【短編】王子なオレが冤罪であそこ切られて断種、それでも欲しいって? 欲張りな弟だな、ウェルカム!!
拘束具で体を無理やり固定され、股の部分にハサミ!?
「やめろ!? そこは僕の大切な!? 嘘だろ!?」
僕はそこで、目を覚ました。嫌な夢を見たな。なんだったんだあの夢。ひとまず、あれは夢だから大丈夫だ。そう、僕の股間にはきっと立派なバベルの塔がまだあるに違いない。僕はそんなことを思いながら股を触った。
「ない、ない? ない!? 男の象徴が!?」
…嘘だろ!? 嘘だっと言ってくれ。人生がはじまっていらいのパニックかもしれない!? どうなってるんだ!!
「騒がしいな。おっ、目覚めたか」
声がした方に視線を向けると長身のガタイの良い整った顔立ちの男がいた。その男は微笑みを浮かべながら、僕がいる寝台まで歩いてきた。
「しかし、ない、ないって何がないんだ?」
「ゲイドバイ叔父上、そうです。ないんです。男の象徴が」
「男の象徴? おまえのはもともと小さくてなかったようなものだろ」
「うるせぇ!!」
わかってるよ。14歳で成人したばかりの僕はまだ声変わりもしてないし、毛すらはえてねぇわ。だから、そんなに大きくないことくらい。
「すまなかったな。死刑の代わりに断種として町に流される予定だったらしい。俺が助けた時には既にな」
そうだった。僕は元婚約者のマルデヒドイン公爵令嬢と弟のナルシスに嵌められて廃嫡になってしまったんだ。おなじ、双子なのに父上も、母上も弟ばかりを贔屓していたと思っていたけど。あんな弟の嘘を信じるなんてさ。本当にまさか、ここまで酷いとは…
「命を助けて頂いたことには感謝します。ただ、はやく、僕を街に捨てた方が良いですよ」
「なぜ、俺がおまえを捨てねばならい。おまえはそれでいいのか!? 弟たちに復讐したくないのか?」
「復讐したいさ。でも、平民となった僕には…」
「大丈夫。養女で引き取れるぞ? その場合、おまえはまた王族だ」
「引き取れる? って、養女!?」
「男として引き取れるわけないだろ。どうみても、カケルトそのままじゃないか」
「そうだけど」
「それに6年前に妻を亡くし、1年前に娘を失ったんだ。甥のおまえまで、亡くなるのは勘弁してほしい」
そう言って、落ち込む叔父を見ていると。すこし、悲しくなった。そういえば、この部屋は亡くなったアレイズ嬢のものだったな。当時は3歳だったか? 可愛らしいヌイグルミが小さな棚の上の一面にあり、主人を失っているからかどこか寂しそうだ。
「だが、俺には新しく可愛い娘ができたのだ」
いや、男だから! あなたの甥だから!! って、そんな屈託ない笑顔で言われたら、何もいえないわ。
「さぁ、着替えよう。たしか、この棚の中だったかな」
「その棚の中にどうみてもいやらしいガーターベルトがあるんだけど!?」
「オマセさんだったのかな…」
「あんたの娘って3歳で亡くなってなかったか!?」
「間違えて商人から購入した後にモノがモノだけに捨てるに捨てれず結局タンスの中にしまった可能性が高いな。きっと成長したら付けたかったに違いない」
「いや、違いないって!? 絶対に違うだろ! 3歳だぞ。 そんなわけあるか!?」
「彼女の無念を考えると。涙がとまらない。そうだ。そうだな。彼女の意思を継いで、是非ともこのガーターベルトをつけてくれ!!」
「って、なんで、そんなガーターベルトを僕がつけなきゃならないんだよ!」
「我が娘が付けると思ってさ。取り寄せたのさ!」
「結局、おまえが買ったのかよ! 幼女が着るか!! って、娘ってまさか俺のことか!? 絶対に付けないぞ!!」
「そう恥ずかしがるな。俺の前では恥ずかしいのか。しかたない、目を瞑っておいてやるから」
さもわかったみたいな顔でこっちを見るな。絶対に付けいないからな。
「そういう問題じゃないわ! もう、着替えるまで外で待ってろ!!」
僕は叔父を追い出し、公爵家のものに衣服を着せてもらった。癪だが、男のものは僕のサイズがないということで、女物であった。
「おお、地上に舞い降りた天使。まるで、亡くなった我が妻みたいだ」
「こちらが良いというまで勝手に部屋に入ってくるなよ」
顔が熱い。羞恥心か? 男が男に見られて、なんだこの気持ち。この不快感。
「なにを言っているんだ。この部屋は我が公爵家のもの。つまり、主人である俺が、この部屋で美しいものをどれだけ鑑賞しようが文句は誰もつけれないということだ!」
おいおい、鼻息荒くこちらに顔を寄せてくるな。
「まったく、何を言ってるか。わからんわ」
「まぁ、冗談は置いておくとして…」
真面目な顔でそう尋ねてくる叔父。いつもその真面目な顔ならカッコいいんだけどな。
「それで俺の娘になる気は起きたか?」
このまま、国外追放されても、無一文の僕にまともな生き方はできないだろう。運が悪ければ追い剥ぎにあって衣服どころか命も奪われるかもしれない。そうなった場合は本当に復讐どころじゃない。
「仕方ないな。養女になってやる!」
叔父の養女になる。それしか復讐に成功しそうな道はない。僕に選択肢なんてはじめから、ないようなものじゃないか。
「復讐するために血塗られた道を歩くと」
それは当然じゃないか。男としての象徴も奪われ、生き恥を晒しているのだ。許すものか。復讐してやる。
僕はそう決意し、叔父と今後の復讐の計画を相談するのであった。