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御礼巡りの先で

評価、ブクマありがとうございます。

またブクマが300人になりました。ありがとうございます。

 翌朝、ソリトは何をしようか考えていた。

 その時、昨日採取した薬草のことを思い出す。いつまでも持っていても調合しないなら売った方がいい。


「ソリト様おはようございます」

「ああ、村長か」


 宿を出た先で村長が待っていた。


「今日はお渡ししたいものがありまして」

「渡したいもの?」

「これでこざいます」


 そう言って一枚の血印が押された紙と別に紙を一枚手渡す。


「何だこれ?」

「昨日お話した書状と村の者が構える店名を書いたものでございます」

「これがか」


 つまり、プルトの街に行ってここの村人が構える店にこの紙を出せば、必要な物を買い揃えられるわけだ。

 馬車の方がまだなので、今から使っても問題はないだろうが、薬も使うこともなかったし、暫くは必要無さそうだ。


「これから何処に」

「……街にちょっとな」


 そして、ソリトはプルトの街に向かった。


 街に着いた所で直ぐに薬屋へ足を運んだ。

 買い取ってもらおうとソリトは袋から薬草を出すと、森の事を聞かれたので話すと、突然頭を下げて感謝された。

 そんなに薬草に困っていたのだろうか。それにしては先日の買取金額はそうでもなかった気がする事をソリトは思い出す。


「一体どうした?」

「私は今はここに住んでるが、元はあの村の住人だから御礼を」

「ああ……なるほど」


 どうやら、ここが村長の言っていた店の一つだったらしい。

 村長から一枚の店名リストを貰っているから、探せば何処かにこの薬屋の店名が載っているだろう。

 しかも、ギルドに依頼したのはこの薬屋らしい。

 それは確かに解決したと分かれば突然感謝もする……かもしれない。


「そうだ、よかったら」


 薬屋がカウンターテーブルから離れ、戸棚から二冊の本を持ってきた。


「これは?」

「薬の調合レシピの初級本と中級本だよ。いつでも調合出来れば便利と思って」


 初級本を手に取ってパラパラと読んでみると、今ある薬草でソリトでも簡単に作れる薬の調合レシピが書かれている。

 薬は回復魔法が使えないときには便利だし、不要であれば売ればいいし、常備していても何ら問題はない。


「やってみるか」

「はい、頑張りましょう!」

「ああ……ん?」


 つい受け答えしてしまったが今のは誰だと後ろに振り向くと何故かルティアがソリトの背後から本を覗き込んで見ていた。


「「うああ!!」」


 薬屋と共にソリトは驚き叫んだ。


「なんでいるんだよ!」

「挨拶をしようと思ったら村の何処にもいなかったので、昨日森にまた行ってましたし薬草採取して買取に行ったのかと思って来ました」


 なんて推理力をしているのだろうかこの聖女は。怖いと叫びたい気持ちを忘れるほど一瞬で頭から飛び沈黙してしまったソリトだった。


「というか、【癒しの聖女】だろ。薬の調合くらい出来るだろ」

「…………」


 沈黙したと思ったらルティアの目が泳ぎ始めた。

 その反応で全て理解したソリトは呆れて何も言えなくなった。


「良いじゃないですか。私教えますよ」

「………」

「えっ、完全無視ですか」


 何故一緒に読んで教えさせてもらえると思ったのだろうかと不思議に思うソリト。そもそもの発端は最後の最後に諦めて話しかけてしまった事がこの聖女を付け上がらせてしまったようだと直ぐに考えに至る。


「薬屋、要らない道具が無かったりしないか」

「え、ああ中古なら」


 薬屋はお礼という事で倉庫にあった中古の調合機材を譲ってくれた。

 乳鉢、フラスコ等々色々と高価な道具まである。新品で買い揃えようとすれば結構な値になるはずだ。

 薬草は買取をしてもらおうとしていた物を半分残して残りは買い取ってもらうことにした。

 ただ、売れ残った中古ゆえいつ壊れても可笑しくはないと言われたが初めての者にはうってつけだろう。


「無視しないでくださいよ」

「薬屋世話になった」

「またいつでも、聖女様も是非に」

「は、はい」

「ああ、そうだ。道具屋にも立ち寄ってみてくれ」


 そこも村の人間が構えている店の一つなのだろう。

 必要な物がもしかするとあるかもしれない。とりあえず行ってみようとソリトは尋ねる。


「何処の店だ」

「表通り中央のギルドの向かいにある建物だ」


 向かいには確かギルド程ではないが他より大きい建物があったはずだ。小さな商会だと思っていたが道具屋らしい。

 しかし、一体どう違うのだろうか。


 その後、改めて買い取って貰おうと薬草を出すと、薬屋は前より高値で買ってくれた。




「ありがとう!」


 道具屋に行くとまた同じように男店主に突然感謝された。

 店主は物腰が低そうなタレ目のおじさんだ。感謝の時も物凄く頭を低く下げてソリトにしたくらいだ。


「それで今日はどんな道具をお求めですか」

「まだ特には、まずは見てからだ」

「どうぞじっくり見てください」


 店内の道具は見渡す限りでは日常から冒険者用の必需品の種類を多めに珍しいものを少なめに揃えられている。


「ところで後ろの方は」


 すると、ルティアは足早で物腰低い店主の前まで近寄り「癒しの聖女、ルティアと申します」と丁寧な所作からのお辞儀をして自己紹介した。

 きっと、また雑に扱われると思い、雑にされる前に自分でしようと前に出たのだろう。

 だが、する気などソリトには無く、挨拶をしている間に店内の品を見始めていた。


 日常と冒険者用の棚は分けられており、また必需品の置いてある棚の所々に珍しい道具が置いてあり、飽きずに見ることが出来そうだ。

 そうして、冒険者用の棚に目を向けると、


「アイテムポーチか」


 大きさから見て瓶三本分くらいだ。

 だが、旅袋から一々出すよりはベルトにさして腰に回していた方が戦闘時に魔力薬水等を取り出しやすく効率が良い。


 色違いが幾つかある。

 こだわる訳ではないが、嫌いなものを持つより好みの色の方が良いだろうとソリトはポーチを睨む。


「このオレンジブラウンなんてどうです?」


 棚からポーチを手に取ってルティアが見せてくる。

 ソリトは聞き流してポーチを選び続ける。


「どうして、いきなり完全無視するんですか」


 ソリトはその問いに答えない。

 すると、ルティアの表情が暗くなる。


「さっきまで……話してくれてましたよね」

「………はぁ。それはお前がしつこいから仕方なく話し返しただけだ」

「優しいですね」


 ルティアが安堵したような表情しながら言った。

 今の言葉をどう聞いたらそんな解釈にいたるのだろう。

 更にルティアは話を続ける。


「だって、本当に嫌なら話し返してなんてしませんよね」


 微笑む顔をソリトに向ける。

 それに対してソリトは小さく舌打ちしながら、グレーのアイテムポーチを棚から取って道具屋の店主の前に出す。店主は銅貨三十枚の所を銅貨二十枚にサービスしてくれた。

 他にも幾つか候補を見つけたがさっさと店を出た。


「ソリトさん待って!」


 呼び掛けながらルティアが追ってくる。

 ソリトは村に繋がる街道に出て中間辺りまで歩くと足を止めて振り返る。

 どんな顔になっているのか、きっと苛立った表情にでもなっていたのかルティアが身構えた。


「あの…すいま…」

「……ん………だよ」

「え」

「なんなんだよ!しつこく話しかけて来て、何度も執拗に!……お前の恩返しってのは助けてくれた男に尻尾を振るような振る舞いをする事なのか?」


 いきなり言われ大きく目を見開いたルティアの顔は言っていく度に辛そうな表情に変わっていき俯く。


「…に…あ…た………街に、戻ります」


 何か言うと前に出たり引いたりして、最後には何も言わずプルトの街の方にルティアは歩いていった。

 振り返り様に何か光ったが何だったのかソリトには分からず、ソリトも村の方向に歩く。

 途中で少ししてから雨が降ってきたため、ソリトは急いで村にある宿に戻った。

 宿に入ると丁度女主人のおばさんがいた。


「おや?聖女様は一緒じゃないのかい?確かあんたを探しに街に行ったはずだけど」

「街に戻った」


 それだけ言ってソリトは、一泊料金を追加払いしてから階段まで歩いていく。


「何かあったのかい」


 階段を上り始めた時に女主人のおばさんが尋ねてきた。


「……いや特には」

「そうかい?今日は夕飯どうするんだい?」

「自分で作る」

「分かった」


 部屋に戻ったソリトは旅袋をおろして、薬草に調合道具、レシピ本を出して、調合に挑戦してみる。

 初級の調合レシピ本を広げる。

 最初は今ある薬草の中で乳鉢だけで作れる薬があったので、ソリトはそちらを挑戦することにした。

 載っている通りに乳鉢にレシピの組み合わせの薬草を入れてゴリゴリと磨り潰していく。

 そうして一つの小さな丸薬が完成した。


『スキル【見習い薬師】獲得』


【見習い薬師】

 薬の鑑定ができる。

 調合補正1(一段階アップ状態)

 液薬調合補正1(一段階アップ状態)

 スキル効果により調合薬の品質を一段向上する。調合補正、液薬調合補正が2に上昇。


 新しく技能系のスキルが手に入った。

 早速、調合した薬を鑑定してみた。


 回復丸薬 品質 悪い 傷の回復を早める、塗り薬でも効果を発揮する。


 最初はこんなものだろう。品質は粗悪だが完成しただけでも上々だ。

 その後二回丸薬作って今日はそこで終わった。

 陽も落ちていたので食堂に行き夕飯を作り食事にした。

 この時ソリトはルティアを見ることはなかった。


「はぁ」


 ソリトは部屋のベッドに寝転がると自然と溜息を吐いていた。

 言った後だが、あれは一部とはいえ私情が入って悪質な言葉を投げ掛けていた。


『優しいですね』


 ふと、道具屋で言われた言葉を思い出した。


「誰が…女に優しくするか」


 そして、夜はその言葉がきっかけでルティアの事が気がかりになり、ソリトは中々寝付けなかった。

どうも翔丸です。

遅くなりました。


ここまで読んで良かったと思ってくださった方でブックマークしても良いよという方がいらしたらよろしくお願いいたします。

誤字報告、感想もお待ちしてます。

評価☆☆☆☆☆もお待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気を使って修正していただきありがとうございます ですが、1個人の何気ない発言で修正の手間を取らせてしまってすみませんでした。 こちらも発言には気をつけていきます
[一言] 寝る前に読んだからか 何か食べて 苦…って言ったんかと思いました
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