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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第1章 駆け出す英雄見習い

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第31層目

 荷物を全部チェストに突っ込み、ホテルをチェックアウトして先生の指定した焼肉屋へと向かう。


 いやぁ、チェストのお陰でキャリーを引きずって移動する必要が無くなったからめっちゃ楽だ。


 まぁ流石にチェックインした時にあったキャリーがチェックアウトする時に無かったらフロントの人に訝しまれるから、わざわざ空っぽのキャリーを持ってホテルから出て、路地でチェストに突っ込んだけどな。


 とても便利なチェストだが唯一不便な点が、複数の物が入った鞄とかは中身を一旦全部出さないといけないんだよな。


 個包装じゃないメン〇スはそのまま収納できたが、個包装されてるハイ〇ュウは1回全部ばらさないと収納出来なくて地味に不便だった。

 しまったなぁ、シュルカ〇ボックスのイメージも追加しとけばよかった。


 今更イメージし直す程では無いし、そのためだけにソウルの反動を受けるの嫌だから、そのうち気が向いた時の俺がやってくれるだろ、きっと。

 …まぁその時には今度はチェストの中身1回全部出すのめんどくさいとか言ってそうだがな。


「カルマのお陰で荷物少なくなって楽になったね」


「だな。危惧してたイメージが途切れた場合も再接続するイメージをすれば、同じチェストに繋がることもわかったし、ガンガン使ってこう」


「うん。でも一応偽装兼非常用で2、3日分の食料とかは持ち運んだ方が良さそうだよね」


「あぁ。特に相棒は俺に何かあってはぐれた時がマズイから、それでいいと思うぜ」


 いやぁほんと、こういう利点だけ見たら英雄選定様々だけど、逆に言えばここまでお膳立てされ、なおかつ使いこなせないとあの世に一直線であることを加味したら、プラマイで見て基本マイナスだな。


 まぁこの程度の理不尽なんて乗り越えてなんぼだからな、いくらでもばっちこいだ。


 全部乗り越えて俺らの糧にしてやる。


「んー、ならやっぱり安価でもいいから収納袋を1つは携帯した方が良さそうだね」


「そうだな。じゃあパーティ資金溜まったら今度こそ狙ってたやつを買おうぜ」


「うん!」


 そんな事を話してたら先生が指定したお店に着く。


 先生からは早く着いたら先に中に入って待っててくれと言われてるが、こんな見るからに高級店に高校卒業したばっかのペーペーを先に入店させようとしないでくれ…。


「相棒、どうする?」


「んー、流石に僕たちだけで入るのはちょっと怖いよね」


「だよな。かと言ってここで突っ立ってるのもお店の邪魔に…いや、相棒ならむしろ集客効果ありそうだな」


「流石にそれは無いと思うよ?」


 ほんとか?

 さっきからチラチラとこっちに視線を送るお姉様方がいらっしゃるが???

 なんなら、今も相棒を近くで見るために隣をすれ違って入店していったお姉様方がいたぞ。


 …ちょっと気になって天の眼で窓から店内覗いたら、ちょうど席に案内されたところみたいでメニューの値段見て口が引きつってたぞ。

 ご愁傷様でした、強く生きてくれ…。


 つか、どんだけ高いんだよこの店。先生の奢りらしいけどいいのか?


 元Bランク冒険者の収入はそんだけいいのか…。


 俺が戦々恐々としてると見覚えのあるワンボックスが駐車場に入ってきた。

 はぁ、やーっと先生が来てくれたと安心してたら、()()()()()がスライドして長身の女性が降りてくる。


 ミルクティーブラウンに染められたショートボブの髪に父親譲りの勝気な瞳。

 日本の成人男性の平均近い身長にモデル顔負けのスレンダーな体型。

 鍛えられた体幹と筋肉による軸のブレない姿勢。


 あとから降りてきたフォーマルな格好にサングラスかけた先生と合わさって、黒服を引き連れた大物女優にしか見えない。


 おっとぉ?()()が一緒だなんて聞いてないぞ。


 隣に視線を向ければ、相棒も俺と同様に困惑してる。


「お前ら、先に入ってていいと伝えたのに待ってたのか」


「いや先生、流石にこんな高級そうなお店に俺ら二人で入る勇気はないですって」


「入学早々に学園長室に直談判にはいけるのにか?不思議な事もあるな、カルマ」


「それはそれ、これはこれっすよ姉御ぉ…」


「というかなんで今日は姉御も?」


「それはだなぁ…」


「まぁまぁ、その理由を聞く前にお店入りませんか?」


「それもそうだな。じゃあお前ら着いてこい」


 先生に続いて入店する。

 俺、高級料亭なんて漫画でしか知らないけど、そのまんまそれなんだが???


 ジャージにジーパンだけどいいのか?

 大丈夫?つまみ出されたりしない???


 いや、待て。

 姉御もグレーのスウェットパンツに黒のパーカーを羽織ってるラフな格好だ。


 仲間がいるのがこんなに頼もしいとは…!

 いやでも、そんなラフな格好にもかかわらず大物女優顔負けのオーラが出てる時点で、やっぱり姉御も敵か。


「おいサズキ、お前の相方が馬鹿な目をこっちに向けてくるんだが何とかしろ」


「いや、そんなこと言われましても…」

「いつもの一時的な発作だと思うので無視してください」


「はぁ、仕方ない」

「食後のデザートを贈呈するなら許そう」


「ありがとうございます、秋音(あかね)()()


 相棒たちが何やら話しているような気がするが、並列思考で姉御に30通りの勝ち方を模索するのに忙しくてよく聞こえねぇや。

 まぁ相棒の顔見る限り、そんな大事なことじゃなさそうだしいいか。


 それよりもそろそろ先生が予約した部屋に着きそうだ。


 …だいぶ店の奥まで来たが、一体全体どんなコースにしたんだ先生。


「お待たせ致しました、こちら万城目様がご予約なされた特・松コースの部屋でございます」

「御用の際は中の端末からお呼びくださいませ」


 そう言うと中居さん…でいいのか?が一礼して去っていった。


 先生は勝手知ったる自分の部屋かのように座敷に上がる。


 姉御もそれに当然のように着いていくが、俺と相棒は足が動かなかった。


 いや、あの、俺らみたいな一般ピーポーが見ても高級ってわかる食器や掛け軸、なんなら鹿威しの音が軽やかに聞こえる座敷にそんなズケズケ上がれるか!!!


「何してんだ問題児コンビ、とっとときな」


「姉御、勘弁してくれ…」


「先生、僕より鬼じゃない?」

「せめて一言最上級コースって教えて欲しかったかな」


「それを言ったらお前ら来ないだろ」

「変に肩肘張らずにとっととこい。俺の金で高くて美味い肉が食えるラッキーくらいでいろ」


 そうは言われましても…。


 隣の相棒と顔を見合わせる。

 そうだな、覚悟…決めるか。


 深く深く息を吸って、全てを吐き出す。


 引きつった顔の先生が視界に入った気がするが無視をする。


「「「ソウル!」」」


「極限集中」「鬼人化」「---!」


「「失礼します!!!」」


 俺たちが座敷に上がると同時に、目の前にいた姉御が拳を振り下ろす。


 あっ、目から星が出た気がする。


 比較的暇してる思考の箇所がそんな呑気な事を考えてる間に、意識が薄れていった。


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