鈍感? part2
ふー、と私は膨らんだお腹を撫でた。
まるで妊婦の様に膨らんでいるお腹を叩けばきっと良い音が鳴ること間違いなかった。
横を見ると妹たちも大抵似たような状況なのだから、明日は体重計を見てみんなが悲鳴をあげることも間違いないだろう。
「響也ー、洗い物までありがとうねー」
「おう、任せときな!」
台所で皿を洗ってくれている響也に向かって私は声をかける。
ワイシャツで袖捲りをした響也は笑顔で答えてくれる。
我が家には食器洗い機なんて物は無いので大人数の皿洗いはちょっとした大仕事だ。
だらしなくハンバーグの美味しさに惚けてる私たちを見て苦笑しつつも率先して流しに立つ響也には本当に感謝だ。
ありゃ良い旦那さんになるんだろーなー。
「……愛菜姉さん」
遠い目をして流しを見てた私を見て、七女の依亜がボソリと呟く。
「思考が駄々漏れ」
「依亜、ほっといてあげな」
二女・七海が肩を叩くも依亜はジト目を姉に向かって放つことを変えない。
小学生にだってこれくらいは解る。
これが鈍感ってやつなんだ、と。
依亜たち妹の中の辞典には『鈍感』という箇所に『=姉(愛菜)』と既に書かれている。
「じゃあ俺そろそろ帰るわ」
「あ、じゃあ送るね」
響也の声に私はよいしょと立ち上がる。
途端に「おばさんだなー」とすかさず響也がからかいが入り、私の拳が飛ぶ。
ここまでもいつものお決まりだった。
「今日のハンバーグも絶品だったわー。ありがとうね、響也」
「おうよ」
玄関で靴を履きながら二人は会話していた。
「愛菜」
「ん?」
外に出て、鞄を手渡した愛菜に響也がふと自分の名前を呼んだ。
「えっと」
珍しく言い淀んでいる響也に私は首を傾げた。
一体何が言いたいのだろう?
視線をあちこち彷徨わせていたが、何か覚悟を決めたのか静かに私の肩に手を置く響也。
「どうしたの? あ、解った!」
私の声に、ドキッとしたように響也の体が揺れる。
「最近肩凝ってるの知ってたんだー。揉んでくれるんでしょ?」
ガックシ! 何故だか響也が大きく項垂れた。玄関の方からも何かが沢山倒れる音がしたが気のせいだろう。
「はー……」
「どしたの?」
首を捻る私に響也が大きくため息を吐きながら顔を覆う。
「もー、いいわ」
「うん? うん分かった」
きょとんとした顔のまま私は言った。
「じゃあまたな」
「うん」
ばいばい、と私は手を振る。
響也も曲がり角に行くまで手を振ってくれた。
姿が見えなくなるまで私も響也を見送った。
そして玄関に戻ると、
「あれ? みんなどうしたの」
妹たちが揃って玄関の上り口でコケていた。
「バナナの皮でも落ちてた?」
そう聞いたらまた揃ってため息を吐かれた。
そして妹たちは三々五々散っていった。
なんなの?
私はさらに首を傾げたのだった。
お読みくださり、本当にありがとうございます。