異常な拒絶
いやいや一瞬、間違って昨日投稿してしまいました。
『グリムバードを討伐により全能力が上昇します』
翌朝。起きて早々にソリトは大鳥の魔物、グリムバードを討伐した。
特にスキルを得ることはなかったが【解体師】のお陰で解体も今までよりもしやすく、素材の質も向上した。
売値もそこそこ期待できるだろう。
街に着いたソリトはギルドで討伐した魔物の素材を査定してもらい銀貨五枚を獲得した。
「あの」
ソリトは今日の予定を考えながら歩く。
「あの!」
自分だと思っていなかったソリトはギルドを後にしようとした瞬間、肩を掴まれ呼び止められた。
直後、
「俺に触るな!!」
反射的に勢い良く振り返り、激昂した声と共に掴まれた手を弾き掴み返した。
周りがざわついてソリト達に視線を向ける。
そして、掴んだ手は白の装飾された司祭のようなデザインの服を着た少女、ルティアだった。
今にも彼女は泣きそうだった。それを見てソリトはかなり力強く掴んでいたことに気付き咄嗟に手を離す。
「…悪かった」
「いえ、私も……すいません」
掴まれた部分を押さえて、思い詰めてと複雑になった苦痛の表情だ。
ソリトも正直驚いていた。激しく拒絶するなど思ってもいなかった。
しかし、今考えればなるほどと納得出来てしまう。
忌々しく思い出したくもない記憶だが、それだけの事があったと思えば当然なんだと。女を拒絶するのは必然だと。
それでも、考えるだけで気分は心底悪かった。
「悪いが後から外に来てくれ」
周囲を見渡すと視線を向けてざわつく者が多い。これ以上は不味いとソリトはルティアに聞こえる声量で囁いてギルドを先に後にした。
ギルドから右に曲がって少し離れた所で待っていると、少ししてからルティアが外に出てきて、キョロキョロと探すとソリトを見つけて走ってきた。
「お待たせしました」
「悪いな」
「いえ、それで…」
「悪いが掴んだ手を出してくれ」
少し震える手を恐る恐るといった感じで前に出してくれた。
あの一瞬で手首近くに跡が出来ている。そこにソリトは手を翳し唱える。
「〝アインス・ヒール〟」
一段階アップしている初級回復魔法をルティアの手に掛けると痣が消えていく。
その時、「え?」という声が聞こえたが、気にせずに回復魔法を掛け続け、痣を消した。
「ありがとう、ございます」
「じゃあな……」
「あ……ま、待ってください!」
ルティアが呼び止めるが、ソリトは聞くことなく歩いていく。
その声は近づいてくることはなく、徐々に小さくなっていった。
拒絶されたのだから、思うところはあって当然だろう。
別れた後、ソリトは武器店にやってきた。
ソリトは奥にいる刈り上げ頭の筋骨隆々な店主のいるカウンターの方へ行く。
「防具がほしい」
「予算は?」
「銀貨二百枚ってところだな」
「要望は?」
「敏捷を活かせる装備だな」
以前は人数がいたため、鎧装備だったソリトだが、今は一人。戦闘スタイルも逆転したものに変わるのは必然だ。
動きにくい装備は単独では邪魔になる。動きやすく軽い装備が適切だと考えた。
それに今は鎧を置いてきたこともあって、上は黒いタートルネック、下はブーツに黒のズボンと戦闘面では心許ない見た目だ。
「そうだな………」
武器屋の店主は幾つか要望に合ったもの近いものを幾つか揃えソリトに見せた。
しかし、これといった物は見つからなかった。
「……値段は張ることになるがもう一つある。見てみるか?」
「ああ、頼む」
武器屋の店主は店の奥に消えた。
それから一分程して店の方に戻ってくると、その手には四方形の黒い箱を持っていた。
カウンターに置き、側面を持ったまま店主は箱を上げて開けた。
その中には見たことのない一枚の黒混じりけの赤い服が入っていた。広げると、腕袖が肘から下までで、襟後ろにはフードが付いている。
「服?」
「ああ、知り合いの商人が持ってきた物でな。バトルジャケットという防具らしい」
「ただの上着にしか見えないが」
「見た目は、な」
何処か含みのある言い方をして店主は説明してくれた。
このバトルジャケットにはとある蜘蛛の魔物の糸が使われてるらしく、その糸は火や熱、斬撃にも耐え得るという。
さらに僅かだが蜘蛛の魔物の糸には魔力に耐性を持っているという優れものだった。
店主が言うには何処かの遠い異国のものらし。
どうも翔丸です。
なんだかんだ非情になれず甘い部分が出るソリトでした。
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