月光下の涙
レベルが59から62に急上昇していた。
ステータスもいつものことながら急上昇していた。
スキルを獲得していた。ルミノスが自爆したにもかかわらずだ。それはソリトがルミノスを倒したということ。
自爆はその前に仕掛けていたのだろう。方法は血核撃魔法というルミノスの持っていた魔法の一つ。
当然だが、ソリトには全く倒したこと、勝利した実感がない。
右目を貫かれた後、何があったのか分からないからだ。
その右目は何事も無かったように存在している。
ドーラの姿の件に関しても、ソリトは頭の中は分からない事で山積み状態だ。
ただ、自爆方法だけはスキルを獲得した事で分かった。
後でルティアに聞くつもりだが、竜車に戻ってから安静にさせて寝かせている間の時間が暇になり、状況に混乱していたものの徐々に落ち着いてきた事でソリトは自然と考えていた。
とはいえ、目を覚ましても話を聞けるのはもう少し後とソリトは予想している。
ちなみに獲得したスキルを見てみるとこんな感じだ。
【鬼殺し】
鬼種の魔族、魔物を対象に特攻を付与。(一段階アップ状態)
鬼種討伐での獲得経験値が倍になる。(一段階アップ状態)
鬼種を倒す度に鬼種へのヘイトを付与。一体毎に一分。(一段階アップ状態)
スキル効果により特攻の威力上昇、獲得経験値を二倍に変化。ヘイトの付与時間が一体毎に二分に上昇。
【吸血鬼】
吸血後、体力、魔力、傷の【自己回復】付与、全能力上昇。効果時間十分。十分後、三十分間全能力半減。効果時間内に吸血することで持続時間が増加。最大五分(一段階アップ状態)
確率で吸血した対象を任意で眷属化可能。(一段階アップ状態)
眷属化を対象にのみ召喚可能。
【影移動】発動可能
【血魔法師】(吸血鬼のみ保有可能)(一段階アップ状態)
スキル効果により、効果時間が十分から二十分に上昇。持続時間が五分から六分に上昇。確率による眷属化から確定に変化。
【狂戦士】
全能力を二倍にする。(一段階アップ状態)
狂化付与。(一段階アップ状態)
効果時間三十分。(一段階アップ状態)
発動後、一日使用不可。(一段階アップ状態)
スキル効果により全能力を三倍に上昇、狂化を三段階で理性軽減可能に変化。狂化を一段階軽くする毎に上昇値が半減。効果時間を一時間に上昇。一日使用不可から二日間使用不可に変化。
【影移動】
影に入り込み移動できる。
影の中にいる間、干渉不可。
【血魔法師】は他の魔法スキルと似たような効果だ。
ただ違うのはこのスキルが吸血鬼の固有スキルらしく、行使できる魔法を最初から把握出来た事だ。
ソリトがルミノスの自爆方法を知れたのはこれが理由であった。
さて、全体的に見てどれも強力スキルだがその分デメリットもあり使い勝手の難しいスキルばかりだ。
【鬼殺し】は使う対象が限られ、使い勝手が難しい上に悪い。
【狂戦士】は一段階効果が上昇していなければ使おうと検討すらしなかっただろう。それでも三段階の内一段階目でも理性はあるが好戦的になる筈。結局このスキルも使い勝手が難しい上に悪い。
今この三つでまだ使えるのは【吸血鬼】だろう。【血魔法師】と【影移動】を重点に使えば今のところは問題ないという事に限っての話になるが。
とはいえ、万が一の時は【狂戦士】での戦闘や吸血をしなければならないだろう。
「ん……ぁ、ソリトさん」
身体を起こそうとするルティアを止めてソリトは補助しながら竜車の壁に背中を預けさせる。
「どうだ」
「…状態は変わらず、気分は楽といった感じです」
「そうか」
と言った後、ソリトはルティアの頭にポンと手を置いた。
「あのソ…」
「すまなかった」
「へ?…ああ、この怪我ですか?大丈夫です。私、聖女ですよ。しかも幸運なことに癒しです。直ぐにでも治せます!」
「いや、それもあるが村の連中のことだ」
「…………村の人達の事は仕方なかったんだと思います。聖女でも命の蘇生なんてできませんから。それに人が亡くなる所は何度か見てきましたから大丈夫です……」
そう言ったルティアの笑顔はどこか辛く、下唇を小さく噛んでいる様は悔しそうだ。
どこから見ても痩せ我慢にしか見えない。
予想はしていた筈だった。ルティアなら何かあれば必ず村人達の方へ向かう事など目に見えていた。ゆえにソリトはドーラを教会に行くことを禁止させて残したが、ルティアの諦めの悪い面を考えれば、同行してもらった方が良かったのかもしれない。
と、ルティアが寝ている間にこうも考えていたが、眷族召喚を見た後だと結局結果は何処かで同じになったのだろう。
それでもソリトは感情を押し殺しているルティアを見ているとらしくないと思い額に向けて指を弾いた。
「……うぅ、いきなり何するですか!」
「それでいい」
「はい?」
「感情ってのは我慢とか押し殺したりすると少しずつ死んでいく。そしていつか自分の感情が分からなくなる。だから」
そう前置きしてソリトは自分の胸の方にルティアの顔を引き寄せる。
「泣けるなら泣くべきだ。言いたいことを言うべきだ。その方がお前らしいしな」
「何ですかそれ……え?あれ?何で……」
熱い涙が服に染み込んでくるのが伝ってきた。同じようにルティアも自分が泣いていることに気付いた。
きっと心の中では泣き続けていたのだろう。それが表に出て困惑している。
しかし、今はソリトがルティアの顔を自分の胸に埋めさせているため何も出来ない。
「お前は頑張った。だからもういい、我慢をするな」
「ソリトさん……わたし、ほんどうは人が亡ぐなるどこなんて何度も見てないんです……初めてなんです……育ててくれた人のさえ見れなかったんです。ほんどうはたずけたがっだ。殺じてたずけるんじゃなくてぢゃんとたずけたがっだ」
「ああ」
「ころしぢゃった…みんな、みんなころしぢゃった……なにが聖女だ……なにが目のばえの人達はたすけるだ……後悔してない。でも悔しい。悔しいですソリトさん……うぅ…あああああ………」
ルティアは全部を吐き出すようにソリトの胸に自ら顔を埋めて抱き締めて周囲に響くことなく月光が射し込んできた竜車の中で子どものように泣き続けた。
その姿をソリトは見ることなく上を見上げて、ただ、ルティアの頭を優しく撫で続けた。
別に心を開いた訳ではない。
状況を知りつつもただの協力者だからといって弱っている相手に対して冷酷に無下に扱う程、ソリトは落ちていないだけである。
だから、こうして撫でてやることしか出来ない事が今は無性に煩わしく思えた。
「ぐす……それにしてもやっぱりソリトさんは優しいですね」
「俺の失態だからな。けじめは着ける。それに普通だ」
「本当…素直じゃないですよね」
「本心だ。それより落ち着いたなら離れろ」
十分程して泣き声がすすり泣きへ変わり落ち着いてきたルティアに言うと逆に抱き締める力を強められたソリト。
「この状態はもう少しだけ」
「……はぁ」
どうも翔丸です。
執筆に躓きました………短い。
でも投稿して良かったと思います。




