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ウィッチでビッチな魔女のミソラ

「2月15日東京都が消えた。

 謎の黒い霧が発生、

 同時に東京都内外からの通信が断絶、

 通信不可能と断定。

 

 上空ヘリで確認も上部まで覆われているため都庁内の視認不可。

 四方を覆うドーム型だと断定。

 2年の歳月が経過したのち、黒い霧の濃度低下を目視で確認、

 12日経過後、霧の透視が可能に、確認したところ東京都の消失が確認された。

 

 国からの発表では、消失された東京都から基準値以上の核汚染が確認され、

 東京都近辺、または東京都に連なる半径500メートル以内の、

 市町村の立ち退きが決定したと発表された。

 

 南海トラフ地震が発生し、復興に向けて一丸となっていた日本への予想外の大打撃だった。

 後に、この大災害のことを悪魔が降臨した年。

 悪魔の一年と呼ばれ、歴史に刻まれることとなった。」


 プツッと携帯から流れていた音が途切れる。

 コメント欄に目を通す。


 「亡くなった人のご冥福を祈ります。」のコメントや、

 「お疲れ様www祈っても何も変わらないよwww」のごみコメントや

 「この国は何をやってるんだ。対応が遅すぎるから死人が増えた。国民の税金つかってるならはやくしろ」など

 好き放題書かれ、有象無象が蔓延していた。

 

 下のほうにスクロールする。  

 すると、「神」がこの災害を起こしたという陰謀論を唱えているものが何人もいた。

 その中には「魔女が降臨したのです。今こそ命を捧げましょう」や

 「ネットで空から悪魔が降臨した動画がバズってるぞ!!!」なんて、言ってるやつもいた。

 ネットだと悪魔のような魔女のような神のような生物が写ってる動画があるらしい。

 そして、そのコメントには返信が来ていた。

 

 「でも、もし悪魔が、神に等しい者がいたら...僕たちは許されるのかな?」      


  亀吉というアカウントは続けて返答する。

 

 「こんな人の不幸しか喜べなくて」

 「こんな世の中のせいで僕は外に出れなくて」

 「こんな戦争ばっか起こって、過去から学べなくて」

 「こんな世界に...]

 「魔女はいったいどうするんだろう」

 

 コメントを読んでいた携帯の電源をぷつりと消す。

 電気をつけてない部屋で目の前にいる存在に話しかける。

 「で、どうなんだ魔女様?これでよかったのか?」

 「それは愚問だね。君たちが望んだんだよ?」

 「望んだ?どういうこなんだ?」

 「コメントをした彼がいっていただろう?許されるのだろうかって。答えはno。許されない。それだけだよ。」

 

 .......どう受け止めていいのか分からなかった。


 普通の姿、容姿をしていたら笑い飛ばせただろう。

 だが、目の前にいる存在は、天使の翼をもち、黒い喪服を纏い、頭に二本の角が生えている。

 見た目は神というより悪魔のソレだった。

 それよりも、なぜ子供の姿をしてるのかが疑問でならない。

 

 「お前は悪魔、神、魔女、どれなんだ?」

 「お前ね、、、」

  

 さっきと同じ顔をしているはずなのに、恐怖と畏怖をひしひしと感じる。

 やばいな、、、

 地雷を踏んだか。

 敬語つかっとこ

  

 「さっきの質問に答えよう。すべてが私だね!」

 「すべてが私?どうゆうことなんですか?」

 

 さっきよりも明らかに機嫌がよくなった。

 敬語が功を奏したのだろう。

 あれなのか?ツンのデレなのか?


 「教えてあげよう!そもそも悪魔、神、魔女には役割がある。」

 

 意気揚々と声高らかに言ってくる。

 やばいな、なんかちょっと高揚感が出てきたな

 世界の心理を知ってしまった!みたいな。


 「まず悪魔は人類の掃討、人口を調整、適時減少させる役割だ。 

 君たちの世界でいうところの制御システムのようなものだ。

 ノアの箱舟の大洪水、スノーボールアースなどが最たる例だね。」


 は?,,,,,,,ふぇ,,,,,,,,?


 「まじ?」

 「まじね。後あなた敬語忘れてるわよ」

 

 いや、そんなこと急に言われても、、、ね。


 「すみません、続けてください。」

 

 そう言うと「ったく、敬意がないな。ブツブツetc」と悪態をついてきた。

 何が魔女だ。ガキじゃねーか。

  

 「こほん、続けて二つ目神はたぶんそもそもいない。というか私もあったことがない。」

 「神が人間を作ったんじゃないんですか?」

 「それは貴方達人間の考えでしょう?実際に神にあったことがあるの?目で見たの?声を聴いたの?」

 「そりゃ、分かんないけど....」

 「そう、分からないのよ、この世界の殆どは僅かな真実と殆どの分からないで構成されているのだから。この世のすべてを知るなんておこがましく傲慢なことなのよ。第一、貴方達より進化している私が分からないのだから。」

 

 なるほど、そもそもの根本の考え方や思考パターンが違うのかもしれない。

 こう、人類は物体を平面でしか捉えられないが、ゴスロリ天使擬きは立体で捉えられるみたいな。

 一段階進化した生物なのかもしれない。


 「そして最後ね。魔女は裁定者や調停者、まあ、つまりは地球のリセットの役割ね。だから私が来たのよ。」

 「......結局何がしたいんだ?」

 「そうね......私はまだ裁定の時は早いんじゃないかと思っているの。もっと人間という種を理解してから審判を下したいの。」

 「じゃあ、なんで俺のもとにいるんだ?」

 「たまたまだよ。たまたま.....ね?」


 そう言って小悪魔的にほほ笑む。

 違うな、ほくそ笑むか。


 「俺の人生なんてゴミくずだぞ?替えの利く代替品。代わりなんていくらでもある、つまり....は意味がないんだ。」


 そういうと、びっくりして目をぱちくりさせる。

 そしてくすくすと笑い始めた。

 そんな面白かったかな?

 ひとしきり笑いきった後、俺の目をじっと見た。


 「私が君の人生に意味を与えてあげよう。そして君の人生を通して人類を見定めてあげよう。」

  

 意味を与える?馬鹿馬鹿しい。変わるわけがないだろう。諦念しか湧いてこないのだから。

 この諦念が俺の体を芯から腐らせたのだ。

 何もできない。

 変われない。

 意味がない。

 どうせ無駄だ。

 そして、、、生きたってどうしようもない。

 この魔女の言葉が俺の人生をあざ笑ってるように聞こえてきてならなかった。

 嘲笑しているように聞こえた。

 だから言ってやった。


 「何がかえられるっていうんだ?口先だけだろ?」


 そうすると目を離さないまま床に手をついて顔をグッと近づけてきた。

 ふわっと香る花のようなにおいが鼻孔をくすぐって誘惑してくる。

 人を近づけさせない心を近くに心を通わせようとばかりに。

 

 人を拒絶する両腕は掴まれ、

 体をいとも簡単に押し倒され、

 ナニガとは言わないが息子に伸し掛かられた。ついでに息子は起立を始めていた。

 挨拶ができる礼儀正しいムスコだ。実に誇らしい。

 そうすると少し顔を恥じらわせながら、頬を赤らめる。


 「君、不敬だね!サイテーだよ!」


 頬をパンパンに膨らませ、リスみたいになっている顔で言ってくる。

 すいません、生理現象なんですうぅ


 「まあでも、生存本能はちゃんと生きたいっていってるんじゃないかな?」


 そう...なのだろうか、まだちゃんと生きたいって思えているのだろうか?

 ...わかんないや。


 「顔に出てるよ、生きていける自信がないって。」

 顔に出ていたらしい。

 見透かされているような視線を向けて来る。

 そして小悪魔的にほほ笑んできた。

 

 次の瞬間、何の脈略もなしに唐突にキスをされていた。

 その瞬間、恐怖とも高揚とも言えそうな動機がした。

 ビクッと体を震わせ驚いたが、抵抗しても意味がないと悟っていた。

 手を後ろに回され、逃げ出せないように骨が悲鳴を上げそうな力でホールドされていた。

 初めてのキスは案外味気なかったが、満たされている感覚があった。

 そしてあったかかった。

 何故か分からないけど冷たいと思っていた。

 目の前にいる生物は温かかった。無機質で冷たいとばかり思っていたのに、人間と何ら変わりない暖かさを持っていた。

 目の前を見ると、目が合った。

 そこに目が在った。お互い見つめて逸らさなかった。

 ずっと見つめていたのかと思うと少し恥ずかしい。

 改めて見ると、見惚れるほど美しい。

 月や太陽のような神秘的な美しさを纏っている。

 魔女の瞳はコバルトブルーの様に美しい色彩を放っていた。



ーーー15分後



 

 長い、ずっと舌を弄られてる。そろそろ息が出来なくて辛い。

 ダイソン並みの吸引力とバキュームを持ち合わせていたなんて、、、えっどいな

 おっと、間違えた、えっぐいな。

 永遠に唾液を絡ませられる。

 ジュボジュボずっと音を鳴らしている。

 たまに「ぬぽん」と言っている。

 

 そうこうしているうちに「ぷはっ」とやっと唇を離した。

 

 「私が君の生きる意味になってあげるよ。もっと知りたいんだ君の事。」

 

 突拍子もなくそんなことを言ってくる。

 

 「だから、、契りを交わしてもいいよ?

っだけどっ!君の事を理解できたときね!それまではだめだからっ!」

 

 たどたどしく、顔を火照らせながらそういってきた。


 「契り?」

 「だからっ、あの、その、.......初夜にやることだよっ!」

 「あぁ!い い いいんですか!?」  

 「どっちにしろ決断を下す時だからね。終わりだったら最後だ、だったら最後くらいは,,,,,,,いいよ?

  だから、それまでは生きてね。」

  

 そんなこといわれたらねえぇ?

 あ、そういえば重要なことを忘れていた。

 名前を聞いてなかった。

 

 「名前は何と言うんですか?」

 「名前か...名前は無いんだよね。君がつけてよ。」

 「いいんですか?僕で?」

 「君に付けてほしいんだよ」

 

 名前か...名前なんてここ何年かは呼んだことないな。

 うーん、彼女の瞳、ブルースカイ、美しい青空、ソラ、ミソラ。

 ミソラ、うんうん、なかなかいい名前じゃないか、しっくりくる。

 「ミソラはどうですか?」

 「ミソラ、、、ふふ、いい名前だね。」

 

 よかった気に入ってくれたらしい。

 ニヤニヤしながら、締まりのない顔で名前を連呼しては、ふひぃという吐息を漏らしている。

 なんか...おん、俺はいいと思う、否定をするのは良くない。

 ここは一つ温かい目で見守ってあげよう。

 

 「な、なんでそんな醜い顔なの?」

 「え?」

 「え?」

 「いやだって、醜いって誰の事?」

 「ん?」

 「ん?」

 「いや、貴方なん、、だけど?」

 「........」


 ぐすん。

 暖かい目で見守っていただけなのに.......

 そうか、気持ち悪かったのか...

 いや、全然いいんだ、自分でもそう思っていたし、、、

 優しさというのは心のうちに秘めているものなんだ。

 外見で判断できるものじゃねぇ

 だからええんやで

 そんなこともありますわ

 そうだな、後で散歩しに行こう。

 そして、手鏡を買ってこよう。

 うん、そうしよう

 

 「ま、まぁそれは置いといて、私の名前は決めてくれたけど、君の名前は?」

 

 名前、名前かぁ...

 嫌な記憶が蘇る。

 歪んだ幼少期、根底にある諦念感、引きこもった過去、

 あの記憶を呼ばれると思い出してしまう。

 ゴミみたいな記憶しかないな、、、

 あだ名、あだ名で呼んでもらおう。

 

 「ソラって呼んでください」

 「ソラ、ね?よろしくねソラ」


 変われるかどうかわからない。何も変わらないかもしれない。

 それでも、この特別な存在は何かを変えてくれるんじゃないかと

 

 そう、強く感じたんだ。

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