見えないガラス越しに
今日は“黒い”しろかえでです(^^;)
ポストに届いていた“ブライダルチェックの結果通知”の封筒を広げてから、ずっと泣き通しだった。
心の奥に刺さっていた棘が、今では刃となって心を深く深く抉ってゆく……
こうなってしまっては!!
本当はすっと消え去ってしまうのが一番なのだろうけど……
もしかしたら、もう手遅れで……
遼くんにとんでもない事をしてしまったのかもしれない。
そう、私が誰かに!!
されてしまった様に……
もし、そうなら私は……死んでお詫びしても償いきれない!!!!
だから私は……
この結果を遼くんに知らせなければならない!!
このメッセにもし返事が無ければ……どこか遠くに車を走らせ、誰もいない時刻を見計らってクルマに目張りをし、排気ガスを引き込もう。
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ちょっと武骨過ぎただろうか?
「オレは15号だけど綾は8号くらいかな?」なんて聞いたりしたのは……
思い返してみると、綾はちょっと困った顔をしていた様な気がして来る……
ひょっとして綾はオレと結婚する気が無いのだろうか……
『初めてカノジョができた!!』という事象にオレは浮かれ、ドンドン先走りしているだけなのだろうか……
だとしても!!
オレにとって将来を共にできる人は綾以外には考えられない!!
そうなんだ!!
下手にカッコつけても!!
オレの想いなんて伝わらない!!
綾に謝って……土下座でも何でもして!!
もう一度、ちゃんとした言葉で結婚を申し込もう!!
まずは!!
メッセで謝って!!
どうにかして会う約束を取り付けよう!!
綾はまだ起きているかもしれないし……
そう心に決めてベッドから身を起こすと、サイドテーブルに置かれたスマホからメッセの着信音が聞こえた。
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『既読』が付いてから30分待ったけど……遼くんから返信は無い。
もうすっかり着替えも済んだ。
遺書は書かない代わりに、スマホの中にある遼くんとの思い出に一つ一つお別れして……今、着拒にした。
さあ!
クルマのキーを持って!!
最期の旅へ出掛けよう!!
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綾から届いたメッセに……
オレはしばらく“心”停止した。
どの位経ったのだろう……
“心”が
怒りや嘆きや嫉妬の熱で解凍された瞬間!!
オレはみっともなく喚き転げ回った。
『過去、オトコとやりまくってとんでもない病気をもらったオンナなど!!
慰謝料ふんだくって捨ててしまえ!!』
嫉妬に狂ったオレと“根っからの怖がり”のオレが心の中で激しく叫ぶ……
けれど!!やっぱり!!!
ダメなんだ!!!!
これを頭に浮かべるだけで狂いそうになるけれど……
せめてオレが綾の最後の男で居たい!!
例え刺し違えても!!
命の終わる迄、綾と居たい!!
綾と直に話したい!!
震える指でスマホをタップするけど……
何度掛けても繋がらない!!
着拒にされた??!!
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視界がぼんやり開けると灰色の天井だった。
割れるような酷い頭痛と吐き気に苛まれる。
どうやら私は
まだ生きているらしい
「ふはあ!!」
涙混じりの声が耳に飛び込んできて、私は手をしっかりと握られた。
「良かった!!本当に良かった!!」
その声に私の目から涙が零れる。
「ごめんなさい!遼くん! あなたにとんでもない事をしてしまった!!
でも、信じて!! 私も何も知らなかったの!!
本当に本当に!!
だから、あなたに出会う前に
私は死ぬべきだったのかもしれない!!」
「バカな事を言うな!!」
遼くんが初めて私を怒鳴った。
そして泣きながら私の顔に頬を寄せて
キスの雨を降らせた。
「オレ、決心したんだ!! この先どうなろうと、ずっとずっと綾と一緒だって!!」
こう言ってくれた遼くんと
私は二度と繋がる事はできない。
そう、これからの私達はすべて見えないガラス越し……
そのガラスの冷たさが
お互いの身の内に移って
いつかは壊れてしまうかもしれない私達……
けれども
それでも
命ある限りカレを愛し続けたいと
私は願った。
おしまい
幸か不幸か、私には縁の無い話なのですが……
もし、こんな立場に立たされてしまったらどうしよう??!!(/_;)
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