第11層目
13時を過ぎた頃。
初戦闘以降もサクサクと歩みを進め、俺たちはすでに4層目まで下りてきていた。
ここまでの道中、特筆すべき出来事は特にない。
強いて挙げるなら、草緑鼠が複数体で襲いかかってきたり、まばらに生えた木の上から草緑栗鼠が木の実を吐き出してきてそれを打ち返したりしたくらいだ。
いくつかGランクの魔石は拾えているが、スキルオーブや素材は今のところドロップしていない。
魔石というのは、モンスターを倒した際にたまにドロップするもので、これを動力源として魔道具は動いている……らしい。
親曰く、乾電池?とかいうものの代用品として、世界中に普及しているそうだ。
俺はその辺りに疎いので、この魔石でテレビのリモコンが動くんだなぁ、くらいの感覚でしかない。
Eランク相当の魔石ともなれば、冷蔵庫などの大型家電を半年稼働させられるほどのエネルギーを蓄えており、それなりの値が付く。
とはいえ、ここで拾える程度のものだと、小学生の小遣いになるかどうか……といったところだ。
もっとも、その代わりに常設依頼でダース単位の納品依頼が出ているため、初心者のうちはそれで稼ぐのが目標だとよく言われる。
……まぁ、俺たちにはあまり関係ない話だが。
「さて、お目当ての4層目に辿り着いたわけだが……もうチラホラいるな」
階層を繋ぐ階段を下りきると、これまでと同じような草原が広がっている。
その中で、大型犬サイズのカピバラが、のんびりと寝転がっているのが見えた。
「とりあえず1回戦ってみてからお昼にしようか」
「りょーかい。そろそろお腹も空いてきたし、ちょうどいいな」
さて、このあと食べるサンドイッチを美味しくいただくためにも、サクッと片付けるとしますか。
視界に入る中で、最も近くにいた草緑水豚へと近づいていく。
草緑鼠や草緑栗鼠なら確実に反応する距離まで近づくが、目の前の草緑水豚は相変わらず吞気に丸くなっていた。
「毎度思うが、ノンアクティブモンスターってなんで存在するんだろうな」
「さぁね。一説には魔人がいた頃の配下で、倒された後のダンジョンボスの命令を聞く気がないから……とか言われてるよ」
「ふーん、そういうもんか」
「まぁ、お陰で俺たちは楽できてるわけだが」
俺は魔法のイメージを固め、照準を草緑水豚に合わせる。
「相棒、準備はいいか?」
「もちろん。いつでも大丈夫だよ」
「おっけ。なら――寝起きドッキリと行きますか!」
タイプ:ウォーター、モード:ライフル
何度も使用したことで強固となったイメージ通りに指先から水弾が放たれると同時に、相棒が駆け出す。
水弾は狙い通り頭部に命中し、草緑水豚は驚いて跳ね起きようとするが、脳を揺らされた影響で初動が大きく遅れた。
「鳴無流――雷鬼」
……おぉぅ、痛そう。
必死に立ち上がろうとする草緑水豚の頭部に、相棒の拳が叩き込まれる。
体がびくりと跳ねたのを見て、俺も次の行動に移る。
だいぶ勝負はついているが、それでもここでは最強クラスだ。
油断して怪我でもしたら、洒落にならない。
事前情報から水魔法の通りが良くないのを知っているため、剣を手に駆け寄る。
相棒と二人がかりで、容赦なく叩き込む。
哀れ、草緑水豚は相棒に頭を打楽器にされ、俺に胴体をズタボロにされる。
一分も経たずに、立ち上がることなく黒い煙となって消えた。
煙が晴れると、今までより一回り大きいゴルフボールサイズの魔石が転がっていた。
「魔石のサイズ的に、Fランク相当かな?」
「Fランク相当を嵌め倒しか……」
「これは確かに、金策にちょうどいいな」
「じゃあ、お昼食べてから狩り尽くそうか」
「うん。ところでカルマ、今日のお昼は?」
「草原タイプのダンジョンってことで、サンドイッチです」
「……ほんとにピクニックする気満々だったんだ」
うるせぇやい。
ダンジョン内でピクニック気分を味わったっていいだろ。
階段の隅で食べていれば、モンスターが来ても上層に逃げられるし、ある程度は安全だ。
「そんなこと言う子は、お昼抜きです」
「わー! ごめんごめん! 冗談だよカルマ!」
「ったく……仕方ないな」
「ほら、階段の方戻って、ちゃちゃっと食うぞ」
「もちろん! ほら、早く早く!」
「はいはい」
腹ペコ美青年がニコニコしながら階段へ向かっていく。
……あ、進路上にいた鼠が、鞭でシバかれて瞬殺された。ご愁傷様です。
「カルマー! スキルオーブ出たよ!」
……は?
……なんで???
先生。
世の中って、理不尽だと思うんですよ。俺。




