トドメは聖女の一言で(仮タイ)
前話で【中級水魔法師】を獲得してもらうのを忘れてましたので追加しました。
【中級水魔法師】
初級から中級の水魔法の詠唱を省略できる。(一段階アップ状態)
初級の水魔法の威力が二割上昇、拡大する。(一段階アップ状態)
中級の魔法の威力が一割上昇、拡大する。(一段階アップ状態)
初級水魔法の魔力消費を一割軽減。(一段階アップ状態)
スキル効果により初級から中級の水魔法を無詠唱で発動できる。初級の水魔法の威力が三割上昇する。中級の水魔法の威力が二割上昇する。初級水魔法の魔力消費を二割軽減。
「「「「「すいやせんしたー!」」」」」
ギルドに戻ると、突然ソリトはノルドル達、雇われ冒険者五人に見事な直角に下げられた姿勢の謝罪を受けた。
お姫様と油断したら実はそうでなかった。そうであってもやって来る奴には恐怖をという聖剣の思惑が上手く行ったようだ。
「まさか、聖女様の護衛だったとは。教えてくだされば」
「何だ違うのか」
「え?」
「で、お前等にそれを教えて何かメリットがあるのか?」
「聖女様を敵に回らしたら、一国を敵に回すようなもんです。勘弁してくだせぇアニキ!」
「誰がアニキだ。おい」
「「「「「さぁせんアニキー!」」」」」
ぶるぶる震えながらノルドル達は再度謝罪するが、ソリトに対する呼び方が全く変わっていない。とりあえず、彼等が語るには聖女は敵に回すのは御免被りたい存在らしい。
ソリトはそんなに怯えるような事か?と疑問を抱く。
何か理由があるのだろう。どうでも良いし、さっさと話に決着を付けたいと思っているので、そこに突っ込むこと無く話を戻す。
「ま、聖女は悪事を働かない限りは一応無害だ。あ、でも無視はやめとけ。付き纏われるようになる」
「「「「「はい!」」」」」
「返事をしないでください!あとソリトさん、放っておけないだけですから!」
ルティアの最近お決まりツッコミ的なものを、無視してソリトは歩き出す。ギルド内の人間の視線がソリトへ集まる中、たどり着いた先は坊っちゃんの所だ。
まだ伸びているようなので、指で額を弾いて起こした。
「ここ…ひぃ!く、来るな!寄るな!ぼ、僕はボッコ子爵家の息子のフール・ボッコだぞ!」
「殴りたくなる名前だな、やるぞ」
「い、良いわけがっボラァ!」
「「「って蹴るんかい!」」」
ソリトは、飛び起きて早々尻餅状態のフールの顔面を勢いよく蹴った。別に坊っちゃんに同意は求めていないのだ。ソリトはただ「やるぞ」と宣言しただけ。
そして、ギルド内の人間達から盛大にツッコミをいれられた。
確かにソリトは殴りたくなる名前と言った。が、殴るとは一言も言っていない。
もし、蹴った理由を問われれば「蹴りの方がやり易い」という単純なものであった。
それにしても子爵で戦争を起こそうと思ったと考えるとかなりの傲慢者だ。
「いたいよぉ!!」
強く壁に蹴り上げられ激突した途端、フールが子どものような悲鳴を上げた。
甲高い声がうるさいと、ソリトは顔面を踏みつける。
喚き叫び続ける度に踏圧を上げていく。
「そ、ソリトさんそこまでです!顔が本当に潰れます!」
ルティアがソリトに制止を呼び掛けた瞬間、フールの声がピタリと止み大人しくなった。逆にトドメを刺す決め手になったらしい。
と、それはそれとして、
「おい坊っちゃん。二度と俺のものに手を出すな、視界にも入るな!あと約束は守れ。次はないからな」
踏みつけられながらも坊っちゃんは必死で小刻みに頷く。とはいえ、先程まで反抗していた事を考えると、これは一時的なものに過ぎないだろう。女だろうと男だろうと勝手に所有物として見る奴等は信用できない。ソリトとしては二度と同じ事を出来ないように更に恐怖を植え付ける必要があると考えている。
という訳で、ソリトはベルトから麻痺針を十本抜き出して坊っちゃんに向けた。
「ソリトさん!!」
張り上げられた剣呑な声に、思わずルティアの方へ視線を移す。
「そこまでと言ったはずです。経緯を聞いただけで私は当事者ではありませんが、もう十分なはずです。手に持っている針を、納めてください」
「聖女……」
「ソリトさん」
ソリトは針をベルトに納め、何かを期待するようなキラキラした輝かしい瞳で微笑み、自分を見るルティアの方に振り向く。直後、ソリトはルティアの頬を右手で押し潰した。
「お前最近、俺に図々しいよな」
「しょれのなびばいべばいべっば!」
「高齢の入れ歯入れませんか?」
「そ・れ・の・な・に・が・い・べ・ば・い・の・で・す・か!」
ルティアは頬を押し潰されては普段の口の早さは喋りづらくなる欠点を若干言えてはいないが、ゆっくりと一言ずつ言うことで何とか伝え直した。
「言ったよな?馴れ合うつもりはないって」
「わ・た・ひ・も・いい・ま・ひ・た・よ。し・た・し・く・なり・たい、た・の・ひ・い・から・と。そ・れ・にっ!ソリトさんも言いました。少しは自分の言葉を裏切るなって」
奮闘して引き剥がしてルティアが言った言葉で、どうやらまた自分自身でルティアを一歩も引かせない頑固者にさせてしまったらしいとソリトは思った。
何故こうもルティアに対してだけ裏目に出てばかりなのか不明である。
「一本だけだ」
ソリトはフールの股間に一本麻痺針を投げ刺した。【暗殺者】で麻痺の効果も向上している。これで暫くは男としての尊厳は発揮できないだろう。する相手がいるとは思えないが。
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!」
「まあ、あれくらいなら」
聖女も冷静に返答するくらいの納得様なので、ソリトはとりあえずこれで終わりにすることにした。ルティアとのやり取りで溜飲も下がったからというのは伏せて。理由は説得されたようで嫌だからだ。
「お前等もだ。次はないぞ」
「「「「「は、はひぃぃぃぃ!」」」」」
清々しいとは行かないが、事は終わった。そして、ソリトは呆然としたガイドのカナロアの方に歩み寄る。
「よし、ガイド。お前も約束を守ってもらうぞ」
「あ、えっと…その……あの……」
逃げるとただじゃおかないことを悟ったらしく、しどろもどろになりなるカナロア。
関わりたくないだろう事は、何となく察している。だからといってみすみす逃すわけには行かない。それだけカナロアのスキルが有用なのだ。
すると、そこに先程まで審判をしていた、性根の据わった受付嬢が何処からか戻ってきた。
「あの、すみません。少しお時間いただけますか?」
「事情はあんたも見てたんなら分かるだろ。と言っても俺は冒険者じゃないから任意だがな」
「え!あれで……こほん。それでしたら任意です」
冒険者でない事実に驚いた受付嬢だったが、すぐに冷静さを取り戻して対応した。
「ですが、今回は当支部のギルドマスターが呼んでおりまして」
そう告げる受付嬢から視線を外し、他のギルド職員達に何処かへ連れていかれるフールとノルドル達を見る。
まだ、共に過ごさなければならない時間のようだ。と、思っていると、受付嬢がノルドル達はギルドの地下牢に監禁しておくらしい。
「貴族といえど、ここは中立であり、治外法権に近い無所属都市。貴族もここではただの一般人なんですよ。まあ、だからと言って勝手に他国の人間を裁く事は出来ないので精々牢に閉じ込めるのが関の山なんですけどね」
フール達とは居続ける事は無さそうだが、ギルドマスターとの対面など面倒事の予感しかソリトは感じない。
次回はクロンズ回、もしくはそれの何かとする予定です。
むむむむ迷走中………




