第24層目
「タイプ:ウォーター、モード:デミ アイスソード」
過冷却した水で創造した刀を氷刀に変えて上段に構える。
目と鼻の先で上空の相棒に奇襲する機会を狙っている哀れな狼に向かって、氷刀を振り下ろす。
氷刀は抵抗なくその首に吸い込まれ、斬り落とす。
何が起きたかも分からぬ顔をしたまま頭が地面に落ちると、狼は黒い煙となり毛皮を残して消えた。
「よしっと、これで火炎独狼の毛皮は必要数集まったな」
「そうだね、これで目標金額にも到達したね」
「よっしゃ、じゃあちゃちゃっと帰って防具買いに行こうぜ」
相棒に抱えられ、14層から11層の帰還箱へと空を駆け抜けて向かう。
先生から英雄選定について聞いてから10日目、俺たちは防具を新調するために【火花】にて依頼消化を兼ねたお金稼ぎをしている。
あの日、解散前に先生から忠告をされなかったら、こんな駆けずり回ってお金稼ぎすることもなかったんだけどな…。
あれは若干涙目になりつつも意地になって全額出した後、先生を駅で見送ろうとした時だった。
―――――
「そういやお前ら、ちゃんと防具は更新してるか?」
「なんすか藪から棒に、まだ学園のジャージで事足りてるんでそれっすけど」
「はぁ、やっぱりそうか」
「お前ら、Eランク上がるまでは学園ジャージで事足りると思っているのかもしれんが、選定に遭遇した以上そうも言ってられんぞ」
「確かにそれはそうっすけど…」
「サズキ、どうせお前のことだ」
「収納袋を購入する為にある程度資金を貯めてるだろ」
「そうですね、収納袋はいずれ必要になるので、一応ある程度の資金を貯めてますね」
「確か、もうそろそろ3人程度なら1週間くらいダンジョンに籠ることができるサイズが買えるくらいには貯まってんだっけ?」
「うん、さっきショップ行った時に確認しといたから大丈夫」
「例の選定の報酬を売ったお陰で、買おうと思えばパーティー資金で買えるよ」
流石相棒。俺がのんびり妖刀もどきやらを観察している間に仕事を済ませてくれている。
…いつも助かってます、足を向けて寝れねぇぜ。
「ならちょうどいい、それだけの資金が貯まっているのならDランクのモンスター素材の防具を買えるな」
「先生、そこまでのお金は貯まってないです」
「別に何も全身一式更新しろとは言わないさ」
「ただ胸当てや額当て、小手にブーツくらいは更新しておけってだけだ」
「選定はいつ発生するか分かってない、だからできる限り常に万全を期しておくべきだ」
「うーん、カルマどうする?」
「先生がここまで言うんだから装備の更新を優先でいいと思うぜ」
「どうせ当分の間俺たちはFランクダンジョンがメインだからな、そんな数日も籠るってことをする予定はないし収納袋はまた次でいいんじゃないか」
「それもそうだね、じゃあ武器更新をしなかったし代わりに防具更新をしようか」
「すまんな、もう俺はお前らの担任じゃないのに口うるさく言ってしまって」
「なーに言ってんすか、先生!」
「先生はこれからもずっと俺らの先生っすよ」
「カルマの言う通りですよ、先生」
「これからも色々相談させてくださいね?」
「ふっ、生意気な奴らだ」
「なら今後も口うるさくいくからな、覚悟しとけよ」
「望むところっすよ、先生」
―――――
ということで、依頼を達成しついでに狩ったモンスターの素材も売却して防具を更新する資金を工面することができた。
いやぁ、ホントは追加で金策する必要はそこまでなかったんだが、先生と分かれた翌日に一旦どんなものがあるかを見に行った際に運命の出会いをしてしまったんだよな。
なので追加の金策も止む無しといったところだ。相棒には呆れられたけどな。
「んじゃ、サクッと試着しようぜ相棒」
「うん、でもほんとにそれにするんだね?」
「モチモチよ!いやぁ、効果も込みでアリアリだろ」
「見た目のことを言ってるんだけどね…」
きっと呆れた眼を俺に向けている相棒を無視して、俺は試着室に入り各種装備を身に纏う。
…想定通りばっちりだ。
相棒とはこれだけはやっぱり気が合わないんだよなぁ。
姿見に映る自分の姿に満足して試着室を出ると、相棒は先に出て待っていた。
学園支給のジャージをベースに、濃紺色の胸当てをして肘と膝には相棒の鳴無流の技に耐える硬度を持つプロテクター。
メリケンサックを搭載し、前腕を覆う細身の紅色ガントレットを付け、利き腕の左腕に例の鎖を巻き付ける。
胸当て同様に濃紺色の膝まで届きそうなブーツも蹴りを意識してか機動性よりも安定感を重視した形になっている。
でもここまでやって相棒は頭剝き出しなんだよな…。
まぁソウルを使用したら邪魔になるから仕方ないんだが。
「うーむ、うちの相棒はなぜベースが学園の黒ジャージのはずなのにそつなく着こなしているのか」
「相も変わらずイケメンでお兄さん悔しいです」
「まぁ俺の装備も格好いいから良いんだけどな!」
「ははっ」
なーんでうちの相棒は乾いた笑いをしてるんだか。
鏡に映る俺は、相棒と同様に学園の黒ジャージをベースとしている。
せっかく隠密スキルとそれを強化する外套を手に入れたのだからそれを生かすっきゃない、ということで先ず足元は足袋に脚絆である。
いやぁ、鳴無流の山籠もりでどっちも使ったことがあるからな、ぶっちゃけそこらの靴より楽なんだよね。
でもって腰はすっ飛ばして胴体は相棒と同様に濃紺色の胸当てをしている。
強いて言うなら俺は相棒よりも機動性を重視しているから、胸当ての範囲がそこまで広くなく心臓周り+α程度ってところか。
その上から例の外套を羽織っているからぶっちゃけ熱いんだが、水魔法を使い続けているおかげか親和性が上がってきているっぽくて、服の中の温度を少し下げることに成功しているからそこまで問題ではない。
そして頭には顔の上半分を覆う狐面をしている。
もう一度言う、顔の上半分を覆う漆黒の狐面である。
しかも狐火スキルの呪いが強くなるという効果付き、これはもう買うっきゃないだろ。
そしてそれとセットで売られていた小太刀を腰に佩いている。
こちらは焔狐からドロップする小太刀らしく、使い手が敵と認識した相手は刀身が少しブレて見えるらしい。
いやぁ、とてもいい買い物をした。
なんだい、相棒?
意見があるなら口に出しな?
目は口程に物を言うって?
お兄さん、ちょっとよくわかんない!




