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お礼再び

すいません。友達が今日誕生日で、小説書いてと言われて久々に原稿用紙で書いたので遅れました。


誤字報告ありがとうございます。

「ん……ここは?」

「起きたか」


 目を覚ましたルティアにソリトが声を掛けた。

 今いるのはカールトン村の宿。

 あれから、夜通し走り、反転するきっかけの場所を通らずに村の方に直接戻ってきたのだ。

 既に日は過ぎて朝だ。流石に四日分の距離、さらにルティアを起こさないようにしたりや卵を落とさないようにする事に気を配っていた事もあり、村の宿に戻って女主人に一言挨拶して部屋を案内してもらった後、ベッドの上に寝かせた後、いつの間にかベッドに(もた)れて床で寝ていた。


 こういう状況での冤罪を被せられたのだ、もし見られでもしたらと、ポーッと回らない頭でも理解でき寝起きは最悪だ。


「すみません、ソリトさん。また助けていただいて」

「協力関係を結んでそうそう死なれるとか嫌だからな」

「でも……」

「だから、置いて逃げろとでも言いたかったのか?」


 寝起きで苛立っているというのもありキツい言い方をした。が、ソリトが苛立つ理由の大半はそこではない。


「お前言ったよな。身を売ることはしない。だったら簡単に身を投げ出そうとするな」

「ありがとうございます」

「そこで何故感謝?」

「だって励ましてくださってるんですよね」

「違う。少しは自分の言葉を裏切るなと言ってる」


 嬉しそうに微笑むルティアに否定の言葉を返しソリトは本音を言ったつもりなのだが、どうにも少し違う解釈をしてるように「分かってます」と、ルティアは言って微笑する。


「じゃあ、お前はもう少し寝ていろ」

「何処かに行くなら私も行きます」


 寝てろと返すか一瞬だけ迷ってしまいながら、ソリトは無視してルティアの部屋を後にした。

 その時「無視しないでください!」と言う声とバタンと床に落ちる音が聞こえてきたが、そのまま一階に下りた。

 ちなみにお香の効果は放置したままなにもしていない。抜けてはいるだろうが、ずっと寝たきりで少しの間は上手く歩けないだろう。


「勇者様、おはよ」


 一階には女主人がいて挨拶してきた。


「勇者様は止めてくれ」

「あー…なるほどね。分かったよソリト様」


 分かってて様付けをしていると理解してソリトは溜息を吐く。


「あはは、ごめんごめん。ソリト…で良いかい?でも私達カールトン村の人間にとってはあんたは勇者なんだ。それだけは理解しておくれ」

「………聖女の事寝かし付けておいてくれ」


 宿の外に出たソリトはプルトの街の方へ歩く。

 建物の修繕で村人達が忙しく動いている。魔物の死骸がないのを見るに撤去の方は済んでいるようだ。


 魔物の群れの襲撃で村は半壊。今は無事な家に纏まって暮らしている。宿もその一つだ。村長達の計らいで部屋を開けてくれていた。ただそれが原因でソリトとルティアは同室。それを聞いたとき頭を抱えるしかなかった。


「めつき悪い勇者さまだ」

「めつきの悪い勇者〜」

「勇者のおにいさん」


 一言余計な言葉を言いながら子ども達がソリトの方に向かって走ってきた。子どもに他意はないので苛立ちはない。寧ろ、孤児施設で世話していた事あって気が落ち込みそうになる。


「で、なんかようか?」

「「「村たすけてくれてありがとう!」」」


 全員で目配せして頷いたかと思ったら、どうやら感謝を言いに来たらしい。

 今の純粋なままに、でも人を疑うことを知って育ってほしいとソリトは思った。

 それからすぐ子ども達と別れて街の方へ再び歩く。


 そして、プルトの街が見えてきた辺りで、ソリトは襲撃のあった方の街の入口から少し離れた場所に人集(ひとたか)りが出来ているのが見えた。近付いてみると、街の方ではまだ魔物達の撤去中だった。

 こちらが本隊のようなものだったので仕方ない。それでも今日で終わる数だ。

 ただそこにはまだキメラの死骸が残っており、街の住人達と冒険者達が撤去している。

 すると、ソリトに気づいた一人の男冒険者が声を掛けてきた。


「お、勇者様じゃねぇか」

「お、勇者様」

「勇者様は止めろ」


 街の住人達と街を拠点としている冒険者達がソリトを快く歓迎してくれた。

 どうも、王都に行く直前に会話した際に「自分で聞いたもので、勝手に解釈しろ」と、ソリトはそう言われて話し合った結果、疑わず信じることにしたらしい。

 その原因は明らかに魔物群襲撃が影響しただろう。


「あ、そうだ蜂の魔物の針を貰って良いか」


 街の老人に尋ねる。


「ええ、どうぞ大量にあって困っていたところですから。良ければこちらで加工をしますが」

「それはこっちで頼む」

「そうですか。他の素材は」

「針だけで良い。数は麻痺と毒合わせてあれば六十本。残りの素材はそっちで復興費の足しにしてくれ。キメラなんて中々手に入らないだろうしな」

「………ではありがたく受け取らせていただきます」


 少し悩んでいたが、街の復興資金はやはり欲しかったらしく、ソリトの言葉を受け入れる。

 針は後で取りに来ると伝えて、武器屋の方に向かった。


「お、小僧久しぶりだな」


 店に入るなり、武器屋の爺さんはソリトに挨拶する。初めて会った時と変わらない年寄りとは思えない元気な挨拶だ。

 武器屋の爺さんもソリトが冤罪を掛けられている事を知っている筈なのに何も変わらない態度で接してくれている。

 気の良い爺さんだ。

 ソリトはこの爺さんは信用してみても良いと思った。


「五日しか経ってないぞ」

「年寄りの時間を舐めるなよ。そういや聖女の嬢ちゃんはどうした?」

「アイツなら今頃村の宿で寝てる」

「そりゃあ良かった。で、今日はどうした」

「ああ、針を装備用に加工したい」


 魔物の針となると加工は武器屋の爺さんに聞いた方が良いと思ったのだ。


「装備用って、暗殺者じゃあるまいし」

「使い方はあながち間違ってない」


 毒針に麻痺針も上手く加工すれば立派な暗器だ。隙を突いた所から針を飛ばす、当てなくとも掠めるだけでも効果が有る。

 考えてみると暗殺者と分からなければ視認の難しい手段は前面で使っても良いかもしれない思った。

 とりあえず要望を話さないと進まない。


「何か考えてたみたいだが纏まったか」

「ああ。針はなるべく細目に。投げた時に視認が難しいぐらいで頼みたい。あと取りやすく指に引っ掻けるような場所が欲しい。これは出来ればで良い」

「分かった。数は」

「六十だ。で、内十本だけ教えてもらいたい。その後は自分で経験積む」

  「…………分かった。小僧の頼みだ。ただし要望通り十本だけだ」

「助かる」


 それから明日また針を持って来ることを伝えて、武器屋を後にした。次にソリトは道具屋に向かう。針を隠して持ち歩けるように専用ホルダーを作るためである。

 道具屋に来ると物腰低い店主がソリトを見た瞬間、笑顔でお辞儀する。


「戻ってこられたんですね。良かったです。それとまたカールトン村を助けていただいてありがとうございます」

「前も聞いたからもういい」

「いえ、今回は親戚が助けてもらったので」


 村を襲っていた魔物達を討伐していた途中でまだ村に残っていた村人達を成り行きで助けていたソリト。

 どうやら、その中に道具屋の親戚となる人がいたようだ。


「今回は安くというお礼ではなく、何かあれば贈りたいのですが」

「それなら今度針を収納するホルダーベルトを作るつもりだったんだが、その製作を教えてくれないか」

「そんな事でしたら全然構いません」

「なら、近い内にまた来る」

「はい。あ、そうでした。魔法専門店の方が戻ってきたら渡したいものがあるから来て欲しいと言ってました」


 魔法専門店は魔法関連の書物等を扱っている店だ。

 それらしい店が見当たらなかったのでないとソリトは思っていたがあるらしい。


「何処だ?」

「ここから左三番目にある店です」


 そこにある店は魔法専門店というより、パン屋のような小洒落た外観の建物。見過ごすわけだとソリトは納得した。

 そして、道具屋を後にして、ソリトは魔法専門店に足を運んだ。



「あ、勇者様、待ってましたよ。突然だけど村の家族助けてくれてありがとね」

「………ああ」


 どうやら魔法店のお姉さんもカールトン村出身らしい。魔法店のお姉さんがいきなり気軽い口調で出迎えてる時、ソリトは内心で村出身の人間が多いなとツッコミを入れていた。

 魔法屋のお姉さんはトンガリ帽子に黒いローブを着た姿をしている。


「で、何か渡したいものがあるとか」

「そうそう。じゃあ、ちょっちぃ待ってて」

「……ちょっちぃ」


 待っている間、ソリトは店内を見渡してみる。

 棚には沢山の魔法を覚えるための書物が並べられているものや、魔法の補助になる様々な長さの杖がある。

 カウンター奥には見るからに高価そうな本が二段棚に並んでいる。


「お待たせー」


 戻ってくると魔法店のお姉さんは一つの水晶玉とクッションの上に乗せて持ってきてカウンターに置いた。


「占いは別にいらない」

「違う違う。私魔法師。占術師じゃないから。じゃあ、ちょっちぃこの水晶に手を乗っけて」

「ちょっちぃ……」

「どうかした?」

「あ、ああ、いや」


 ちょっちぃという言葉が気になって仕方ないソリトだが、水晶に手を乗せる。すると、魔法店のお姉さんが呪文を唱え出した。

 水晶が光ると多彩な色に変化していく。


「え、嘘。魔法無し!?」


 という言葉を聞いてソリトは水晶玉で魔法適性を診断するのを思い出す。魔法適性が無かった為、選択肢から外していた。

 そして、その診断に魔法店のお姉さんは驚いている。


「勇者様、【勇者】のスキルに魔法関連の何かある!?」


 話すべきか迷ったが教会か国の上層でもない限りはスキルの内容を調べることは出来ない。

 だが、何処から漏れるか分からない。万が一ということもある。


「ないな」

「いやいや、適性無くてスキル能力にも無いのにどうやってキメラを倒した時に初級の火魔法放ってたの!?」


 魔法を使えるのなら、あの場所にいても可笑しくはない。


「言ってもいいが、誰かに話したらお前の何かが飛ぶ」

「恩人の事を言い振らさないよ。でも何が飛ぶのか分からなくて怖いので何が飛ぶかは教えて!」

「胸」

「痛いし、女の武器無くなるし、何よりメチャクチャ怖い!これ絶対言い振らしたヤツはアホだ!」

「じゃあそのアホにならないように契約書でもしたためておくか?

「大丈夫大丈夫、聞かないことするから!」


 その答えは賢明な判断と言えよう。


「あ、でも使える魔法は教えて。必要な事なの!」

「それくらいならまあ良いか。初級火魔法と初級光魔法各一つずつだけだ」

「そっかそれなら無駄にならずに済みそう」


 そう言ってカウンターの下から三冊の本を出した。


「初級魔法書、上中下の三点セット。これを渡したかったんだよ」


 それは本当にソリトにとっては有り難いものだった。魔法習得に関してどうしたものかと思っていたが、初級魔法に関してはこれで解決したも同然となった。


「本当は後ろの魔導書を渡したいけどかなり高価だから。ごめんね、こっちも商売だからさ」


 魔導書は一冊に一つの魔法が納められている。一度読むだけですぐに習得出来るのだという。しかも、一冊作るのにかなりの時間と労力、そして製作者の魔力が必要とソリトは聞いている。

 魔法書を譲ってくれるだけでも有り難いことなのだ。


「高位の魔法書か魔導書は流石に購入でお願い」


 それはあっちも店を構えて商売しているのだから譲るだけでもかなり身を削る、いや、肉を切る思いだろう。

 それで意見や我が(まま)など言えるはずがない。


「感謝する」

「勇者様強いし、初級の火魔法だけでも沢山あるからきっと役に立つよ。頑張って」

「ああ。そうだ、俺は魔法を全て習得できるから」

「え?」


 魔法書を貰った義理としてそれだけを言って、ソリトは魔法専門店を後にしてカールトン村の方に戻ることにした。


 宿に戻るとルティアが待ち構えていて、入った瞬間軽く手刀をくらわされたソリトは仕置きをしてから部屋に戻った。

どうも、翔丸です。

今回も一時期に感想欄解放します。

今日までなので良ければどうぞ。

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