魔法戦3 シュレソルーテの亜号魔法師
シュレソルーテという名の魔法世界には、昼と夜があるが、太陽が東の天から上がる事がない奇妙な世界だ。
太陽の代わりに魔遊星が光輝いて昼間を構成しているだけの空間らしい。
一人一人が誕生してから乳幼児に宿る魔力。つまり、鍛えたり訓練して得る能力はない。
能力上げは経験積むのみのスペックアップであり、病気や不具合が生じたりすればスペックダウンが常識的。まぁ、ありきたりのウンチク要素だ。
魔遊星のエネルギーを供給されてか、個々の魔力は維持する事ができる。
シュレソルーテに辿り着いた里依邏一行。中学生4名を共同活動者にする少数所帯だが、個人魔力入域審査で見事にエラーしたのは言うまでもなかった。
「入域とは言ってもわたしはここが生まれも育ちなのに連れが無魔力だと審査落ちって、どういう事、審査官のおじさぁ〜ん」
「いちいち色気で確かめるでない。入域条件が不正であんたも捕まればな、あんたは反社会行使容疑で蔵のある土中入りだぞ。それでも良いのか?」
「土中入りでも構わないから入・れ・て〜」
「そんな色香に惑わしてもなんも出ないからな」
「ケチでイケズなおじさんは嫌いよ。ほらほ〜ら、土中に入れる? 入れない? どっちよ〜」
「こら……猫なで声では屈しはしないからな」
「ほれ、ほ〜れ」
里依邏は自身の武器、グランドバスト攻撃で審査官をたぶらかせた。もちろん審査官は巨乳のアップを晒されてか、入域を許可せざるを得なかった。
「ありがとネ~、お・じ・さ・ん〜」
極めつけに投げキッス付きで審査官をノックダウンさせた里依邏。
「先生、そんなやり口でこのような世界を観光的に周回しても、なんだか罪悪感しか持てないよ〜」
「子供はそんな生意気言っちゃダメ。大人はセコく賢く貫くものよ。判った?」
ミチヤはその受け答えで、語彙力に残念がった。中二病的な技名を投げ出す世界かも知れないと不快に思っていたからだ。
マサトは里依邏に喉に引っ掻かったモノを取り除きたいと思って気になっていた事を聞き出した。
「里依邏先生、あのさ、20名のクラスメートを手にかけたあの野郎が帰ったという魔招礫っていう場所、いったい何なんですか?」
「一年間は半永眠モードになる巣窟の事ね。つまり、一年間経ってもわたしが魔法戦レベルがグレードアップしなければ地球は完全蹂躪という具合かと」
「それまで先生は魔力を上げてください。先生だけが頼りなんです」
「わたしの里帰りは、強者を連れてリベンジする事なのよ。そういう計画思いついたんでね。わたしじゃ及ばないでしょ。だから強い仲間集めするのよ」
「それで一年間で大丈夫なのかが益々不安なんですけど……」
「ウフフ……ケセラセラ〜、なんとかなるさ〜。細かいことナシ、ナッシング〜」
「あれで教師やってたなんてな。ま、元は魔法師であって教師を潜ってやってた事、確かに頷けるな」
「ミチヤ、いちいち先生を詮索すると疲れるぞ。ここまで来たんだから、観光に浸ろうぜ」
「あたし、魔法世界のファッションに憧れるかも。婦人服店とかあるんでしょ。ねぇねぇ、連れてってよ先生」
カヤサは興奮がやまなかった。そりゃ女の子だからか、身に着けるモノには目がないのが普通の反応だろう。
ミズホはとにかく小説やいろんな文献が読みたい読書家なので、魔法世界の書物に興味津々だった。
「みんな。良〜い? わたしたちは観光目的にここにいるんじゃないの? 仲間よ。強力な仲間を探さないといけないのよ。悠長な事言わないの?」
「だって、先生ェ。俺ら、腹減ってさ、何か食わせてくださいよ〜」
「まぁ、それは良いわ。でも、あなたたちの入域を許したのは他でもない。つまり、あなたたちもグレードアップしてもらうからよ。判った~!!」
全員共、沈黙していった。
「…………(シーーーーン)」
世界一険しくゴツい丘陵市街地。地名はべーセナメア。里依邏一行はそこを第一の補給及び休憩の中継点に路銀稼ぎの為、二つに分班して労働にいそしむことにした。
一方、地球ではユキオはしつこい警察の聴取で長時間も擁していた。
そりゃあ、異世界旅行してる他の友達や先生がいて行方不明ではないと事実を言うわけにはいかないから、悪戦苦闘していた。
「う〜ん。データをまとめてみたが、キミは本当に担任教師とお友達の行方は知らないと? これだけの情報資料で収まる件じょないよ。何せよ、キミのクラスメートたち20名が焼死体という結末なんだからね~」
「ボクはまだ未成年です。殺害のアリバイがどこにありますか?」
「そんなこたぁ判ってるさ。まだ、腑に落ちないだけだよ。まぁ、来年は受験生だしな。今日の所はご自宅に帰りなさい。又、改めて聞き取る事もあり得ます。その時はよろしくお願いします」
「そうですか。ボクはやっと帰れるのですね」
「調査のご協力ありがとうございました」
ユキオはやっと帰宅できたのでホッとした。