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トレントの巣でした


 二回目の蟻の殲滅が終わった。今度活躍したのはアリス。ロイドと同じようにハンマーを持っての旋回で粉砕した。あっちこっちに蟻が吹き飛ばされ、ドロップアイテムの回収が大変だった。

 まぁ、放っておいてもダンジョンに吸収されるだけだ。


「申し訳ないですわ」


 しゅんとするアリスを労う。


「あ。マスター! 木が見えるよ〜!」


 その横で我関せずとロイドが右の方を見て手を上げた。荒野にポツンと大きな木が立っているのは見えた。


「階段やろか。あそこ向かおか」


 ダンジョンは迷路系以外は基本まっすぐ進めば次の階段がある。ただ戦闘中に自分の立ち位置が分からなくなって、よく遭難する。歩いていればどっちかにはたどり着けるので、大した問題ではない。


「おっきぃ~!」


 バオバブっぽいツルンとした見た目の巨大な木だ。その幹に黒く大きな穴が空いていた。中が見えない。ということは、部屋だろう。二階層以外にも、入ると扉が閉まって宿として使える場所がある。ただし、もれなくモンスターハウスだが。


「午後三時。今日はここ攻めて終わりやな」


「え〜もう終わり〜?」

「暴れ足りないですわ~」


 ちらっと時間を確認してそう言うと、二体は不満そうにポフポフ足踏みした。

 休憩に入るとぬいぐるみはスリープモードにして、収納行きになる。俺は一人でダラダラしたいのだ。戻りたくなーいと言う二体に対し、ちっちっと指を振る。


「この中で思う存分暴れたらええがな」


「「そうだった〜!」」


 ぬいぐるみは基本深く考えない。というのは偏見か。


 穴に足を突っ込む。ぬるんと空間を抜けると、木の内部とは思えない広い部屋に出た。後ろで扉が音を立てて閉まった。天井が高く、木彫りの像の中にいる感じだ。木の香りまでする。


 そうこうしている間に、モンスターがポップし終わったようだ。ワサワサと枝を揺らす、大量のトレント。たまに葉っぱの色違いがいたり、赤い実を付けているトレントも見える。一番奥に、ひときわ大きなやつがいた。まるで林がそこに出現したようだ。木の中で木のモンスターと戦闘になるとは。


「ねーねー、もう行っていいの~?」


 ロイドの言葉に頷く。一歩踏み出すと、戦闘態勢に入ったらしく、鞭のように枝が伸ばされてきた。


「えいっ! やぁ! とぉ~!」


 シュバババっとロイドが鉤爪で枝を切り落としていく。再生はしないらしい。丸裸になったトレントが、突撃してきた。


「とりゃぁ~!」


 アリスがハンマーを振りかぶり、その幹にぶちかます。くの字になってトレントが吹っ飛び、後方のトレントに衝突していった。


「次々行くよぉ~」

「どんと来いですわ!」


 元気で何よりである。さて、俺もと思ったところで、それに気づいた。


「うぉっ、危なっ!」


 慌てて後ろに下がってそれを避ける。赤い実が床にめり込んでいた。顔を上げると、茶色い葉のトレントが隣りにいる実を茂らせているトレントから実をもぎ、こっちに投げてきているのが見えた。


「人のモン投げて寄越すとかどういう料簡やねん!」


 知ったことかと、茶色い葉のトレントはもいでは投げしてくる。もちろん、実を付けているトレントも自分の実をもいで投げてくる。爆発しないだけマシか。俺はあっちこっちに避けながら、弾丸で応戦し始めた。


「アップルパイ食いたい……」


 赤い実は見た目通りリンゴのようだ。弾丸で粉砕された赤い実が芳醇な香りを放っている。ドロップアイテムはもしかしてリンゴだろうか。


「お、弾切れか」


 投げる実がなくなった茶色い葉のトレントは、攻撃対象をロイドたちに切り替えたようだ。突進しに行った。実を付けていたやつはじっとしている。リンゴは再生するらしく、サクランボサイズのリンゴが出来始めていた。


「っと、今のうちに……」


 収納から、もう一体のぬいぐるみを取り出す。ロイドとアリスは別に苦戦はしていない。余計な手助けと言われるかもしれないが、人の目がない場所なら戦力の出し惜しみはしないことにしている。俺は早く休みたい。


 黄色い光沢のある革製の、鳥のぬいぐるみ。長い尾羽根が付いている。火の鳥をイメージして作ったものだが、実際の見た目は、あの押すとすごい声で鳴くパーティーグッズだ。


 頭に手を当て魔力を流す。


「『起きろ』」


 きゅぴーん。地面に寝ていたぬいぐるみが、すくっと立ち上がった。


「燃え盛る炎、それは、美!」


 羽を広げて上に、シュタッとポーズを取る鳥。名前はジョニー。何故か濃い眉毛のキリッとしたゴルゴ顔。スリープモード時はキュルンとしたビーズの目なのに、起きるとこれになる。ちなみに、ロイドとアリスは容姿に変わりはほとんど無い。何がこいつをそうさせたんだろうか。


「おはよーさん。ちゃちゃっと火で燃やしちゃって」


「かしこまり」


「「あああ~! なんでジョニー!?」」


 あ、ロイドとアリスが気づいた。戦闘中にもかかわらず、こっちを振り返っている。


「ワタクシたちで十分ですのに!」


「ふっ。主は我をお望みだ。さぁ! 燃え盛れ!」


 ボウっとジョニーが炎に包まれた。耐火性のあるダンジョン産の革で作られたジョニーは、炎をまとうことが出来る。濃い顔の火の鳥と化したジョニーが飛び上がった。


「まずは、貴様からだぁ!!」


 ズコンっと、いきなりボスらしき一番大きなトレントの葉っぱの部分に突っ込む。


 ぎょわぁぁぁっ!!


 葉っぱの頭が燃え上り、痛みかなにかあるのか、大きなトレントは体を揺らして声を上げた。ジョニーは涼しい……いや、暑苦しい顔をしてその枝に止まっている。


 バキッ 「あっ」 ぽてっ。


「アッハハハ! 落ちてるぅ~」


 モフ手の鉤爪で相変わらず伐採しつつ、ロイドが笑う。止まっていた枝が、炭化して折れたらしい。


「ふ、ふん! これも作戦のうち! さぁ燃え盛れ!」


 今度は根っこの部分を焦がし始める、ジョニー。床も木なので、メラメラ延焼し始めた。


「ちょっと! ワタクシたちまで黒焦げになっちゃうじゃないの!」


 ドゴーンっとアリスにふっ飛ばされたトレントがジョニーの真横に突き刺さる。羽に触れたのか、そいつも炎上し始めた。


 それについてはスマン。木だったら火だろと、安易に呼び起こした俺が悪い。よく考えれば、閉鎖空間で木を燃やすとか、ちょっと自殺行為じゃなかろうか。


「おっと、失敬。案ずるな。消火もお手の物よ!」


 ジョニーが息を吸い込む。息と一緒に炎も吸い込まれ、あっという間に床で燃えてる炎と、飛ばされてきたトレントの炎は鎮火してしまった。


「ジョニー、ジョニー。スマンけど、ハウス」


 俺の言葉に、体を捻って振り返り口をパカっと開けるジョニー。いや、そういう表情すると、ますますアレだよ。


「お、おぉぉ待ちください! せめて、せめてあいつだけはぁ!」


 翼で大きなトレントを指す。大半の葉っぱを燃やされたトレントは、残った枝を振り回して怒り心頭だ。


「えー。じゃあ、そいつだけ……うおっ! また来た!」


 リンゴ攻撃が再開されてしまった。飛んできたリンゴを避け、弾丸で粉砕する。うーん。これは戦闘後も残るものなのかな。


「せいやっ!」

「どっこいっ!」

「燃え盛る炎、それが、美!」


 ロイドが枝を刈り、アリスが粉砕し、ジョニーがポージング。大きなトレントの口みたいに空いたうろの中で、火の鳥ポーズを披露している。俺はリンゴ担当。適当な服を広げてリンゴの勢いを殺し、きれいなまま確保。流石ダンジョン産の布でできた服。地面に突き刺さる勢いのリンゴを受け止めている。


「よっしゃ。どんどん来いやぁ! って、もう打ち止めかい! 気張らんかいや!」


 さっきより全然数が少ないじゃないか。実がなくなったトレントは、アリスの吹き飛ばした別個体に押しつぶされてポッキリ逝ってしまった。


「俺のリンゴ……」


 ぎょわぁぁぁ!!


 大きな声が響き渡った。雑魚を狩り終わったロイドとアリスがボス格のやつに襲いかかっている。


「ふぅ~危ない危ない。我まで粉砕されるかと」


 パタパタとジョニーが羽ばたいて戻ってきた。炎は消えている。俺の足元に降り立つと、ヤレヤレと人間じみた仕草で首を振った。


 断末魔をあげ、大きなトレントがエフェクトを残して消えた。一斉に周囲のトレントたちも光となって消える。その後にポロポロとドロップアイテムが落ちていった。


「あ……」


 せっかく確保したリンゴが、音もなく手元から消えた。リンゴはトレントと同じと見なされているようだ。


「まぁええか。ほんなら、アイテム拾って終わろうか」


 戦闘が終わると、リンゴが空けた床の穴も、上に籠もっていた煙もなかった事になった。地面を抉ろうとも、岩を砕こうとも、元に戻るのがダンジョンだ。


「はい、マスタ〜」


 ロイドがドロップアイテムを抱えて走り寄ってきた。その後に、ハンマーを仕舞ったアリスも何かを担いで戻ってくる。


「うむ。ごくろう」


 何故かジョニーが出迎える。


「あなたに言ってませんわ。早くさっさと可及的速やかにとっととお戻りなさいな」


「……酷いではないか。泣くぞ?」


 しなを作るジョニー。


「勝手にお泣きになって。はい、マスター。これで全部ですわ」


 どうもこの二体と一体、相性悪いんだよなぁ。


 ザラザラとドロップアイテムが目の前に山になる。えーと、魔石が五個。大きい魔石が一個。パイナップルが三つ。お高い店のカウンターみたいな、大きくて長いスベスベした板材が二枚。


「パイナップル……?」


 何故トレントがパイナップル。と、考えてはいけない。ダンジョンとはそういうものなのだ。モンスターとはまったく関係ないものをドロップする。


「俺パイナップル苦手やねんよな。これは売りやな」


 とりあえず自分用に保管しておくべきものはないと判断し、全部収納へと押し込む。


「よし。したらスリープすんで。ありがとうな。また呼ぶで、ゆっくりしてや」


 遊び足りないという顔をしつつ、三体は横一列に並んだ。


「またね~マスター!」

「お待ちしておりますわ、マスター」

「いつでも呼ぶといい、主よ」


「じゃあ『おやすみ』」


 きゅぴぴーん。ふつっと糸が切れたように三体が横倒しになった。


「ふぃ~」


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