第15層目
えー、何とか無事にFランクダンジョン【火花】に俺たちは居ます。
はい、無事です。
ちょっと殴り飛ばされかけましたが、直感先生のお陰で五体満足でございます。
……ほんとに相棒の寝起きの悪さ、どうにかならんかなぁ。
まぁダンジョン内で寝泊まりする際は流石に大丈夫だから、良しとするか。
「カルマ、送ったここの情報は頭に入ってるよね?」
「あぁ。お前さんが起きるまでに読み込んどいたから大丈夫さ」
相棒に問われながら、俺は夜の神社を思わせる境内を見渡す。
生い茂る木々に囲まれた石畳はどこまでも続き、等間隔に設置された灯篭に淡く照らされている。
その光景を横目に、このダンジョンの情報を反芻する。
【火花】に出現するモンスターは、基本的に【草むら】に出現した草緑水豚と同程度か、それよりやや強いらしい。
攻撃方法は火魔法が主体…つまり俺の水魔法は相性がかなりいい。
ただその代わり、火を纏う個体もいるらしい。
徒手空拳が主な相棒は、やや苦戦する可能性がある。
……まぁ相棒の場合、火傷しても気せず殴るだろうが(前科多犯)。
それと石畳周辺は比較的広く、灯篭のお陰で視界も悪くない。
だが石畳の外、木々の奥はかなり見通しが悪い。奇襲には注意が必要だな。
……というか、こんだけ木が生い茂ってるのに火魔法主体ってどうなんだ。
火事上等かよ、恐ろしいな。
「そっか、なら大丈夫そうだね」
「ここは全部で15階層あるし、のんびりやってこうと思うから、低層のうちは僕は鞭術を主に使おうと思うけどいいかな?」
「いいぜ。俺も試したいことがあるし、5層目くらいまでは俺が前衛で相棒が中衛って感じでもいいか?」
「うん。今朝話してたこと試すんだよね? 大丈夫」
「サンキュ。なら、ぼちぼち移動しますか」
俺はソウルの副次効果、相棒は|鳴無流(蛮族流派)の影響で夜目が効く。
雑談している間に、だいぶ目もこの薄暗がりに慣れてきた。
相変わらず木々の奥は見えないが、石畳付近なら何かが居れば分かる程度にはなっている。
ほら、今も子狐がこっちを見つめてる。
……こっちを見つめてる!?
「相棒! 左!」
声をかけると同時に、子狐へライフルを放つ。
咄嗟の射撃で狙いは甘く、弾はヒラリとかわされ、水弾は地面を穿って濡らすだけに終わる。
だが相棒には、その一拍で十分だ。
尾の先に火を灯し、こちらへ放とうとする子狐の元へ、相棒の鞭が空気を裂きながら襲い掛かる。
さて。
子狐の相手を相棒に任せ、俺は魔法のイメージに集中する。
試すのは、剣への水魔法の付与。
ただ水で覆うだけでは鈍器だ。
俺が持っているのは棍棒ではなく剣。斬れなければ意味がない。
剣から飛ばすわけではない以上、ウォーターカッターで斬り裂く発想は違う。
なら発想を変えよう。
切断ではなく、削り断つ。
濁流が河岸を削るイメージ。
そこにチェーンソーの回転歯のイメージを重ねる。
荒々しい水が刃渡りを流れ続け、敵の体表を削り、断つ。
……よし、イメージできた。
ならば、あとは想像から創造だ。
「タイプ:ウォーター、モード:チェーンソー」
手に持つ剣が水を纏う。
刀身が一回りほど大きくなり、その周囲の水が一方向に動き始める。
鍔から切先へ、切っ先から鍔へ。
荒々しく、しかし崩壊することなく刃渡りに沿って激流が流れる。
終点へ辿り着いた水は、そのまま空気中へ霧散する。
柄まで循環させたら握るのに邪魔だからな。
そこは空気中に放棄だ。
「待たせたな、相棒!」
相棒と子狐の間へ割り込むように体を入れ、付与済みの剣を振り下ろす。
相棒に集中していた子狐は慌てて回避する。
舐めてもらっちゃ困る。
それくらい読んでいる。
左手に隠し持っていた、同様に水魔法を付与した短剣を、回避先へ合わせて振るう。
水刃は子狐の毛を巻き込みながら、顔の左半分を荒々しく削り斬った。
刀身が一回り大きくなっている利点が出たな。
当たれば良いとは思っていたが、ここまでクリーンヒットするとは。
怯んだ子狐へ、すかさず相棒の鞭が伸びる。
火を纏う尾ごと拘束。
あとは――1分クッキング。
君がッ!
亡くまで!
殴るのをやめないッ!!!
俺の滅多斬りと相棒の乱打によって、拘束された子狐は瞬く間に黒い煙となって消えた
絵面はともかくとりあえず通用したので、ヨシッ!




