第20層目
ポーションが効いてきて、身体の痛みがだいぶ引いてきた。
大地と仲良くするのはやめ、ゆっくりと起き上がる。
ソウルの反動はポーションではどうにもならない。
頭痛は相変わらず酷いが、帰還する分には問題ないだろう。
それよりも――
俺は今、目の前の宝箱が気になって仕方ない。
妖狐討伐後、神社跡地に出現した宝箱が二つ。
英雄選定とかいう大層なイベントのクリア報酬だ。期待しない方が無理だろ。
「もう起きても大丈夫なの?」
「あぁ、なんとかな」
「頭はまだバカ痛ぇが、いつもの事だ」
「それよりこの宝箱だろ……!」
「確かに、モンパニ終息後に宝箱が出るなんて話は聞かないね」
「だろ?天の眼で警戒するから二人で開けようぜ!」
……やべぇ、頭痛のせいでテンションがおかしい。
まぁいいか、アドレナリンのせいってことで。
「相変わらずソウル終わりのカルマはテンション高いねぇ」
「頭痛が痛いってやつさ!テンション上げてかねぇとやってらんないのよ」
「それより相棒、どっち開ける?」
「いつも通りカルマに任せるよ」
「おけぃ、なら直感先生だな」
…!
右ッスね?了解ッス!
「俺が右、相棒は左な」
「中身の優先権はいつも通り、開けた方ってことで!」
「了解」
「「せーの!」」
二人同時に蓋を開け、腕を突っ込む。
なるほど、モンパニ中に素材が落ちなかったのはこれが理由か。
倒したモンスターの毛皮、爪、魔石などの素材が詰め込まれている。
……あっ、オーブが二つもある。
そして――
クックック…
フハハハハハ
ハーッハッハッハ!!!
「見ろよ、相棒!」
宝箱から引き抜いた右手に、ファー付きのクリーム色の外套。
「あのクソ狐、防具になりやがった!」
「因果応報ここに極まれりだな!」
「執念の勝利だねぇ……」
「こっちは犬用の鎖みたいなのが出てきたよ」
そういう相棒の腕には、5m程の朱色の鎖が巻き付いている。
確かにリードに見えなくもない。
「他はオーブ一つと素材だね。カルマは?」
「似たようなもんだ。ただオーブが二つ」
「豪華だね」
「それは中身のスキル次第だな。砕くぞ」
宝箱から取り出したオーブを立て続けに砕く。
……ほう。
「ステータス」
ソウル:極限集中
スキル:剣術、直感、隠密(NEW)、天の眼(NEW)、水魔法、狐火(NEW)
「俺は狐火と隠密だな。相棒は?」
「火魔法だったよ……どうしよう」
「脳筋の相棒に魔法はなぁ……」
「そんなことないよ!見てて!」
「魔法はイメージが大事…イメージぃ…」
「ファイアランス!」
相棒の手のひらから火でできた槍が射出される。
――爪楊枝サイズで。
「何も聞かないで、カルマ」
「……おう」
適正の問題か。
これだからオーブによるスキルの取得はギャンブル性が高くて怖い。
適性の無いスキルを覚えられる反面、使いこなすことが難しい。
選択肢が増えるだけマシと考えるか、扱えなきゃ意味がないと切り捨てるべきか…こればかりは相棒と相談だな。
そんなことを思いながら隣を見れば、しゃがんで地面にのの字を書く相棒がいる。
おいたわしや…明日は休みにしてアフヌンだな。
「イジけるなよ、サズキ」
「イジケテナイシ」
「イジけてないなら明日休みにせずにダンジョンな。装備更新ついでにアフヌン行くつもりだったんだけどなぁ!」
「アフヌン!行く!カルマの奢りで!」
……元気じゃねぇか、おい。
まぁいいか、元気が出たなら。
ついでに英雄選定についても色々調べたいしな、明日休日だし万城目先生呼んだら来てくれないかな。
今は春休みだしきっと暇だろ、最悪泣きつけば来てくれる。
「何してるのさ、カルマ」
「ボーっとしてたら置いてくよ!」
「わりぃわりぃ、明日万城目先生呼んだら来てくれるか考えてた」
「確かに、今回のこと先生に相談してみたいね」
「あぁ、DEAに相談もするが、先達に聞いてみたら別の回答があるかもだろ?」
「なんなら都市伝説としてすら聞かないんだ、DEAから情報統制されてる可能性すらある」
「そうだね、じゃあ僕の方から声かけてみるよ」
「カルマはアフヌンの予約任せるよ、せっかく名古屋に来てるし行ってみたいお店あるんだよね」
「ははは…りょーかい」
万城目先生、来てくれよ?
そして俺の分まで奢ってくれ…!




