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蹂躙愛  作者: LaDole
4/7

4 休息

ガチャ


「ただいまぁ……」

最悪の気分のまま自宅のドアを開く。

「お帰り」

妹の千栄がスマホを弄りながら出迎える。

「晩飯は?」

「カレー。着替えたらすぐ降りて来て」

「分かった」

千栄は一階のリビングへ向かい、俺は二階の自室へ着替えに行った。



「はぁ〜〜」

疲れた。

制服を脱ぎ捨てながら今日あったことを思い出す。

「……」

悪魔に出会い、彩と新たな関係を結び、歩と決裂した。

あまりにも膨大な情報量に頭を抱えたくなるが、全て受け入れなくちゃいけない。

「とりあえず飯を食おう」

その後風呂に入ってすぐに寝よう。それが良いはずだ。



「で、久し振りの学校はどうだった?」

食卓についた瞬間、「いただきます」も言わぬまま千栄が聞いてきた。

「学校は勉強遅れてるから頑張らなきゃなーってことぐらいだよ。あっ、いただきます」

「いただきます。勉強はって……他に何かあったの?」

「うーん、人間関係?」

「事情が事情だからみんなよそよそしいって感じ?」

「まぁ、そんな感じ」

「ふーん」

興味なさげだと思ったけどそうでもないな。もしかしなくても兄思いの良い妹なんだろう。

「大丈夫なんだよね」

カレーをすくいながら改まって言ってくる。

「あぁ、心配するな」

両親共に同じ食卓を囲んでいるが、口を出してこない。別に構って欲しいわけじゃないが、内心どうなんだ?息子が病んで復帰したんだから声くらいかけるのが普通なんじゃないのか。

だからと言って俺から親に言うこともない。仲が悪いわけでは無いのだが、距離が遠い。

今年の父の日と母の日くらい何かするか……迷惑かけたし。

「あっ……」

「どうしたの、カレーぶちまけた?」

「ぶちまけてねぇよ、見たらわかるだろ。ちょっと忘れてたことを思い出しただけだ」

5月10日って……今日、母の日じゃん。

いや、病んでたから忘れてたのは仕方ないにしてもマジかぁ。何も準備してない。「いつもありがとう」くらい言った方が良いのかぁ?

「……」

普通に恥ずかしいな。

高校生でそれは……。

「スプーン止まってるよ」

「あぁ、悪い」

考えることをやめて完食する。

「ご馳走様でした」

食器を片付けて足早に自室へ向かう。

「お兄ちゃん」

俺が部屋を出る直前に呼び止められる。

「何だよ」

「何か言うことあるんじゃないの?」

「……」

何で気付いてるんだよ……。

話の流れ的には母の日のことだろうなぁ。

「……母さん、いつもありがとう。あと、迷惑かけてごめん」

「良いのよ別に。子供に手がかかることくらい当たり前。成長すればいいわ」

黙々とカレーを食べていた母は俺の目をちゃんと見てそう言ってくれた。

「ありがとう」

この言葉は母と千栄に向けた言葉だ。



それからはすぐだった。

いつも通り風呂に入って、いつも通りに寝た。

明日、彩に歩のことを話してみよう。勿論、歩が彩のことを好きっていうのは伏せておいて——




「何か隠してるでしょ」


次の日の朝、約束通りの時間に夜淵家の前に来て挨拶を交わした後すぐに歩の話をしてみると一瞬でバレた。

「え、いや……」

「3秒ルール」

彩が俺の顔を覗き込むようにグイッと近づいてくる。

俺はすでに目を逸らしているので負けだ。

「さぁ、何を隠しているのかしら?」

「……歩が、彩のことを好きってこと」

もう隠せないので渋々言うと、

「なんだ、そんなこと?」

そんなことって……。

「私のことが好きな人なんてごまんといるのだから、驚くようなことじゃないわ」

王者の風格である。

「それと確認しておきたいんだけど、俺達の関係って大っぴらにするのか?」

「隠したいカップルがこうして一緒に登校すると思う?」

愚問だった。

ここは歩の通学路でもあるので正直ヒヤヒヤしている。


「それよりも球技大会、どうするつもりなの?」

「どうするって……。やるしかないだろ」

歩と対戦することになったら文字通り"死球"が飛んできそうだが……。

「デッドボールでも浴びせられようものなら私が腰を上げるけど?」

「何するつもりだよ」

「制裁」

彩なら本当にやりかねない。

「……悪いけどそれはやめてくれ」

「何故?」

「俺が勝ってあいつの心を折ってやれば何の問題もないだろ」

「へぇ〜、じゃあ期待しておくわ」

馬鹿なことを言っているのは分かっている。相手は野球部のエース。まぐれでも勝ち目は無いだろう。

「今日あたり、接触してくると予想するわ」

「根拠は?」

「女の勘よ」

「はっ……」

これほど信じられるものも無いだろう。



午前8時

そんなこんなで学校に着くと、自分の下駄箱に手紙が置いてあった。


『放課後グラウンドに来い』


「……」

誰だよこんなアニメみたいなことする奴。

……まぁ、歩しか居ないんだが。

「女の勘すげぇな……」

彩の予想は見事に的中したようだ。

ここまで読んで下さりありがとうございます。

雑談パートです。特に内容について話すことは無いですが、慎二と彩の会話は書いていて楽しいですね。次回は慎二と歩の話になりそうです。

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