運命の人
津長 莉子27歳の場合。
彼氏いない歴イコール年齢。
喪女、
喪女、
喪女、
誰かから告白されたような経験もない。
好きな人は遠くからじっと見つめて、
それで満足。
まぁ、じっと見つめていても、
いい事なんてないんだけれど。
気持ち悪がられて終わり。
いや、挙句の果てに罵られるか…
本当に気持ち悪がられるかのどちらか。
人権すらねぇのかよ。
恋すらしちゃいけないのかよ。
もう、そんな感情、とうの昔に捨てたけど。
期待はしていない。
こんな人生。
ってか、そもそも私の人生ってなんなんだろうか…
親元を離れ就職。
とは、言ってもフリーター。
恋人、友人、ナシ。
頼れるような人も周りにはいない。
性格も卑屈だ。まあ、そうなるわな。
見た目も悪いし、中身も悪い、
いいとこ無しだ。
生きている意味、あるのかな…
つまらない毎日、つまらない日常。
それなのに、周りは楽しそうで、
憎い、憎い、羨ましい、
寂しい、つらい、
寂しい。
あーあ、私にも幸せ、訪れないかな。
そう思いながら、何気なく動画サイトを開いた。
そこで、出逢ったのだ。
"運命"の人と。
「えーと、初見さんいらっしゃい。りこ…さん…で合ってるかな?初めての子だよね?」
優しい声音、
長らく呼ばれていなかった、下の名前…
その瞬間、トクン…と心臓が脈打った。
名前を呼ばれただけなのに、
いいや、違う。
それだけでも私にとっては充分だ。
ぽっかりと空いた心にすっと、彼が入り込んできた。
柔らかく、あたたかく、
こんな私でも…
誰かに…
必要と、されたい。
急いで、キーボードで文字を打つ。
【はい、りこであってます!】
………、ドキ…ドキ…
心臓がうるさい、
れお「りこさん、!良かった。合ってた!」
認められたい。必要とされたい。
その願望が少しでも叶ったような気がした。
大袈裟かもしれないけれど。