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宿での料理

評価、ブクマありがとうございます。誤字報告も大変助かってます。

今回はちょっとだけ考察有り。

 宿を探すと村には一つしかなかった。

 これでは無駄骨じゃないか、と思っても仕方のないことなのでソリトは心の中に伏せた。


 宿の中に入ると、女主人はソリトを見るなり何か有難いものを見ているかのようなキラキラ輝いた目で近付いてきて、対応してきた。


「宿泊期間は未定だが構わないか?」

「ええ、構いませんよ。ソリト様の頼みですからね」

「様は止めてくれ」

「ソリト様が仰るならそうしましょう!」


 女主人は豪快に笑う。


 この宿を探すまでの間、元の生活行動に戻った村人達は遭遇する度に用もなくソリト様、ソリト様と呼び掛けてくるのだ。

 今は聞くに絶えず飽き飽きしている。

 あの時、聖女に全て押し付けておけば呼び掛けられることは無かったのだろうか。

 だが、今更思っても仕方ないとソリトは首を横に振る。

 一泊分の宿賃を払い、一部屋借りて荷物も聖剣を下ろしてベッドの上で腰を落ち着かせた。

 そのあと、ソリトは「ふぅ」と溜息を一息吐く。


 久々の宿。

 昨日までは野宿だったのだから喜んで良いはずなのだが、どうにも落ち着かない。

 どうしても、自然に意識が隣の部屋に傾き警戒してしまう。


 無理もない。

 ソリトにとって今に至る事になった場所なのだ。例えそれが発端となった宿でなくとも宿という存在が思い出させてしまう。

 何かで紛らわしたい、そう思っていたところで扉をノックする音が三度なった。

 ソリトは扉に近付き開ける。

 訪ねてきたのは宿の女主人だった。


「何か用か?」

「夕食はどうするか何時にするか尋ねに来たんさ」


 何時にしてもどうせ料理は味のしない物になるだろうが、気晴らしにはなるかもしれないとソリトは女主人に尋ねた。


「それなんだが、厨房を借りても良いか?金は払う」

「それは構わないけど、お代は要らないよ」

「いや、食材も使わせてもらう。そうはいかない」

「……分かったソリトさんがそう言うなら」


 了承を得たソリトは後で厨房を借りることにして部屋に戻った。

 何かで紛らわしたいという時に、丁度気晴らし出来る話が来たという事で持ち掛けたがあともう一つ、確かめたいことがあるのだ。




「あっ」

「……いたのか」


 しばらく下に降りると宿の食堂スペースにルティアが座っていてソリトを見つけて気まずそうに俯いて、言葉を返すと無理矢理笑顔を作ってソリトの方を向く。


「宿ここしかなくって」

「………」

「………」


 会話が途切れると、無理矢理作っていたルティアの笑顔も消え、悲しげな表情で俯く。


「俺も探したがここしかなかったな」


 無視されたと思っていたのだろう。ソリトが返事をした瞬間、バッと顔をあげて驚愕した表情で彼を見た。

 ここ数日、ルティアにどうも調子が狂わされると言うか、乱されると言うか、引き込まれると、何とも複雑な感情を時々覚えるソリト。

 人を信じないという意志が刻まれているにもかかわらず、ルティアの場合はどうにもそれが揺らがされてしまっている気がするのだ。

 今だってそうだ。悲しげな表情をした瞬間、放っておくにおけなくなって話返していた。


 おそらく、今無視しても自覚無自覚関わらずに、悲しげな表情に戻るだろう。

 ソリトはもう少し話に付き合うことにして席に座る。


「さっきは宿にいなかったよな」

「あ、はい。村の子ども達と少し遊んでいましたので」

「そうか……これから夕食か?」

「はい……えっと…ソリトさんも?」

「ああ、俺は厨房を借りて自炊だがな」

「ご飯作れるんですね。意外です」

「おい」


 一言返すと、クスクスとルティアが笑顔を浮かべて微笑した。

 元気が戻ったようで何よりだ。その前に一言余計だったが。

 料理は孤児の頃から教会で毎日シスターの手伝いをしながらソリトも作っていた事で人並みには出来るようになっていた。


「あの……ソリトさん」

「何だ?」

「あの……何故離れた席に座っているんですか?」


 今ソリトはルティアの右隣食堂スペース奥の席に座って会話をしていた。


「別に良いだろ」

「……そうですね」


 ニコッと笑ってルティアはそう返した。

 もう十分かと思い、ソリトは席から立ち上がり厨房に向かった。

 厨房には女主人がいた。そこに声をかけて厨房を使うことを伝えて調理を始めた。


 厨房を借りて作ったのはスープとマッシュポテトのサラダにマシュマッシュのキノコ焼きだ。

 憂さ晴らしに行って討伐したマシュマッシュを食事分に解体して少し持ってきたのだ。

 黒大蛇の肉も持ってくれば良かったが、毒息を吐く相手の肉は流石に躊躇った。

 そして調理後、


『スキル【新人料理人】獲得』


【新人料理人】

 調理補助1。(一段階アップ状態)

 料理補正1。(一段階アップ状態)

 スキル効果により調理補助、料理補正が1から2に上昇。


 予想通り技能系の料理のスキルが出た。

 と言ってもまだまだ予想の範疇に過ぎない。何故なら戦闘系スキルの獲得が魔物討伐後に獲得と複雑だからだ。

 ただ、技能系スキル。【新人料理人】や【採取師】は普通に獲得条件が分かりやすい。


【庭師】はおそらくだが、討伐の際に周囲の木を斬り倒していた事もあったのでそのためだろう。

 山の方でルティアを助けた際に流星閃を放った時に木を斬り倒していたが、獲得しなかった。条件を満たしていなかったのだろうと思う。そして、森の方で満たした。

 効果に木の枝の剪定に対してのものがある所から考えるに、木を幾本か斬る必要があったのかもしれない。


 戦闘系スキルは魔物を倒す敵によるのか、倒した本人によるのか。今のところ不明な点がありすぎる。


「……さん、ソリトさん!」

「っ!?」


 考え込みすぎていたらしく、ソリトは呼ばれる声によって意識が戻った。どうやら作り終わってからずっと立ったまま考え込んでいたようだ。


「ソリトさん、大丈夫ですか?気分が優れないなら寝た方が良いですよ」

「ただ考え事をしていただけだ」

「そうですか。安心しました」


 次の瞬間、ルティアの方からお腹の鳴る音がしてきた。その当人は顔を真っ赤して固まってしまっている。


「人の状態に安心する前にまずは自分の腹を安心させたらどうだ」

「言わないでください」

「まだ頼んでないのか」

「……はい。座ったばかりでしたので」


 そして、その直ぐにソリトと遭遇して気まずくなり、会話をしていて注文するのを忘れていたという訳だ。


「……ついでだ何か作ってやる」

「え?」

「悪いが、厨房もう少し借りる」

「ああ、構わないよ」


 女主人に再度許可をもらいソリトは料理を始めた。【新人料理人】の効果を確かめる良い機会だ。


「少し手際良くなってないかい?」


 調理をしていると女主人がそんな事をソリトに言って来た。確かに何か調理がしやすくなっている気がする。

 違和感がそれほどないので本当に少しなんだろう。

 それに気づく女主人も女主人で凄い。


 そして、マシュマッシュの肉厚な身、野菜を適度な大きさに包丁で切ったあと、フライパンを熱して、熱くなったところに油を引いてマシュマッシュを焼いてステーキにし、野菜は鍋にいれた水に加えて沸騰させて調味料で味付けをしてスープにした。

 そして、さっき作って余ったマッシュポテト。

 結局の所ソリトの料理と変わらない。


「出来たぞ聖女」

「ありがとうございます!」


 ルティアは祈りと感謝を捧げた後、フォークを使って肉を食べる。


「んん〜!美味しいです!」


 口に合ったようで、ルティアは肉や野菜スープ、付け合わせの固いパンをスープに浸しながら頬張るようにどんどん食べていく。

 その間に、ソリトは女主人に厨房貸し借り代と食材代を渡した。


「ソリトさんも食べましょ」

「ああ」


 ソリトはさっきの席に座って、口に運ぶ。

 やはり味はしない。自分で作ってもそれは変わらないようだ。

 ルティアを見ていると、本当は不味いのに無理して美味そうに食べているのではと疑いたくなる。


「………」


 食べていると、ソリトはルティアが自分を凝視している事に気が付く。

 すると、ルティアが口を開く。


「美味しくないのですか?」

「いや」


 美味しくもなければ不味くもない。が、どちらかと言えば不味い分類。それが顔に出ていたのかもしれない。


「隣失礼します」

「いつの間に」

「一緒に食べた方がきっと美味しいと思って」

「勝手にしろ」

「はい!」


 ソリトは笑顔を浮かべるルティアと共に食事をする形になりながら食べていった。


「そういえば、そのコート見たことないですね」

「今更か?」

どうも翔丸です。


距離感は離れたり近づいたり?ですね。

自分で書いていて焦れったくなりました。


どうしてやりましょうか。

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ここまで読んで良かったと思ってくださった方でブックマークしても良いよという方がいらしたらよろしくお願いいたします。

誤字報告、感想もお待ちしてます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勇者と聖女がちゃんと勇者と聖女らしくちゃんとした仕事をしてるのを見るの微笑ましいなって思います。単純にそういう作品を多めに見てるだけなんですが。 こういう距離感でもほんの少しずつでも変わって…
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