side6 間抜けと戯言
誤字報告ありがとうございます。
お待たせしました。遅くなりました。
あと大したことではないですが、69〜70部の一部を加筆しました。
支障はないので、もし気になった方は確かめてみてください。
ザラド王との謁見後、禁書庫への立ち入り許可が承諾された。クロンズはすぐに禁書庫へと入り、厳重に管理されている聖槍についての内容が記述されている本を宮廷司書から手渡されると、読書スペースに行き読み始めた。
この世界には聖武具と呼ばれる四つの武器が存在する。
聖武具はこの世界を作った神がもたらしたとされ、神器と呼ばれることもあるそうだ。
四つの聖武具はそれぞれ意思を持ち、固有の能力を宿しているという。
この内容は各国にある本の共通内容で基本的なものとなっている。
ただし、聖武具の武器系統、能力に関しては一冊に一系統しか記されていないらしい。
今クロンズが読んでいる聖武具の本には、アポリア王国が管理している聖武具、聖槍についての内容しか記述されていない。
あわよくば、聖剣の能力を調べてやろうと考えていたがクロンズのそんな考えはすぐに打ち砕かれ、早々に諦めさせられた。
「何の冗談だ」
聖槍について読み進めていく途中で、クロンズはとある内容に腹を立てた。
聖武具は勇者が手渡せば誰でも扱えるということ、ただし使えるのはあくまで武器としてであり、聖武具に宿る能力を行使出来るのは聖武具に選ばれた所有者の勇者のみである。
ここまでは良かった。貸し与えるつもりなどクロンズには毛頭無かったが、意思が宿っているとはいえ所詮は武器だと高を括った。それよりもクロンズは能力を使えるのが聖武具に選ばれた勇者のみという一文に優越感を浸らせた。が、それも束の間そこから読み進めた先の一文が気に入らなかった。
尚、勇者が聖武具の能力を行使するためにはその聖武具に宿る意思との繋がりを持つ必要がある。
繋がりとは契約のようなものであり、繋がりを持つことで漸く勇者はその聖武具の真の所有者として認められる。
クロンズは今まで記述されたような聖槍と繋がりといわれる契約をしたことなど一切無かった。
つまりそれは聖槍に所有者として認められてすらいなかったということ。
クロンズにはそれがたまらなく不愉快だった。〝所有者〟ではなく、〝所持者〟であるということは、貸し与えた際に扱う者と同列であるということであり、所有者として認められ聖剣の能力を使えるソリトより自分が劣っていると書かれているようだったからだ。
「ふざけるな!僕は王になるべき存在だ!その僕を武器風情が所有者と認めないだと?調子に乗るのも大概にしろ!」
と、クロンズは席から立ち上がり荒々しく足音を立てながら宮廷司書に本を突き返すように渡して勇者パーティとして用意された部屋へと向かった。
部屋に辿り着きバタンッと勢い良く扉を開けた瞬間、部屋にいたファル、フィーリス、アリアーシャの三人は驚きで目を見開いた顔で扉を開けたクロンズを見ていた。
そんな三人に目もくれず暖炉隣の壁に立て掛けていた聖槍を「クソが!」と悪態を吐きながら蹴り飛ばした。
そんな様子に見兼ねたフィーリスがクロンズに尋ねる。
「ど、どうしたのよクロンズ聖槍を蹴るなんてらしくないわよ」
「うるさい!」
頭に血が昇っていたクロンズは心配して手を差し伸べたフィーリスを軽く払い飛ばしてしまった。
苛立ちの矛先を変えてしまった失態に気付きどう言い訳するべきか考え始めた時既にファルとアリアーシャがフィーリスの元へ駆け寄っていた。
「フィーリスだいじょぶ!?ちょっとクロンズ、酷いよぉ」
「良いわよアリア。きっと何かあったのよ」
「でもぉだからって八つ当たりはないよぉ」
「私もその通りだと思うよ」
アリアーシャもファルもフィーリスの肩を持ちクロンズに直接話し掛けてはないものの、クロンズは責め立てられたような感覚になった。
一つ間違えれば自分の好感度が下がり今後の行動に支障が出ると、言葉を慎重に選びながらフィーリスに声を掛ける。
「すまないフィーリス、二人の言う通り八つ当りとはいえやり過ぎてしまった。怪我は…ない、かな?」
「ええ大丈夫よ」
「謝罪も気遣いも当然だよねぇ」
アリアーシャにしたわけでもないのに自分がされたような言い方にクロンズは少し苛立ちを覚えながらぐっと堪え「……すまない」と謝罪する。
「私は気にしてないから。その代わり夜はよろしく、ね」
「フィーリスが望むなら満足するまで付き合うよ」
「やった!」
「えぇずるいなぁ」
「別に蔑ろにはしないよ」
「ならいいかなぁ」
なんとか上手くいったことにクロンズは安堵した。
その後、フィーリスが何があったのか尋ねてきたのでクロンズは禁書庫で読んだ内容の事を話した。
フィーリスは何か考え込むように眉間に皺を作って唸り暫くすると「思い出したわ!」と言ってファルに尋ねた。
「ファル。あなたアイツから聖武具の力の事教えてもらってたのよね。クロンズが言ってた繋がりを持つ方法知らないの?」
フィーリスの質問にファルは首を横に振る。
「私が聞いたのは能力だけだよ。本の内容が一部同じなら、聖武具の力を引き出す方法を教えたって意味ないと思ったんだと思うよ」
「そうね」
「あたし達は役に立てそうにないねぇ」
「いや、考えてくれただけでありがたいよ。ありがとう」
感謝を述べているが、そもそもクロンズは聖武具の件に関しては期待などしていなかった。フィーリスの質問で少しだけ期待を抱いたが、結局その期待も糠喜びで終わった。
それからクロンズは聖槍の力を引き出す為に行動した。
聖武具と繋がりを持つ為には、先ずその聖武具と心を通わせる必要がある。これが第一段階である。とのことで、クロンズは聖槍で素振り、歩くときや寝るときも肌身離さずに持ち歩いたり、時に話し掛けたりしたが成果は出ない。
時々、クロンズはソリトがどうやって繋がりを持ったのかふと考えてしまう事があり、その度に敗北感を味わったような気分になってはすぐに切り捨てるように思考を止めた。
クロンズのストレスは増える一方だった。そして、第一段階すら達成できていないという事が最大の理由となっていた。
クロンズはストレス発散のために毎夜道具のようにフィーリスとアリアーシャと交わりあった。
何故ソリトに出来て自分はできないのか。
勇者であるはずなのに自分を何故認めないのか。
自分の何が不満だというのか。
聖武具は勇者に力を貸すべきだ、どうして力を貸さない。
自分では聖槍の力を引き出せないのかという弱音などの感情を「あ…きょうも、激し」、「こ、これ……クセになるかもぉ」等と言いながら恍惚な表情で行為を楽しむフィーリスとアリアーシャとは裏腹にクロンズは感情を殴り付けるように腰を振り続けた。
亜人種は同種ならば子を宿す確率は人種と同じだが異なる種の場合は子を成しにくい。そして、クロンズは元から愛情など抱いていない。ゆえに、そこに躊躇いなど全くなかった。
ただ、ファルは乙女の日ということで行為に及ぶことはなかった。
無理矢理でもストレス発散に付き合わせようと思ったが、それでは三人の好感が嫌悪に変化する恐れがあると思い、この数日間クロンズはファルに手を出すことはなかった。
だが、女と交わったからといって聖槍と繋がりを持てるわけではなかった。
その代わりか、聖槍との繋がりを持てたかの経過を「何か変化あった?」とクロンズに毎回尋ねた。
ただ、乙女の日だからか少々塩対応だった。
それから少しの片鱗すら無いまま数日が経った翌朝。
クロンズ達はザラド王から玉座の間へと召喚に応じるように通達があり、彼等は玉座の間へ足を運んだ。
中へ入ると、強面の顔を険しくしたザラド王が待っていた。
「面を上げるがよい【嵐の勇者】のパーティ」
威圧のこもった一つの言葉に応じてクロンズ達は顔を上げる。
「今日呼び出したのは教会からお前達に関する報告を受けたからだ」
「報告、ですか」
それを聞いて【癒しの聖女】ルティアがソリトから聞いた事を報告したのかとクロンズの体が強張った。それは他の三人も同様だ。
しかし、クロンズはソリトの強姦の件を言った所で証拠も無い事をすぐ思い出して、別のことだと思った。
ここに来るまでに少しばかり減った信用を回復させる為に歩き回った。
きっと、回った場所の人間達から感謝の声とそれによる教会から褒美が貰えるのだろうという考えにクロンズは至った。
「報告内容はお前達が立ち寄った村に関するものだ」
これで確定したとクロンズは小さく口角を上げた。
「宰相、読み上げろ」
「で、【嵐の勇者】クロンズ様のパーティはアポリア王国へ入国する前にクレセント王国にある食糧難に悩まされていた村へ立ち寄ったと報告が上がっております。その問題を解決するための一つの箱を持ち込んだとのことですが、その結果村が滅びたと教会から報告が上がりました」
「そんな馬鹿な!!」
「内容によると箱の中に入っていたのは封印石。封印されていたのは魔王四将の一人だったとの事です。問題は先日討伐されたとの事。それと本日届いた調査でその箱についても裏が取れたようです。何でも先代の勇者達が封印石に封印した後、その村の近くにあった山の奥に結界を張り祠を隠していたとのこと」
「結界!?そんなものはなかった!」
「これに関してはクレセント王国が勇者の代わりに管理していたらしく、それを怠った為に結界が消えたという事です」
「それならあちら側の責任ではないですか!?」
クロンズは自分に責任は無いと反論する。だが、それを聞いてザラド王が怒号の声を上げる。
「間抜け!!確かに管理を怠ったクレセント王国にも非はある。だからと言って、それを持っていった結果村が滅んだことに変わりはない。責任が無いなど恥を知れ」
「……くっ」
クロンズは情報を教えたファルを睨むように視線を向けた。
その瞬間、ファルが口を開いた。
「へ、陛下発言の許可をお許し戴けますか?」
「ファルと申したな。発言を許そう」
「ありがとうございます。実はクロンズが箱を持ち出してしまったのは私が商人から聞いた情報を話した結果なんです」
ファルの発言を聞いて、「全部お前の責任だ!」とクロンズは内心で叫んだ。
「申し訳ありません。この責任は全て私にあるんです。罰は全て私が受けます」
「それはならん。先も言ったが如何に発端がお主とはいえパーティ全員が了承したのならば責任は全員にある。ゆえにクレセント王国から咎めは無しだ。だが、此方は別だ。ファル、お主の自ら非を認めての謝罪に免じ、資金援助の無期限停止と村の消滅に対しての賠償金、金貨二十枚をクレセント王国へ支払うこと。この二つを【嵐の勇者】パーティの罰とする」
「なっ!」
これまでクロンズ達の旅の中で防具や武器の修繕費、宿代、回復薬などの調達はこの資金援助によって支えられてきた部分が大きい。それに加えて、金貨二十枚の賠償金となれば軽くされた罰ではあるが、クロンズ達にとっては重いものだった。
それは流石に何時か復活する魔王を倒す。もしくはまだ復活の兆しを見せている段階で止める上で大きな影響となると思いクロンズは口を開く。
「陛下、それでは…」
「誰が発言を許可した」
「ぐ……申し訳ありません。発言の許可を戴けますか」
「許可する」
「陛下、それでは私達の旅に支障が出ます」
「だから罰を軽くしろと口にするか?直接ではないとはいえ、多くの命をお前達は奪ったのだ。罰を軽くしただけでも有り難いと思え!お前が勇者でなければ即座に極刑しているところだぞ?」
「それが実の息子に言う言葉ですか!」
その発言に女三人は驚いていたが、クロンズはザラド王の極刑という言葉が頭を巡り気に止めなかった。
「今のお前は勇者であるということを忘れるな。だが、息子に対しての言葉であろうとお前がしたことはそれだけ重い。受け入れるのだ」
「……分かりました。ちなみにその魔王四将を討ったという者は」
「【調和の勇者】ソリトが単騎で討伐。そう聞いている」
「馬鹿な!」
「嘘」
「あいつがぁ?」
【調和の勇者】の能力を知っているクロンズ達は信じられず否定の言葉を溢した。ファルはその言葉自体が出ない程驚愕したのか口に手を当てて目を開いたまま固まっている。
あり得ない結果に混乱している頭でクロンズはふと一つの考えが思い浮かんだ。
「陛下、これは【調和の勇者】ソリトの罠です」
「ほう」
ザラド王のクロンズを見る目が冷たくなった。
「か、彼はここにいる三人に強姦を働いた犯罪者です。それに彼の能力で単騎討伐など不可能です。おそらく国に告発した事を恨んで…」
「もうよい、下がれ」
「陛下、アイツは」
「下がれ、と言っている。これ以上戯言を吐くのは許さぬ」
ザラド王の威圧に圧倒されたクロンズはファル達と共に大人しく玉座の間から出て行き自分達の部屋へ戻った。
「おいファル。君のせいでこうなったんだ!賠償金は君が全部支払うんだ」
「待ってよ。私があそこで自分の責任だって言わなきゃもっと罰は重かったんだよ」
「自分で認めたんなら最後まで責任を持ってくれないか?」
「私の話を聞いて決めたのはクロンズだよ。そして、フィーリス達も了承した。なら、これはパーティ全員の責任だよ!陛下も言ってたのに馬鹿じゃないの?」
「なっ!僕が馬鹿だと…ふざけるな!」
「クロンズ落ち着きなさい」
「ファルもだよぉ」
クロンズとファルの口喧嘩にフィーリスとアリアーシャの二人は間に入って止めに入る。
「クロンズ、今回の件は私達パーティの責任よ」
「フィーリス、君はファルの肩を持つのかい?」
「ファルの味方とかそういう事ではないわ。逆らったら余計に罰が増えるからよ」
「アリアーシャはどう思う」
納得がいかないとクロンズはアリアーシャにも意見を求めた。
アリアーシャは顎に人差し指を添えながら応える。
「あたしもぉフィーリスに賛成かなぁ〜」
「そうか……分かったよ」
これ以上は三人を敵に回すかもしれない懸念を抱いてクロンズは引き下がりベッドに寝転がった。
「スペアが。調子に乗るな」
「ファル、今なにか言った?」
「ううん。ありがとうフィーリス」
「貸しよ」
「あはは、分かった」
「あたしもねぇ」
「アリアーシャはこれといって何もしてないでしょ」
「フィーリスひっどぉい」
女性陣三人が冗談混じりに会話をしていると、誰かが部屋の扉をノックした。
寝転んでいた体を起こして「どうぞ」とクロンズが言うと、部屋に宰相が入ってきた。
クロンズは宰相に尋ねた。
「どうしたのですか?」
「先程、お伝えし忘れていた事がこざいましたので、伺わせていただきました」
「それで忘れていたこととは?」
「中央都市アルスはご存じですね」
「ええそれが?」
「あの都市周辺で魔物の群れ、つまりスタンピードの発生兆候があったそうです。近日に大規模な群れが来るとの予想で勇者に要請が入りました。陛下からの王命でもありますので宜しくお願い致します」
「……畏まりました」
「失礼致します」
頭を下げ、宰相は足早で部屋から出た。
「アルスかぁ〜一度行ってみたかったんだよねぇ」
「あなたね。王命よ旅行じゃないからね」
「近日って言ってたから今から行った方が良くない?」
「ファルに賛成よ。クロンズどうする?」
「僕に意見を求めても困るよ」
「あなたがリーダーよ。あなたが決めて」
フィーリスの小さな叱咤に溜息を吐きながらクロンズはファルの意見に賛同した。
「あ、ねぇねぇ。教会から報告が来たってことはさ。あの聖女様も一緒なのかなぁ?」
「そう考えで良いしょうね。あの聖女様、かなりご執心ぽかったし」
あの聖女という言葉が【癒しの聖女】ルティアを指しているのは一目瞭然で、フィーリスとアリアーシャの会話でルティアが出た瞬間、クロンズはルティアに叩かれた事を腹立たしい気持ちで思い出し爪がくい込むほどの力で手を握った。
「教会は厄介よね」
「アイツに何の罪もないってバレたら本当に私達極刑になるんじゃあぁ」
「ならあの聖女とソリトの関係を絶てば良いじゃない」
と、ファルが提案したが、それこそ失敗した時に教会を敵に回して極刑になりかねない。また、それが出来たら苦労しないだろ、とクロンズは内心で悪態吐いて尋ねる。
「そうするとして方法はあるかな?」
「見つけたら隙を狙って催眠でも奴隷商に奴隷にでもしてもらったら良いじゃない」
「奴隷か……良いね」
それならば逆らうことが出来ず受けた屈辱を返せるし、そのまま犯してやる事も出来ると思いクロンズの気持ちが昂った。
それからクロンズ達は中央都市へ向かう準備をして向かった。




