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ギフト~学生異能捜査官~  作者: 雅楽なぎさ
第1章
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第02話

「え……」

「あら?」


 秋真の頭に浮かんだのはまず疑問と混乱、そして混乱で固まる体。

彼とて思春期真っ盛りの健康な男子生徒だ。漫画で見たことのあるラッキースケベの典型、扉を開けたら着替え中の美少女が!なんてあったらいいな、と妄想したこともある。だが現実はこうだった。ラッキーなんて思う前に体が動かなかった。


「ごめんなさいね。鍵を掛け忘れていたみたいだわ。悪いけれど着替え中だから、少し外で待っててもらえるかしら?」

口元には緩く笑みを浮かべて少女は秋真に声を掛ける。


 彼女の口から出たのは、予想に反して叫び声でも怒声でも無かった。穏やかすぎるその声を聞いて固まっていた秋真の体は漸く動き出した。


「す、すいません!」

慌てて扉を閉めると扉を背もたれに頭を抱えてへたり込む。


やってしまった……


 外で顔を赤くしてへたり込む秋真とは対象的に、何事も無かったかのように少女は着替えを続けていった。





 同日、捜査部部室内。


 暫くの後、入室を許された秋真は着替え終わった彼女と対面していた。


 落ち着いて室内を見てみると予想以上に広い部屋だった。落ち着いた色合いの壁に、先程も見えた来客用のソファーと机。それに数人分の事務机とその上に置かれたパソコン。壁には大量のファイルが置かれたキャビネット。更には冷蔵庫もあった。


「それでは改めて……捜査部にようこそ。日番谷秋真君。私は2年で部長の椎名白雪よ。宜しくね」

そう言う白雪の服装は制服ではなかった。


 喪服を思わせる真っ黒なワンピースに黒いストッキング、黒いレースの手袋。腰まで伸びる長い髪は緩くウェーブの掛かった黒色。僅かに見える肌は透き通るように白く、陶器のように滑らかだった。恐ろしく整った小さな顔に、大きな瞳。現実味のない美人と形容するに相応しい彼女だったが、身に纏う緩い雰囲気や、目尻の下がった垂れ目と泣きボクロが可愛らしさを演出し、奇跡的な調和を果たしていた。


「……え?俺名前名乗りましたっけ?」

白雪に見惚れていた秋真は漸く我に返り、問いかける。


ここに来てすぐあの騒動で混乱していたが名乗ってはいない……はずだ。

思わず白雪の下着姿が思い浮かんだが頭を振ってそれは四隅に置いておく。


「名乗ってはいないけど知ってはいるわ。日番谷秋真君、今年入学の1年生。県外の市立中学を卒業後、ここに入学。中学三年の夏に事件に巻き込まれてご両親は亡くなってるのよね。ギフトを授かってしまった貴方は、自身の家族を殺した犯人を見つけるために異能捜査官になることを希望。そして学生異能捜査官を認めているここ、赤枝高等学校捜査部に来た……。違うかしら?」


 それを聞いて凍りつく秋真。

思い出すのは母親の叫び声と父親の断末魔。そして一面に広がる赤い血の海。


 脂汗浮かべて凍りつく秋真を、白雪は変わらずニッコリとした笑顔で見つめていた。


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