鈍感?
「本当にいいの?」
「ああ、どーんと任せときゃいい」
「じゃあ今夜は響也が主食ね」
「で、愛菜が汁物担当で」
愛菜たちの家の近くのバス停、そのさらに近くのスーパーの出口付近にて。
そんな会話がある男女で繰り広げられていた。
まるで端から見たら仕事帰りの夫婦、なんて思ったのは偶々そのスーパーでバイトをしてた一倉家・六女の綺麗。
(あれで付き合ってないとか、無いわー)
出口とは反対の入り口付近のじゃがいも山の値札を直しながら、綺麗はため息を吐く。
愛菜姉さんはおっとりしてるから、本当に鈍感っていうかそれ通り越してる気がする。
さっきも同じバイト仲間に、
「あれ綺麗のお姉ちゃんだよね。隣の人旦那さん?」
なんて聞かれたのだから。
二人仲良く色々言い合いながらの買い物を見させられてる妹の気持ちにもなってほしい。
しかも。
「あ、綺麗バイトなの? 今夜は響也がハンバーグ作ってくれるって。帰ってきたら食べてねー」
だって。
しかも笑顔で言ってくるし。
こっちは真面目にバイトしてるのに、顔から火が出そうだったわ。
いや響也さんのハンバーグ美味しいのは美味しいんだけど、何か「おいっ!」って思うのは私だけなのか……?
この問答を綺麗が此処でバイトを続ける限りすることになるのは言うまでもない。
お読みくださり、本当にありがとうございます。