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重症純愛オタク  作者: 帝都
3/4

特別

(おき) 虹花(にじか)18歳 の場合。



「はーい、撮りますよー!」

スタッフの掛け声に合わせてパシャっとシャッター音が鳴り響いた。


私はその瞬間、両手をグーの形にして顎下へ

そう、俗に言うぶりっ子ポーズ。


普段ならこんなポーズいやでもしないが、

今日は特別。


どんな時でも可愛くいたい。

可愛く写りたい。


何よりも好きな人がこんな近くにいるのだ。


せめて好きな人の前だけでは可愛くありたい。




そう、ここは地下。

地下の現場。



地下アイドル、そう言えば多くの人は女性アイドルグループを思い浮かべるだろう。


しかし、最近では男性の地下アイドルも

増えてきており、メンズ地下アイドル、略してメン地下などと呼ばれている。


私はその、【メン地下】のオタクだ。




私の好きなグループは今年デビューしたての、


乂 de King(すぐ で きんぐ)という5人組。




その中で、一際輝く存在…



それが、ルキ。






私の大好きなルキ。





ルキ「虹花、今日も来てくれてありがとう」


ルキがそっと私の両手を握りしめた。



きゅん、




触れられた指先がじんっ、とする。

熱い、


じっと、見つめられると、胸が高鳴る、




その顔、ずるい…





虹花「…今日は、10枚しか撮れなくてごめん、」


私は謝った。


今月お金がピンチなのだ。

現場の数も多い、

全通するにはここで何枚もチェキを撮るわけには、

いかない。




ルキ「謝らないで?次はなんのポーズにする?」



虹花「あっ、えっと………」





どうしよう、もうポーズが思いつかない!



ねこのポーズ、うさぎのポーズ、背中合わせ、ピース…などなどありきたりなポーズは全てすませてしまった。





地下アイドルには、チェキというものが存在する。

テレビに出ているアイドルなどにはない、

地下特有の魅力。



ライブ終わりに、好きなメンバーと写真を撮ることが出来るのだ。

もちろん有料なのだが…



なかなかポーズが決まらないでいると、

ルキは、虹花を後ろから抱きしめた。



虹花「!?」




うそ!?、


ま、待って…、

ぎゅって、抱きしめられてる!?





ぱくぱくと、口を金魚のようにしていると、

パシャっと、撮られた。




ルキ「ねえ、すごい間抜けな顔してない?笑」


やだ、ほんとだ…!


ルキから渡されたチェキに映っている私は

これでもかというほどのアホ面だった。


虹花「だ、だって…ハグなんて……」



ルキ「虹花、いつも来てくれるじゃん。特別」



皆には内緒ね、と口元に人差し指をあてて微笑む彼に虹花は、内心嬉しくて嬉しくて誰かに自慢したくて仕方がなかった。






私は、ルキの特別なんだ…!



チェキ券あと、2枚だけ、買い足そう…!




私は物販の列へ急いだ。

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