表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/166

一時共闘

分割しました。ご迷惑おかけします。

 魔物達の間から、スカルソルジャーを討伐する影が見えた。


「ソリトさん!」


 街の防衛に当たっていたはずのルティアが細剣による刺突攻撃と共にソリトの前に現れた。


「聖女、お前何で」

「影を追って行くソリトさんを見て村の方に行ったのかと、少々時間が掛かりましたが」

「いや、じゃなくて何でここに来た」

「私、言いましたよね。見捨てな…邪魔です!」


 連続突きでルティアが屍食鬼を討伐する。

 討伐より話の方が優先になっている。


「ソリトさんっは!もう邪魔!……ああ〜!」


 自棄になったのかのように聖女が叫びながら凄まじい速度で駆け巡り討伐していく。


「丁度良い。聖女!魔物連れて少しずつ真ん中に詰め寄れ」

「へ?は、はい!」


 この際、ルティアを利用することにした。

 最初は何故か分からず、間抜けな返事を返したルティアだが、直ぐに攻めから回避行動に軸をおいて防御体勢に変え軽やかによけていく。

 狭まって逃げ道を完全に断たれるまでに至ると、魔物が一斉に仕掛けてきた。


「跳ぶぞ」

「え?きゃ!」


 ソリトはルティアの腰に腕を回し抱えて跳躍した。

 同時にルティアを自身の背中に放って背負い、聖剣を両手で握り、上段に構え直して落下し、そして、


「鉄槌割り!」


 密集の中心目掛けて、衝撃波を叩き込んだ。

 直後、十メートル程のクレーターが生まれると同時に、密集させていた魔物の気配が全て消えた。


『スカルソルジャー十四体を討伐により全能力が上昇します』

『屍食鬼八体を討伐により全能力が上昇します』

『ブラックウルフ二十体を討伐により全能力が上昇します』

『スキル【破壊王】獲得」


 周辺を見渡すと一部村の建物が半壊してしまっていた。


【破壊王】

 物理攻撃力を倍にする。(一段階アップ状態)

 確率で衝撃波を周囲十メートル範囲で発動可能。(一段階アップ状態)

 発動中、敏捷と物理防御力が二割減少。(一段階アップ状態)

 スキル効果により戦闘時に物理攻撃力を三倍に上昇、衝撃波を周囲二十メートル範囲に上昇。敏捷と物理防御力が三割減少に減退。


 ソリトがタグでスキルを見ているとルティアが呟いた。


「凄い」

「……今回は助かったが、お前の手は必要ない。分かったなら他の所に行け」

「嫌です。私は決めたんです。ソリトさんが孤独を望んでも絶対に付いていく!隣でなくとも後ろに居続ける。私は絶対に貴方を一人にしたくない!」


 ドスン!

 振動が響く足音が近付いてきている。

 気配感知でもさっきの魔物より大きい。

 そちらに体を向けて待ち構える。

 そして、家の影から現れたのは巨大なブラックウルフだった。

 他より獰猛そうな赤い眼光、逆立つ毛並み、鋭く大きな爪と牙。


 その眼光がソリト達の方へ向いた瞬間、巨駆に似合わない俊敏さでソリト達へ接近し、爪を剥き出しにして右前足を振り上げた。


 ソリトは咄嗟に軽くルティアを突き飛ばす。

 冷静に聖剣を上に構え攻撃を受け止めた。


「ん?」

 

 【破壊王】のお陰か、全くと言って良いほど衝撃ダメージが来なかった。

 攻撃重点の三つにデメリットがあるスキルと少し残念に思ったが、案外役に立つスキルらしい。


「ソリトさん!」

「付いてきてみろ」

「え」


 立ち上がり細剣を握って身構えた聖女に向かってソリトは言った。


「俺の進む道を一歩も見失わず付いて来てみろ!!」


 そう言った瞬間、ルティアの顔付きが変わった。

 その時、一瞬笑みを微かに浮かべたような気がしたソリト。


「ええ、何処までも」

「なら、まずはこいつを倒すんだな」

「分かりました」


 ソリトは巨大ブラックウルフを押し返す。

 ちょっとした快感。【破壊王】は意外と最高と思える瞬間だった。


「攻撃は俺が受けてやる。そしたら細剣で突き刺せ」

「はい!」


 大きいからといって、他のブラックウルフと然程差は無いようにソリトは感じた。


 そこへ今度は一番近くにいるソリトへ鋭い爪が振り下ろされた。

 再びソリトは巨大ブラックウルフの攻撃を真正面から今度は片手で握った聖剣で受け止めた。


 ここで避けなかった理由は単純。

 敵を引き付ける事。

 攻撃をルティアに向けないようにする事。

 この二つ。

 また、ここで避ければルティアが狙いを定め難くなる。

 ルティアの速度と正確な刺突なら問題はないだろう。

 しかし、ソリトは避けられた場合を想定した。

 ゆえに、ルティアが確実に仕止められる方法を選んだ。


 それを踏まえて、ソリトは空いている左手で受け止めている足を掴み、垂直に持ち上げた。


「グルァ!?」

「……………うそ」


 驚きながらも、ルティアは速度を加えてブラックウルフを細剣で突き刺した。


「終わりましたね」

「そうだな、他に気配はない」

「それで、鬱憤は晴れました?」


 首を少し傾げて、ルティアがニコっと微笑む。


「はぁ……お前は読心術でも持ってるのか?」

「全くないです」


 それはそれで怖いと感じさせるものがある。


「で?どうです?」

「………ま、少しはな」

「少し、ですか……では、次行きましょう」

「街へ行けと」

「それ以外ありませんよ」

「本当は鬱憤を残させて行かせようとしてたのか」

「あ、その手がありました」


 打算などなく天然で来たらしい。

 鋭いのか、抜けてるのか分からない聖女様だ。


「嫌なら助けた貸し一つでという事で」

「………お前、聖女だよな」

「ソリトさんが嫌な顔するからです。それにここまで来て討伐しないのも嫌でしょ?」


 それにはソリトも同意見だ。

 しかし、ルティアに言いくるめられているようで少し悔しい。

 なので、


「分かった。今借り一つをここで返す」

「では、行きましょう!」

「へいへい」





「あの〜、これ結構恥ずかしいのですが」


 抗議してくるルティアは、今現在ソリトが腰に腕を回し抱えられてプルトの街に向かっていた。


「待って待ってうるさいからだ。つべこべ言うな」

「はい」


 突然物分かりが良くなるのにソリトは調子が狂う。


「ソリトさんあれ」


 指す先に町が見え、一部だけ何だが苦戦している様子だ。

 その魔物はライオンにも見えるしヤギのようにも見えた。

 尻尾が蛇となっており、翼は鷲の四足歩行の魔物。


「キメラですね」


 キメラは様々な動物の姿形をした魔物。

 獰猛で複数の生物が混ざり合い、その特徴を持った魔物、とルティアは説明した。


「おい、飛ばれたら流石に難しいぞ」

「ですね」

「まぁ、飛ぶ前に殺すだけなんだが……。おい…………」

「え!?」


 走りながら手放すとルティアはバタバタとバランスを取ろうとしながら走り向かう。


「聖女だ!」

「戻ってきてくれたぞ」


 ルティアを見つけた冒険者達が歓喜する。その間を通り過ぎながらルティアは真っ直ぐ突きの構えを取りながらキメラに向かって全速力で駆けていく。

 間合いに入った瞬間、全力で踏み込み一気に大地を駆け抜ける速度で細剣を突き刺そうと迫る。


 キメラの腹部に直撃する……かに思えたが、キメラは翼を広げて空に上がり回避した。


「え?避けられたのか」


 誰かがあり得んとばかりに叫んだ。

 それと裏腹にルティアは口角だけを上げて笑みを浮かべているだろう。

 それが役割だからだ。


 そして、その間にソリトが【気配遮断】でキメラの後ろに回り込む。

 ぐるッと大きく回りながら、空に上がるキメラに向かって跳んだ。

 それに気づいた尻尾部分の蛇が火炎ブレスを吐き出した。


 ソリトはバトルジャケットに付いているフードを深く被り腕を交差させてそのまま突っ込む。

 この策に転じる前にもう少し、ルティアにキメラについて質問したソリト。


 それで、分かったのは大抵のキメラは尻尾である蛇毒の毒と火炎のブレスと、相手の動きを一時的に封じる技に気を付ければ問題無いという事だった。

【毒無効】と、火と熱に耐性のあるバトルジャケットを着ていても質問しなければ、少々慎重な対応で接敵していた。

 とはいえ、相手の出方を窺える程悠長に構えている暇もない。

 ゆえに、ソリトは渋々ながらに質問した。


 そして、突っ込んだブレスを振り払い、ソリトはキメラの尻尾を叩っ斬った。


「ガアアアアアアア!!」


 キメラが咆哮を上げる。

 その瞬間、周囲の冒険者や兵士達が動かなくなった。

 ルティアの言っていた相手の動きを封じる技だろう。


 しかし、どういう訳かソリトには効果が無かった。

 キメラの背の上に立ったソリトは片翼を聖剣で斬り裂き、片翼を初級の火魔法で燃やした。

 咆哮は悲鳴に変わり、暴れながらキメラは下に落下する。


「グルルルル」


 呻き声を漏らすキメラの頭を足で押さえ付ける。

 冒険者や兵士が呆然とその様子に視線を向ける。

 気に止めず、ソリトは背中に聖剣を突き刺そうと構えた。

 その瞬間、尻尾が蠢いて再生し始めた。


 だがそれを許すソリトではなく、聖剣の刀身を背に向けたまま、尻尾を再び斬り落とし、尻に刺した。


「キャウ!」


 どうやら、尻が弱いらしい。

 そんな事はどうでも良いソリトは、聖剣をそのまま突き刺し、手刀に構えた左手を背中に貫き通した。


「アインス・フレイムボール」


 体内から全身に火が巡り、目、口、鼻から火と火花を噴き出しながらキメラが倒れた。


『キメラを討伐により全能力が上昇します』

『同一条件スキルを確認。補正措置により全能力が上昇します』

『スキル【威圧】獲得』

『スキル【火耐性】獲得』

『スキル【自己再生(小)】獲得』


【威圧】

 任意の相手を三十秒だけ一時的に硬直させる。(一段階アップ状態)

 自分よりレベルの高い相手には効果が薄い。

 スキル効果により、硬直時間を一分に増加。


【火耐性】

 火属性の攻撃耐性を付与。(一段階アップ状態)

 スキル効果により【耐性】から【火炎無効】に変化。


【自己再生(小)】

 魔力を消費して受けた傷を回復させる。(一段階アップ状態)

 スキル効果によりを(小)から(中)に変化。


 その後、キメラが中心だったのか、統率力を無くした魔物の残党を討伐していった。

 そして、夕日が沈み始めた頃に事は全て終わった。


「あの、ソリト様」


 振り返るソリト。

 すると、そこには街に避難した村の人間達が集まっていた。


「なんだ?」

「ありがとうございました。ソリト様がいなければ、全員避難できていなかったと思います」


 村長が代表して感謝を述べる。


「冒険者がいたんだからいつかはなっていた」

「いいえ、ソリト様が来てくださったからこそ、冒険者達とともに生き残る事が出来たのです」

「どうでも良い。そう思うならそうなんだろ」

「「「はい!ありがとうございます!」」」


 一斉に村の人間全員が頭を下げて帰っていった。

 あの村の破損は激しい。復興のには苦労するだろう。


「あ」


 その時、建物は半壊で済んでいるが村の中央を大体的に破壊した事を思い出した。

 それはそれ、これはこれとして、ソリトは少しだけ村の復興に手を貸す事に決めた。


「ソリトさん!」


 聖女のイメージとはかけ離れた泥と汗まみれになったルティアが手を振りながら笑顔で駆け寄ってくる。

 手伝うのは明日として、ソリトも村に戻って歩き出す。


「お疲れ様です。皆さん凄く感謝してますよ」

「…………」

「祝杯を挙げるそうなんですけど、ソリトさんどうですか?」

「…………」

「もう、また無視ですか」


 ソリトは足を止めて、ルティアの方に振り返る。


「勘違いするなよ。あれは一時的な共闘に過ぎない。終わったら他人だ。それ以上でもそれ以下でもない」


 命を助けてもらった礼を言いに来たが、ソリトが【調和の勇者】だと知れば、きっと見る目を変えるだろう。

 街の冒険者も同じ、馴れ合うつもりはない。

 それでも、ルティアは何を言っても付いてくるのだろう。


「だから、勝手にしろ」

「はい。ああ、そうだ。私、頑張りましたよ」

「そうだな」

「指示通り頑張りました」

「そうだな」

「大変でした」

「そうだな」

「ソリトさんは良い天気ですね」

「そうだな」

「やっぱり!そうだなで無視しないでください!」

「そうだな」

「だーかーらー!」


 そんなやり取りを村に着くまで続けながらソリトはルティアに後ろから付き纏われながら村に向かうのだった。

ジャケットガードの性能を出せて安心です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 本人は拒絶しても相手からついてくる場合は、孤高関連スキルに影響しないのか。ある意味抜け道、バグ技ですかね。それはそうと、聖女に引っ張られて救世の為に良い様に使われ、ソリトがクズやその同調者達…
[一言] 豪華2本立て() 面白かったので遅れても大丈夫です
[一言] 実質、聖女の告白の気も。 まあ、主人公も勝手に好きにしろで受け入れで正式にPTか。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ