決着
「まだ、ロックベアがいるってから入っちゃダメなんだって!」
「大丈夫よ。ロックベアは、森の奥でしか出ないはずだもん。…大丈夫よね?」
「僕に聞かないでよ。やめようって。こんなやばそうな時に、きのことりなんて!」
「だめよ!あのきのこがないと困るって、街の薬師さんが言ってたもん!」
「それは、そうだけど…。もし、何かあったら…。」
「さっと行ってさっと帰りましょう。索敵よろしく!」
「…わかったよ。この近くには森ネズミくらいしかいないみたい。探すならここらへんで…。いや、だめだ。今すぐ戻ろう。」
「どうしたの?」
「森の奥から、デカいのが来てる。逃げるぞ!」
少年は、少女の手を引いて走る。
少年は、あきらめていた。
あの速度じゃ、街まで、行く間に追いつかれる。
それでも、走った。
後ろは振り返らなかった。
そして、街につくと外壁の門番に言った。
「でかいの!多分、ロックベア!森のかなり浅いところに!」
息も絶え絶えで伝えると、門番は、すぐに報告をあげた。
門番は、少し不思議そうな顔をしていたが、動きは早かった。
「ぼうず。こんな状況で、森に行くなっつったろ!まあいい。俺達で見てくるから。」
「はい。すみません。」
「ほんとに、いたの?」
少女が心配そうに少年に聞く。
「いたよ。…でも、なんで逃げ切れたんだろう?」
しばらくして、見に行った冒険者たちが青い顔をして帰って来る。
門番が不安そうに聞いた。
「ロックベアはいたか?」
「ああ、いたよ。だが、もうやられてた。」
「どういう?」
「あの森には、ロックベアよりやべえのがいるってことだ。」
時は遡り、ネズミになった彼が回復して、人間を見つけた時。
この時、すでに、以前怪我を負わされていたロックベアは、ネズミの彼を捕捉していた。
ロックベアは、森で派手に戦っている気配をたどればいつかは、ネズミの彼に当たるだろうと思い、気配を辿っていたのだ。
そして、確実に気配をつかんだのが先程、その時には、ネズミの彼もロックベアに気づいた。
俺は、無事、少年と少女の2人グミの冒険者を見つけた。
しばらく、話を聞いてみると、どうやら、薬の素材のきのこを取りにきたようだ。
俺は、なんか危険な感じな会話をしているなあと思いながら、仕方ないので、護衛でもしてあげるかと思い、気配察知を使う。
げっ。
森の奥から、ロックベアが走ってきてやがる。
俺は、ロックベアに挑発を放ってみる。
いや、元から俺がターゲットか。
ロックベアが目視で確認出来る距離まで、近づいてきた。
まっすぐ突進してきている。
俺は、地面を凍らせる。
ロックベアは、滑ってころんだ。
その倒れて無防備な脇腹に尖った氷を打ち込んだ。
ロックベアはのたうちまわる。
ロックベアの生命力が一気に半分切った。
そして、そのまま、どんどん生命力が減っている。
俺は、気を抜かず、気配察知しつつ、魔力の回復に専念する。
ロックベアは、俺の方に向けて、魔法で、土の弾を大量に飛ばしてきた。
見切りの才を使う。
全て避けた時には、すでにロックベアが真正面にいた。
獣の本能を使っているんだろう。
何としても俺をやろうという強い意思を感じる。
だが、俺は、見切りの才で全ての攻撃を避けた。
ロックベアの生命力は、3割も残っていない。
血が流れすぎている。
このまま、よければ勝ちだ。
しかし、それでいいのか?
ロックベアは腕を振るう。
俺は、避けて、腕に噛みつく。
食いちぎり。
小さい傷がつく。
暴れるロックベア。
暴れれば暴れるほど、血が流れ出る。
俺は、避けて、噛みつく。
食いちぎり。
ロックベアの攻撃は届かない。
そのうち、ロックベアは倒れて、動けなくなった。
生命力はもう殆どない。
俺は、ロックベアに突進をして、最後の生命力を削りきった。
気のせいでなければ、ロックベアは満足そうに…それでいて、悔しそうにしていたと思う。
俺は、ロックベアをおいて、少し回復することにした。
眠って起きるとロックベアの亡骸は持ち去られていた。
俺は、少し、センチメンタルな気持ちになりつつ、夜の森を抜ける。
森を抜けると防護壁に囲まれた街が見えた。
電気みたいな明かりもあるんだな。
あそこに行ってみよう。