
俺たちは同時に、手の中でオーブを破壊する。
説明で聞いた通り、砕けた破片はそのまま手のひらに吸い込まれていった。
――瞬間、脳内に新たな知識が流れ込む。
…………。
これは、当たり来たんじゃないか?
「「ステータス」」
相棒と同時に唱えると、視界にホログラムが浮かび上がる。
ソウル:極限集中
スキル:剣術、直感、水魔法(NEW)
「よっしゃ、大当たりきた!」
「ほんとうかい、何を習得できたの?」
「水魔法さ。これで持ち物から飲み物をある程度減らせる」
「それに、俺たちに足りてなかった遠距離火力も補える」
「いいな。僕は鞭術だったからなぁ……」
「相棒のスタイルだと、鞭術は微妙かもな」
「いや、そうでもないと思うぞ」
「本当ですか、ハルさん」
「あぁ。俺の知り合いの鞭使いは、敵の武器や脚に鞭を巻き付けて妨害することが多い」
「だが君ほどの力があれば、妨害どころか武器を奪ったり、転倒させたりもできるだろう」
「なるほど。そんな使い方もあるんですね」
「タダで貰えたものとはいえ、腐らずに済んで良かったな」
「うん」
これで俺は遠近両対応。
相棒も、近距離一辺倒じゃなくなった。
俺たちは他の冒険者と違って、少数精鋭でやっていく必要がある。
取れる手段が増えたのは、素直に嬉しい。
「ところで二人は、スキルとソウルについてはちゃんと知っているのか?」
「一応、学園で習った分については、知っているつもりです」
「ただ、さっきの風魔法がパッシブ扱いだったのは謎でしたけど」
「あぁ、それはな。魔法系スキルを使い込んでいくと、その属性に因んだ現象との親和性が上がるんだ」
「俺の場合は風魔法だから、自身に対して、ある程度追い風を吹かせられるってわけだ」
「なるほど。自然現象の範疇だから、パッシブ扱いだったんですね」
「そういうこった。一応ズルではあるから、なるべく抑えてたんだが」
「予想通り、二人ともできる新人だったから試させてもらった」
ハルさんは、笑いながらそんなことを言う。
危うくタイミングをズラされかけた身としては、たまったもんじゃない。
「あの風のからくりは分かりましたが、どうしてスキルとソウルを知っているか、聞いたんですか?」
「なに、単純にこれも初心者講習の一環ってだけさ」
「というわけで…楽しい楽しい、座学のお時間です」
俺は今、確実に遠い目をしていると思う。
水魔法も手に入ったし、今日はもう帰っていいかな。
…ダメか。




