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クラン 魔を狩りし者へようこそ ~深淵を目指す英雄見習いコンビ~  作者: 鎖月 弥生
第1章 駆け出す英雄見習い

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第22層目

 相棒に冷たい目で見られ、心が折れたので泣く泣く妖刀もどきを諦めてショップを後にした。

 まぁぶっちゃけあのレベルの刀なら、こないだ作製した氷製の刀で同じくらいの切れ味になる。観賞用以外の何物でもないし、相棒に却下されるのも残当である。


 でもちょっとしょげた。いいじゃん妖刀、カッコイイじゃん?


 まぁそれはさておき、そろそろ約束の時間なのでアフヌンのお店前で先生を待っている訳だが…

 相棒が淑女の方々の目線を独り占めしてて悲しくなってきた。


「はぁ、相変わらず相棒はモテるなぁ」


「自覚ないかもしれんが、3分の1くらいはお前を見てるぞ、朧月」


 困ったように苦笑いする相棒を恨みがましく見ていると、背後から声をかけられる。

 半月ほどぶりに聞こえた声に振り返ると、見知らぬ初老のイケおじが居た。

 …誰?


「おいこら筆頭問題児、誰だこいつって顔をするな」


 聞き覚えのある声が見覚えのないイケおじから聞こえる。

 相棒と変らず劣らずの高身長で、筋肉質な肉体を紺系統で統一されたフォーマルな装いで包み、潔く白く染められたショートウルフを整髪料で整え、伸び放題だった無精髭が消えている。


 …ホンマに誰?


 俺が首を捻りまくっていると、イケおじのこめかみがヒクヒクと動く。

 やべぇなぁと思っていると隣にいた相棒に脇を小突かれる。


「見慣れないけど万城目(まんじょうめ)先生だよ、カルマ」


「分かってる。でも心が認めるのを拒否してる」

「だってジャージか鎧以外の先生見ることないし」


 俺たちがヒソヒソやっていると、先生が大きくため息をつく。


「娘にな、昨夜言われたんだよ」

「今日行くこの店はそれなりにお高いのと若い女の子に人気だからちゃんとしてけって」

「それを聞いた嫁さんが朝から張り切った結果がこれだ。いっそ殺せ」


 死んだ魚の眼をして嘆く初老のイケおじこと万城目先生


 哀れ、万城目(まんじょうめ)俊彦(としひこ)

 歴戦のBランク冒険者でも流石に奥さんには勝てないらしい。


 というかまさか先生がフォーマルな服装で来ると思ってなかったから、俺だけ浮いてるなこれ。

 相棒は私服が基本フォーマルな格好で、先生は奥さんに整えられて現在の格好。

 それに対して俺はデニムにZIPパーカーを羽織ってるだけ。辛うじてスキニータイプなだけマシか?


 …とりあえずこのお店にドレスコードが無いのはサイトで確認済み。

 イケおじと化した先生が加わった事でさらに視線が増えた淑女方を見ても、カジュアルな方々はそれなりにいる。


 よし、きっと大丈夫。

 あと先生、流石にこの視線の3分の1は俺じゃないと思うぜ。あって6分の1くらいじゃないか?


 予約していた時間となり、俺たちは個室に案内される。


「鳴無、アフタヌーンティーにマナーとかあるなら先に教えてくれ」


「んー、個室だしそこまで気にしなくてもいいかもしれないですが、基本的には運ばれてきたタワーの下段から自分の取り皿に分けて食べれば大丈夫かと」

「あとは一般的な食事マナーが守れてればそう問題はないはずです」


「そうか、わかった」


 ほぇー、下段から食べないとダメなのか。

 いつも相棒がテキパキ分けてくれてたからなんも気にしてなかったぜ。


 俺たちが談笑しながら席に着くと、店員さんが食事と紅茶を運んできて内容を説明してくれる。

 季節の紅茶ということで桜をイメージしたものらしいが、俺はようわからん。

 相棒の目がキラキラ輝いてたのでそれでよし。とりあえず角砂糖でも入れるか。


 それぞれがサンドイッチを取り分け、男だらけのアフタヌーンティー会が開催される。


「さて、問題児コンビ」

「鳴無…いや、今はサズキと呼んだ方がいいか。サズキから話はあらかた聞いている」

「そして今回俺を呼び出した要件もだ」


 サンドイッチに入ってるローストポークの作り方に思いを馳せながら食べていると、先生から話を振られる。


 ふっつーに忘却の彼方でした。先生がイケおじになったのとサンドイッチ美味すぎなのが悪い。

 …いや、ほんとにこのローストポークサンド美味しいのよ。


「そこのサンドに夢中になってるおバカさん、帰っといで」


「ほいよっと、先生もう大丈夫っす」


「そうか。まぁだが時間に制限はあるし、食べながら聞いてくれればいい」

「とりあえず確認だが、お前たちはこないだダンジョン内で英雄選定に遭遇した。これで間違いないな?」


「そうっす。でもって英雄選定なるモンパニを制圧して帰還、DEAに報告したら職員さんは知らなそうって感じっす」


「Fランクダンジョンに併設されているところの平職員レベルではそうだろうな」

「本来英雄選定はDランク以上のダンジョンで起きる事象だ」


「Dランク以上っすか?」


「その話が本当ならどうして僕たちはFランクダンジョンで…」


「極々稀にいるんだ。お前らみたいな特異点が」

「お前らの実技テストを担当したはる坊とかな」


「えっ、ハルさんと知り合いなんですか?」


「まぁな、冒険者時代に新人教育しただけだが」

「それはさておき、はる坊はEランクダンジョン攻略中に英雄選定に遭遇してる」

「それですら極めて稀だ。お前らみたいにFランクダンジョンで遭遇したなんて話、最初期から聞いたことがない」


 俺たちがファーストペンギンってことか?

 …いや。


「遭遇したが帰って来れなかった…か」


 俺の口から漏れ出た言葉に、先生は頷く。


「恐らくそうだろう」

「Fランク程度の新米と言っていい冒険者では、本来モンパニなんて捌き切ることはできないからな」


 そんな事を言いながら、先生は呆れた目で俺たちを見てくる。


「その点お前ら問題児コンビは、常に2人で学園のFランクダンジョンを攻略。なんならTAじみたことや、階層のゴブリンを集めて100体組手なんて馬鹿げたことしてたから生き残れたのだろう」


 へへっ、命懸けの戦いをしてきた成果か。

 まぁ普通に何度か死にかけたし、保健の先生とはマブになれるほど通う羽目になったけどな。


「褒めてないからな、筆頭問題児」


 うっす。


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