side2冤罪
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あれから二日が経ち、クロンズ達はクレセント王国王都ルナールへとやって来た。
王都の門を通り抜けた瞬間、メインの表通りには都市に住んでいる全国民が来ているのではないかと錯覚するほどに通りの脇に溢れ返り一行を待っており、馬車が見えた途端に民衆の声が門付近から奥へと連動して歓声が起こる。
その通りを馬車がゆっくりと進んで中央の城へと向かっていく。
クロンズは国民の歓声に苛立ちを覚え、余りいい気分とは言えなかった。うるさいからではない、逆に愉悦、優越感に高揚する。
ただ、これが自分に対する物であるならばだ。
国民の歓声は何処も賢も『調和の勇者』の名前を叫ぶ声ばかりだった。
確かにクレセント王国の勇者はソリトだ。
だが、現在、いや既に過去に同じパーティに自分もいるのだ。それなのに何故ソリトばかりが称えられるのだ、とクロンズは思わずにはいられなかった。
とはいえ、そんな歓声も今日で終わりだ、とクロンズは口角を上げてニヤリと不気味な笑みを浮かべる。
そして、苛立ちは徐々に薄まっていき、歓喜に変化していきながら馬車に揺らされ、外に顔を見せ手を振りながら城へ向かっていった。
城に辿り着き城内に入るなり、チラチラと視線を向けてくる兵士二人に案内されながらクロンズ達は謁見の間へと来た。
謁見の間の玉座に厳格な顔の白髪の男がクレセント王国国王、グラディール・クレセント、その隣に王妃であるリリスティア・A・クレセントが座っている。
国王グラディールはクロンズ達を目にした途端、眉を顰める。
当然だ。謁見の間に一人、いない者がいるのだから。
「まずは、ドラゴン討伐御苦労だった。感謝する」
「有り難きお言葉」
クロンズがそう言った後、一行は頭を下げる。
その間も早くここにいないソリトの事を持ち掛けろ、と気持ちが焦るが顔に出さないよう気持ちを抑えながら精一杯笑顔を作るクロンズ。
ここでボロを出せば全て台無しだ。それはクロンズとしては面白くない状況なのだ。
焦らず、その時が来るまで待とうと、話しに耳を傾ける。
「次に依頼達成による報奨金と援助金、それとこれからの期待に銀貨五千枚を贈呈する」
だが、その言葉に歓喜の声は無かった。
援助金は最低でも一人銀貨二百枚。その数十倍なのだから当然の反応なのだが、ファル達は浮かない顔暗く沈んだ顔をしたままだ。
大臣に銀貨の入った袋を受け取った騎士がクロンズ達の前に来て銀貨五千枚の入った重量感ある袋をクロンズに手渡し部屋の端に下がった。
「して、一つ尋ねたいことがある。薄々理解していると思うが【調和の勇者】の事だ」
ついに来た、と思わずニヤリと笑いそうになり、クロンズは咄嗟に俯き表情を隠す。そして、そのまま握り拳を作って腕を震わせる。
様子の変化に気付いた王が困惑気味に問い掛ける。
「彼は一体……」
「いやあ!」
突然、フィーリスが叫びをあげた。アリアーシャがフィーリスを抱き寄せると胸に顔を埋める。
その様子に周囲がざわざわどよめき始める。
「い、一体どうしたのだ!?」
動揺を露にするグラディールに声を詰まらせるようにクロンズは語る。
「……じ、実はその【調和の勇者】がフィーリスとアリアーシャに強姦を、働いたのです」
「なんだと!?」
グラディールの声に騒ぎが大きくなる。
それを女王のリリスティアが静粛の一言で収めると、グラディールが再び口を開く。
「そ、それは誠か!?」
「……はい」
クロンズが返答すると、静粛されたからか周囲はヒソヒソと隣同士で呟き合い出す。
「詳しく聞いても良いか?」
「う……はい…」
「いえ、それは自分が代わりに話します」
被害者本人が話すのは酷だろうという意図を察してあっさりと了承された。そんなものは嘘だが。
フィーリス達の怯えようを見れば真実だと思い込むはず、そう考えて、クロンズは三人に役割を与えた。
クロンズが代わりに話すという芝居のやり取りもその一つだ。
「話を聞く所によると、突然フィーリスとアリアーシャの部屋に入ってきてフィーリスを押し倒したらしいです」
一端息を呑んで間を空けてからという芝居で、あたかも話している自分も恐ろしく感じていますよというアピールをしてから話を再開する。
「………そして、フィーリスを助けようとしたアリアーシャは暴行を加えられて、最近お前達は足手まといだからせめて奉仕くらいはしろと言って…………ソリトは二人の服を破り脱がせようとした、と」
フィーリスは頭を抱え体を縮こませて怯える、それをアリアーシャが怒りの形相でフィーリスを抱きしめている。
二人の様子をグラディールが信じられないという顔で見ている。
そこにクロンズは更に話を続ける。
「……その後、抑えられているのが弱かったアリアーシャが部屋から抜け出して泣きながら自分の所に助けを求めてきたんです」
そこまで話し終わると、クロンズを称える声とソリトを罵倒する声の二つが広がる。
クロンズは快感だった。
ありもしない嘘によって、ソリトが罵倒され堕ちていく今の時間が堪らなかった。
証拠はない。あるのは状況証拠を語る嘘話と芝居による三人の様子だけ。
「ファルはソリトの恋人でした!悲しみの余り口を閉ざしまっています。ここに来るまでの戦闘では本当に、良く頑張ってくれたと、思います」
周囲はファルに同情の目を向ける。中には慰める声をかけるものもいる。
すると、ファルが突然泣き出した。
クロンズの頭の中でそんな予定は無かった。
だが、それが信憑性を強めたらしく、グラディールの口から外道という言葉が漏れ出た。
クロンズは後で誉めよう、そして、一番長く抱いてやろうと心の中で下卑た事を考えていた。
「性行為を強要するなど許されるものではない。彼が勇者でなければ処刑にするものを……所詮は孤児か」
(おいおい、国王がそんなこと言っていいのかよ)
確かに先の言葉は国王として一人の民を蔑むのではなく孤児全体を含むものとして捉えられても可笑しくないものだし、確りとした証拠を集めもしないで口にした言葉は。
これはつまり、グラディールの中ではソリトを黒だと断定したと考えていいだろう。
クロンズは自分が跳び跳ねるのではないかという程に凄まじい程に気持ちが昂った。
ゆえに、クロンズはこの三文芝居の如き状況が余りに滑稽に思えた。
しかし、だからこそソリトが処刑にならないことが少し残念に思った。それでもクロンズにとってこの結果は十分過ぎるものだった。
クロンズはソリトが気に食わなかった。
旅する先々で、両国を伝いに依頼を出してきた村や領地で殆どソリトが感謝された。
クロンズは率先してその大元を叩きにいく。しかし、ソリトは村が襲われれば大元の方を目指す事を止め引き返して村や領地街に戻っていく。そういう時、大元を叩くのはクロンズ、フィーリス、アリアーシャの三人でファルはソリトに付いて行っていた。
村や街の事は兵士やそこに滞在してる冒険者にでも任せておけばいいだろという考えと魔王を倒すそれが勇者という考えを抱くクロンズには理解できなかった。
何故感謝され称えられるのが自分ではなくソリトなのか、勇者にしては絶対的な力はなく、他人の力を借りなければいけない弱いスキルが存在する、次第に苛立ちは膨らんでいった。
弱い勇者はいらない、自分以外の勇者が自分より称えられるのは気に食わないと感じた。
だから、奪ってやると決めた。
ソリトとファルが恋人同士なのは知っていた。大切なものを奪い、勇者としての尊厳を貶めてやろうと思った。
そして今、それを為すことが出来た。いや、まだ国民に知れ渡っていない。それも直ぐに広まるだろうが、そこからがまた楽しみが増える。
ソリトが知った時、一体どんな顔をするだろうか。見れるなら見たいものだと願いながら、クロンズは国王に声を掛ける。
「グラディール王、お願いあります」
「む……聞こう」
「ファル達の心はとても傷付いています。少しの間で宜しいので休息をいただきたいのです」
魔王討伐の旅をしなければ結局の所、名は広がらない。かといって、直ぐに出発するのは逆に怪しまれる。
ここまで国王が信じているのだから大丈夫だと思うが念のためにと話を持ち掛けた。
「分かった。許そう。【調和の勇者】の方はこちらで捜索する」
「分かりました」
この話しは直ぐにでもクロンズの自国アポリア王国にも伝えられ広がるだろう。
他国にまで蔑まれるとは滑稽だとクロンズは内心で大いに笑って、ファル達と共に城を後にした。
クズですね。しょうもない理由ですねぇ。
何で殆どの人がソリトに感謝するのか、理解できないとは悪知恵しか働かないおつむなようですね。
次回はソリトとルティア回に戻ります。
ただ、少しやり取りが面白くないかもしれません。




