第30層目
ダンジョンから帰還した俺たちは、換金所で天狐以外の素材を売却してDEAを後にした。
なんか周りからの視線がヤバかったんだよな…。
まぁボロッボロの格好をした相棒が視界に入ったら、そうなるのも分からなくはないが、それにしても異常ではあった。
先に換金待ちしてたであろう苦労人お姉さんも心配そうにこちらを見ていたが、隣にいるギャルの突撃を防止してくれただけで大変助かるぜ。ほんとに。
そんなこんなでホテルのベッドにダイブした俺たちはグッスリ眠り、昼頃にのそのそと起床して、お試しがてらチェストに荷物を突っ込みまくっていた。
「相棒、これはヤバイな」
「そうだね、カルマが変なのに襲われそう」
「縁起でもない事を言うのは止めな。俺は何処にも所属する気はねぇよ」
「そうだろうけどさ、これはちょっとバレたらねぇ…」
俺たちが何をドン引いてるかと言うと、軽く検証しただけでも従来の収納袋と異なる、ぶっ壊れ魔法となっていたからだ。
「と、とりあえず現実を受け入れるために、今判明していることだけを羅列していこうぜ」
「まずは収納された物の時間は、収納した時点で止まる」
「これは熱々に沸かしたお湯を入れたコップが熱々のまま取り出せたことと、ストップウォッチを起動した状態で入れて取り出した時に時間が進んでいなかった事から、確定でいいと思う」
ど初っ端から異端すぎる。
収納袋はどれだけ高性能な物であっても、経過時間を1/10にする程度が限界である。
これはあくまで収納袋が既存の袋の収納量を拡張しているため、時間に干渉するのは難しいからと言われている。
しかし俺のチェストの場合、そもそも何も無いところに端末を介してアクセスする形を取っているため、時間という概念が存在していない可能性が高い。
「次は収納出来るサイズについてだが、一旦セミシングルサイズのベッドは余裕だったな」
「ただ自分以外の誰かが収納対象に触れている場合は収納ができなかった」
「収納方法が片手に端末を持って、反対の手で収納対象に触れることだから、多分サイズ限界は無い気がするね」
「それと他の人が触れている場合に収納できないのは、多分所有権の問題じゃないかな」
これに関しては収納袋も、収納対象を袋の入り口に近づけることで収納出来るため、そこまで大きな違いはない。
強いて言うなら触れるだけでOKって点は楽でいいな。
これでもし自分以外が触れていても収納できたら色々悪いことできたんだが…。
イメージし直してもそこはいける気がしないんだよな。
多分盗みって判定を無意識で出してるからだと思うけど、まぁ困ってないからいいか。
「でもってサイズの次は収納限界だが、恐らくちゃんと無限になってる」
「どこまでもスクロールできるから、ほんとに無限なんだろうね。それにちゃっかりソート機能と検索窓まであるし」
「流石に無限に物詰め込むなら、どっちもないと不便だろ」
相棒とどこまでスクロールできるか30分程試したが一向に終わりが見えず、もはやスクロールできているかどうかも分からなくなって疑心暗鬼になったので、無限じゃね?ということで切り上げた。
まぁ1行8マスあって1画面12行あるんだ。
飽きるまでスクロールできるんなら、無限と呼称しても間違いないだろ。
絶対使い切れる自信ないし…。
「でもって最後に生き物についてだが…」
「多分カルマが生きていると認識している物は収納できない…かな?」
「死霊系は出会ってみないと分からんし、微生物とか細菌はもはや目に見えんから分からん」
「ただまぁもし生きてる判定なら無菌室の中でしか使えなくなる訳だし、多分無視してんだろ。知らんけど」
「これに関しては寄生虫とかが気になるね。もし寄生虫が居ても収納できるなら、チェスト内は時間が止まるから死滅するのか、取り出したタイミングで再び動き出すのか…」
「んなもんどっちでもいいだろ…」
「どっちでも良くなんてないよ!それ次第でおじいちゃん達が狩ってくるジビエの安全性が変わるんだから!!!」
「ご、ごめんて」
「もぅ、しっかりしてよね」
まぁ相棒の言いたいことは分からんでもない。
実際に寄生虫とかが死滅するなら、それだけ携帯できる食の安全性が高くなるからな。
…今度ブリでも買って突っ込んでみるか。
それでアニサキスが生きてるか死んでるか検証するとしよう。
にしても相棒は相変わらずのおじいちゃん子である。
まぁ両親が幼い頃に交通事故で他界してるから、さもありなんってところではあるが…。
って今はそれを考えるとこじゃないな。
「チェストの検証についてはこれくらいで全部か?」
「そうだね。あとは何が原因で魔法が途絶えるかだけど…流石にカルマを気絶させるわけにはいかないし」
「一応昨日は俺が先に寝たけど、問題なく使えたんだろ?」
「うん。だからほんとにカルマの身に何か起きない限りは大丈夫だと思う」
「そか。じゃああとは誰が使えるようにするかだが、ぶっちゃけ俺と相棒だけでいいだろ」
「そうだね、それでいいと思うよ」
「んじゃそれでいこう」
「さて、そろそろいい時間だし準備してお店向かおうぜ」
「万城目先生の行きつけの焼肉屋さんだっけ、楽しみだね」
「あぁ、しかも先生の奢りらしいし、お腹いっぱい食わないとな」
いやぁ、どういう風の吹き回しか知らないが、先生が焼肉を奢ってくれるらしいので遠慮なくいただくつもりだ。
ただなぁ、直感先生が微妙に反応してるんだよな。
警告ではないから危険はないと思うし、先生に限って俺らを嵌めることはないはずだしな…。
なんだろ、とりあえず生焼けには注意しとくか。
食べ過ぎ以外でお腹壊したくないし。




