聖女子会
お待たせしました。
一方その頃。
会議で、探索は冒険者パーティのみにし、依頼は表向きはギルドからとして、費用を各国からという形になった。
騎士が動くとなれば国の守りも手薄となり、感づかれる可能性がやはり大きいという理由だ。
それから会議も纏まっていき幕を閉じた。
その後、シュオンとグラヴィオースは自分達のパーティメンバーと合流してダンジョン島へ向かい、リリスティア達王族女性陣のラルスタ、カロミオ達は、今回の冤罪の無実証明や魔王四将バルデスの件を含めてソリト達を労った宴の準備があるとラルスタ邸を後にした。
そして、ルティア達聖女は、クティスリーゼによって、中央区域にあるカフェ&バー内の奥にある夜のバーで主に使われる個室にいた。
ちなみに、クティスリーゼがこの店を選んだのは、公爵家の令嬢として密談や静かにくつろげる場所がないかリストアップしていたかららしい。
「というわけで、聖女子会を開催いたしますわ」
凛とした表情で、唐突なお茶会宣言を言い放つクティスリーゼ。
声を掛けられ、店に連れてこられてからの宣言と展開に追い付けず、ルティア達は、ぽかんと目を丸くしていた。
「何がというわけなんですか?クティさん」
「クゥちゃんですわ、ルゥちゃん」
「……クゥ、ちゃん。どうして突然〝お茶会〟を?」
「〝お茶会〟ではなく〝女子会〟ですわ!私達聖女は勇者と違い、四人で集まる機会というのは皆無に近い。ですが幸運にも、今ここに四聖女が集まっています。【加護の聖女】レティシア様は今日中には帝国に帰国。ですからその前に、少しでも交流したいと思いましたの」
ルティアの疑問に、クティスリーゼは懇切丁寧に若干熱意が漏れ出た雰囲気で答えた。
ルティアとクティスリーゼは偶然が重なり何度か遭遇して交流する事があった。
リーチェはほんの少しだけルティアと行動を共にしたがそれだけ。
だが、レティシアに関しては全員と初対面だ。
確かにこういった機会がいつまた訪れるか分からない。
「それは分かりましたけど【守護の聖女】とはいえリーチェ様は王女様ですよ」
ここに来ている時点で大丈夫なのは分かるし、クティスリーゼは公爵令嬢なのでそこは抜かり無いだろうが、それでも万が一があるかもしれないと、失礼を承知でルティアは尋ねた。
「そこは大丈夫です。私も聖女の先輩の皆様とお話しがしたかったので。今日は無礼講でお願いします!」
リーチェの言葉を聞いて、ルティアはホッと胸を撫で下ろす。
「では、堅苦しいのはここまでにして女子会を始めますわ」
宣言した後、その前に、と言ってクティスリーゼが店員呼び鈴を鳴らして呼び、紅茶を注文した。
ルティア達もそれぞれ好みの紅茶を選んだ。
暫くして紅茶が配膳され、女子会はリーチェの質問から始まった。
「それで女子会って一体何をなさるのですか?」
「そもそもお茶会と女子会の違いって何なのでしょう?」
「ルゥちゃん説明をお願いしますわ」
「はい、喜んで…って無茶ぶりです!!」
リーチェ、レティシアの順にクティスリーゼに質問するが、質問された本人は突然ルティアに話を振り、反射的にノリ良くツッコミを入れるというグダクダな流れから女子会は始まった。
こんな幸先で良いのか、とルティアは不安を覚えた。
「さて、私やリーチェ様はお茶会で場慣れしてるので大丈夫ですが」
「お茶会って言っちゃいましたね」
「もう、お茶会で良いのでは?」
「ルゥちゃん、レティシア様……女子会ですわ」
「「…はい」」
「とはいってもお茶会は交流して令嬢間で他国の流通、自国での流行、噂と情報収集などで堅苦しい事が多いので今回の女子会ではあまり役に立たないのですけれど」
「じゃあここにいる皆さん女子会は素人と」
「いえ。純粋な交友関係だけのお茶会をする事もあったので私は素人ではありませんわ」
レティシアの解答をバッサリ斬り、この空間を振り回すクティスリーゼ。
「クゥちゃん帰って良いですか?」
「これからだと言うのに帰るなど万死に値しますわ!帰ることは、許されませんの!!」
「めちゃくちゃ面倒なこだわり!!」
既に帰りたくなったルティア。
それを即座に却下しツッコまれるクティスリーゼ。
そんな二人を見て、クスクス笑うレティシアにルティアは気が付いた。
「ルティアさんもサフィラ……」
「クティスリーゼで構いませんわ」
「クティスリーゼ様もとても面白いですね」
「え、えぇ……」
いやいやそんな訳ないと言わんばかりの顔をレティシアに向けるルティア。アルマ帝国は魔族、魔物との戦闘が最前線で続いているので、息抜きになっているだろうし楽しんでいるのは良いことだが、これが女子会なのだろうか?と少し疑問が湧く。
「あの大丈夫でしょうか?」
流れに付いていけていなかったのか、ずっと様子を伺っていたリーチェが口を開いた。
それにルティア達は、大丈夫です、と肯定した。
「女子会を始めるにあたり、まずは皆様の趣味とか好きなものを伺っても宜しいですか?最初はルティア様からで」
「はい。そうですね…趣味は可愛い服でしょうか。好きなものは、中々手を出せないスイーツをご褒美に食べることです」
「私もたまに食べるスイーツは好きです」
「っ!私はシュークリームが好きです!持ち歩けますし、美味しいです。でもスイーツ店って貴族街ばかりで城下町の方で探すの大変なんです」
「分かります。貴族街だと食べたくなった時食べ歩きが出来ないですよね」
ルティアがレティシアと共通の話題で盛り上がっていると、クティスリーゼとリーチェが羨ましそうな会話を同じ話題で広げていた。
「食べ歩き。羨ましいですわ。私の場合、それははしたないと言われてきましたから。買いには行けても持ち帰るか店内でいただくかの二択でしたから」
「私の場合は、王族としてのマナーや学業を学ぶ事が山積みで余り外に出られませんでしたし、スイーツはいつも宮廷料理師の作ったものでしたから、持ち帰りも食べ歩きも凄く憧れます」
「そうなんですのね。……多分外に出られなかったのは別の理由なのでは」
「?」
最後の言葉は聞こえなかったのかキョトンと首を傾げるリーチェ。
だが、隣席だったルティアはクティスリーゼの囁きをはっきり聞いしまい、更にその言葉に同意してしまった。
リーチェは超が付きそうな程の方向音痴なので、同意してしまうのは仕方ないのだが、その内心は申し訳なさで一杯だった。
「それにしてもレティシア様のイメージ的には食べ歩きをしない様な雰囲気なので、意外でしたわ」
「あはは…たまに言われる事はあります。なので、外に出歩くときはいつも変装していたりします」
そう答えたレティシアの表情に、ルティアは翳りを見た。
ほんの一瞬ですぐに明るい雰囲気に戻ったが、辛そうな、悲しそうな感情がスキルではなく素で、ルティアは見えた気がした。
クティスリーゼとリーチェも流石は貴族と王族だ。
正確には分からなくとも、感情の機微には気付いたらしい。
ここで突っ込む事もできるが、レティシアがそれで気を使わせてしまった、女子会を台無しにしてしまったと思わせるのは無粋で野暮だ。
ここは、とルティアは話題を変える為にリーチェに話しかけた。
「リーチェ様のご趣味をお伺いしてもよろしいですか?」
「はい。私の趣味は読書です。特に好きなジャンルは英雄譚です」
「あ、英雄譚なら私も読みます。どんな英雄譚をお読みになるのですか?」
「定番なのだと『竜殺しの軌跡』でしょうか」
「レティシアさんは英雄譚の中で何が好きですか?」
「私は最近東方物に嵌まっていまして『流浪侍』というのが好きです」
「東方物!どんな物語か教えてください」
「はい。良ければ、私も先程の物語を……!」
レティシアは英雄譚も好きなようで、翳りは身を潜め明るさが戻りリーチェと英雄譚に花を咲かせている。
「それで、ルゥちゃんはどう想っていますの?」
「どう…って?」
「勿論、ソリトの事ですわ」
二人とは別に話を始めた途端、クティスリーゼはルティアに突然そんな質問をする。
その表情は真剣そのものだが、声音から少し面白がるような色が視えた。
〝協力関係だった〟事をクティスリーゼは知っている。この聖女だけのお茶会、ではなく女子会という場も含めて考えれば、自ずと答えは一つに絞られる。
つまり、ソリトを一人の男として、深く掘り下げるなら、恋愛対象として思っているのかという事だ。
「あ……え?ええ〜私…え…あれ〜?ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!」
クティスリーゼに問われてルティアは初めて気付いた。いや、気付かされた。
ソリトをどう思っているのか聞かれた瞬間、頭の中がその人物で溢れていき、顔ものぼせたように真っ赤になっていく。
あんな意地悪で無視する人なんか!と思っているのに、思っているにも関わらず、黒大蛇の毒霧の中から救ってくれたり、スタンピードで村に流れた魔物を必死に追って村民を助けたり、滅んだ村の人達の墓を作る優しさ。
当初は知らなかったとはいえ、焦って肩を掴んだ瞬間女性への拒絶反応で強く握られ痛めた手を、回復魔法で治してくれたり、クロンズとの決闘後に理不尽を押し付けられ何もかもを拒絶しようと手の甲を傷付けた直後に罪悪感で手を伸ばしてくれる責任感。
ドーラや子ども、そしてルティアにしても勝手にしろと、お前の行動に興味ないような態度を取っても、何だかんだ料理を作ってくれたり、補助魔法が付与されたアクセサリーをプレゼントしてくれる面倒見の良さ。
他にも義理堅い所や、自分の道を貫き進もうとする姿勢が格好良く、そこが…と語り尽くせ無いほどの思いでルティアの心が満たされていく。
「意地悪と言う割には良いところの方が多いですわね」
「な」
「思いの丈が口に出てますわよ」
「先に言ってください!!」
「ルティアさん、お兄さんが好きなんですか?」
「〝恋バナマジきゅん〟!!」
ルティアの恋愛にリーチェとレティシアが食いついた。
直後、クティスリーゼはレティシアの発言に食い付いた。
「こいばなまじきゅんって何ですの?」
「え、あ…すみません早口過ぎました。今のは恋話間近で聞ける瞬間!!と言ったんです!」
「……なるほど…そうなんですのね」
「ややこしくてすみません」
聖女然とした雰囲気を持つレティシアだが、やはり女の子だ。
〝恋バナマジきゅん〟なんて言葉はルティアも聞いた事がない。
レティシアの言う通り、恋愛話に興味津々な気持ちが昂り舌を捲し立て過ぎたのだろう。
ただ、尋ねた方のクティスリーゼは納得していないと言った表情だ。
どうやら、【天秤の聖女】は発動していないらしい。
反応からしてまたレティシアの気分を落とす件かもしれないと感じたのだろう。
それ以上突っ込んでクティスリーゼは聞くことはなかった。
しかし、ポジティブに取れば可愛いと気付いたルティアはレティシアに話しかけた。
「レティシア様ってちょっと抜けてるんですね」
「そんな事は」
「言い間違えるのは抜けないと?」
「ルティア様って聞いた印象と違って意地悪なんですね」
レティシアはムッとした顔で見てくるが、その瞳は楽しそうだ。
「最近よく言われますけど本当にそんなに違いますか?」
「全然違いますね」
尋ねた瞬間、レティシアに即答された。
「……リーチェ様も、ですか?」
「はい私も防衛戦前は聞いた印象通りな感じがありましたけど、地下水路で出会った時は真逆な程に」
「何処かの誰かさんのようですわ。でも私はそんなルゥちゃんも大好きですわ〜!」
状況に乗っかり飛び込んで来るクティスリーゼに対しては、ルティアは少々ムカっと来た。
椅子から立ち上がると、椅子を持って一歩下がった所で振り返り、椅子を持ち上げ、クティスリーゼに直撃する位置に構えた。
「え?」
クティスリーゼは思考停止したように目だけ開いたまま固まり、椅子に一直線に落ちていく。
しかし、ルティアは直撃ギリギリの距離の所で椅子を横に退けた。
まさか椅子を退かすとは思ってもいなかっただろう。
床に落下した瞬間、パチンと力みのない大きく透き通った音がカフェ&バーの個室に響き渡った。
もしかすると、外にまで届いているかもしれない。
それ程までに見事な音を奏でた公爵令嬢は、その場で体を丸めて悶絶している。
そして、余りの出来事にリーチェとレティシアは呆然としていたが、ふと我に返るとクティスリーゼの側へ行った。
「お怪我はありませんか?」
「凄い音でしたが、体に異変はありますか?」
「精霊よ、大いなる癒やしを〝ツヴァイブ・ヒール〟これで痛みも引きましたよね?クゥちゃん」
リーチェとレティシアが心配している時に、ルティアはクティスリーゼに回復魔法を掛けて、完治したかの有無を伺う。
笑顔を浮かべて入るが、その内には圧が籠もっていた。
「ルゥちゃんが最近冷たいですわ」
「最近ではなくずっとです」
「ハグは一般的なスキンシップと聞きましたわ!」
「クティスリーゼ様のは、雰囲気もあって過激すぎるかと…」
レティシアが間に入ってはっきり言った。
それに対してルティアは力強く頷いた。
「私は貴族令嬢です。本来はこのような行動や言動は慎むべきものですわ」
突然語りだしたのは、自分の事を省みるような内容だった。
どうやら今回は本当に反省したようだ、とルティアはホッと息を吐いた。
「それでも、私は殿方よりも同じ令嬢、女性が好きです。可愛く、可憐で、儚く、美しく、そして逞しい精神を持ち併せている。そんな女性の会話する姿、お茶を楽しむ仕草と笑顔。大変素晴らしく尊いですわ!」
「クティスリーゼ様?」
レティシアが声を掛けた瞬間、クティスリーゼが彼女に顔を向けた。
「ですが、私は!女性とそれ以上に触れ合いたいのですわ!同性だから出来る、同性だから口に出来る事を、聖女という対等の立場、無礼講を使ってしたいのですわ」
熱く語り出すと、レティシアに体を向けて、両手を伸ばしながら近付いていく。
目は獲物を狩る肉食獣のよう。
手は指をいやらしく動き、レティシアの戦闘用に仕立てたであろう紺色の修道服にある乳袋と軽装によって押し上げられた豊満な胸に向かっている。
「ク、クティスリーゼ様!」
「ぐへへ、良い乳房をぶら下げていますわねぇ」
「何か視線が、視線がいやらしいです!」
レティシアは胸を腕で隠しながら後ろに退いていく。
「その羞恥心に染めた表情良いですわ!」
しかし、それも彼女には舌舐りする極上のスパイスの一種でしかないようだ。
「リーチェ様、レティシア様に防御魔法を掛けてください」
「は、はい」
「遅いですわ!」
そう言って、クティスリーゼはレティシアに向かって突っ込む。以前と手はいやらしく蠢いている。
「っ…お止めください!」
レティシアは手が触れる直前で右に回避した。
直後、ぶるんぶるんとレティシアの胸が上下に揺れる。
その時、クティスリーゼが目を見開き笑みを浮かべた。
「揺らしましたわね」
意味深な言葉を言った瞬間、彼女の右手があり得ない曲がり方でレティシアの方へ伸び、そして、むにゅ、と胸を揉んだ。
「あっ…ふ…」
艶っぽい声と息がレティシアから漏れた。
すると、クティスリーゼはレティシアの背後に周り瞬時に胸の揉み手を左手に変えて、右手で左胸を揉みだした。
「はぁっ…あっ…んっ…ひぅんん!」
必死に手で覆い我慢しているレティシアの口から、激しく焦らす様に揉みしだかれる度に小さく喘ぎ声が漏れ聞こえる。
そんな二人の姿をルティアは飲めり込んだように集中した様で見ている。
同じ女性の筈なのに、目の前の出来事をあと少し見ていたいと、可笑しな気分になっていた。
対して、リーチェは白目を向いて立ち尽くしていた。
十四歳の子どもにはまだ早かった。
「指が沈み込む柔らかさなのに張りがあるなんて…最高ですわ」
「し、真剣に…あん!語らないでくだしゃい。それより…ルティアさん、んんっ、たすけて…」
「ハッ、そうでした。今助けます」
「あら。近付いたその瞬間、今度はルゥちゃんの番ですわよ?重量感も凄いですわね」
レティシアは助けるが、クティスリーゼに揉みくちゃにされるのは嫌。
しかし、このままではレティシアが犠牲になるだけ。
なのに、もう少しだけ見てみようという邪な考えがチラチラと過ぎる。
早くしないと可笑しな扉を開けてしまう。そして、その元凶は目の前でレティシアの胸を心地良さそうに堪能している。
「……あ……分かりました。私を好きにしていいのでレティシア様を離してください」
「それは…だめ」
「大丈夫です。私は聖女ですから!」
「イミフで…意味不明です」
「さあどうぞ!」
ルティアはクティスリーゼを迎え入れるように腕を大きく広げた。
「ゴクリ。では……遠慮なく、いただきますわー!」
目をハートにしてクティスリーゼが凄まじい勢いでやって来る。
そして、またギリギリの所で右に避けた。その直後、ルティアは自ら胸を揺らした。
「揺らしましたわね!」
口にした瞬間、クティスリーゼの右手がレティシアの時の様に不可解な曲がり方をしてルティアの胸に伸びる。
だが、その左手はルティアに手首を掴まれて止められた。
「来ることが分かっていれば、対応出来るんです!」
「私の揺れ動く柔手が!」
「そして【天秤の聖女】のクティスリーゼに代わっておしおきです!」
ルティアはクティスリーゼの右手を引いて、自分の方に勢いよく引き寄せ、右手を開いて引き構えた腕を彼女に向かって突き出した。
「クティスリーゼ直伝、鉄掌制裁!」
突き出された掌はクティスリーゼの顎を突き上げ、同時に右手首を掴んでいた左手を離して、軽く突き飛ばした。
「ま、まさか私が教えた技でやられるなんて…思いませんでたした…わ」
「久しぶりに会った日に言ったじゃないですか。素晴らしい師に会えたってあれクゥちゃんなんですよ」
ソリトと出会うずっと前に、しつこく何度も関わってきた聖女がいた。
それがクティスリーゼ。
ある日、自主的に魔物を討伐していた時に「格闘術を覚えませんか?」と茂みから突然現れたクティスリーゼに言われたことがあった。
結構です、とルティアは冷たく即答で断ったが、その後。
「それでは死にますわよ」とはっきりと断定して言われた瞬間足を止めた。
「剣を失った時に使えるのは自分の体だけ。その時近接格闘術は役に立ちますわ」と、言われたその時のルティアは説得され、クティスリーゼに指導を受けた。
ルティアが放った技はその時教えてもらった一つ。
ただ、クティスリーゼのは武技では無いので過信はしてはいけないと言われているので、使い所に困っていた。
「なるほど。でも、それにしてはかなり容赦がないように見えましたが」
「こう言う人ですから」
「確かに」
レティシアが苦笑しながらルティアの返答を肯定した。
「女子会どうしますか?」
「リーチェ様を起こして三人で楽しみましょう」
「そうですね」
そして、ルティアはクティスリーゼを椅子に凭れかけさせ、レティシアが立って気絶していたリーチェを起こして席に戻った。
「あの、ルティアさん」
「なんですか?レティシア様」
「その前に様は止めませんか?私普通の村人ですので」
「では、レティシアさんと」
「はい」
「でしたら私もリーチェ様ではなく、〝ちゃん〟か〝呼び捨て〟でお願いします」
「「申し訳ありません」」
「で、ではせめて、〝さん〟付けで」
「出来ません」
「恐れ多いです」
「………では、王女命令です!〝ちゃん〟付けで呼びなさい」
そう言われればルティアもレティシアも断れない。
「リーチェちゃん」
「はい。レティシアさん」
「………」
リーチェは今か今かとルティアに呼ばれるのを待ち構えている。もしかすると案外ずる賢いかもしれない。
「リ、リーチェ…ちゃん様」
「ちゃん様!?」
「ちゃん様ウケる!」
「え?」
「へ!あ、いえこれは私が幼い時に両親が言っていたのを覚えてしまって時々出てしまうんです。私も意味はわからないのですが」
「そうなんですね」
「それより、ルティアさんはソリト様に恋をしてるのですか?」
「そうでした!」
ルティアは有耶無耶になっていたと思っていたが、レティシアの中ではそうでもなかったらしい。
もう好きだと言ってる様な事を口に出してしまっているので避けて通れないが、恥ずかしいものは恥ずかしいのである。
「そんな気になります?」
「当然じゃないですか!?戦場で後方支援にあたる日々で色恋沙汰には関わりがないのですから。それに聖女なら尚更です。でもルティアさんはソリト様に恋をしている。聞かないわけがないじゃないですか!」
「私もルティアさんの恋の話を聞きたいです」
何度も恋を連呼され恥ずかしさが増したルティアは真っ赤になった顔を両手で隠す。
その間も熱い視線が刺さる。
女の子は基本的に恋バナが大好きなのだ。
意を決して、ルティアはゆっくりと深呼吸して口を開いた。
「分かりました。私の主観ですけど、お話します」
そして、ルティアは顔を真っ赤にしながら一つ一つ語り始めたのだった。
どうも、翔丸です。
やっぱり聖女子会の回をそのまま続けて書いたら筆がなりまして、最後まで書いてしまいました。