第01話
4月中旬、都心部、国立赤枝高等学校内。
入学から暫くの時が経ち、浮かれる学生達も落ち着きを取り戻し始める頃。
1人の男子生徒が捜査部と書かれた小屋の前に立っていた。
彼の名前は日比谷秋真。新品らしくシワや汚れのない制服を着た彼は、今年度入学した新入生である。
捜査部、という部活を探して彼がたどり着いたのがここだった。
「ここが……捜査部?こんなところにあるのか……」
そう思うのも無理はないだろう。ここは学校の敷地内にある離れの小さな小屋。
数年前に開校した国立赤枝高等学校。8階建ての近代的な校舎と若者受けするオシャレな制服に自由な校風。特に校舎は新設校である以上新しいのは当然であるが、制服を着た学生が出入りしなければどこかの企業と言われても通じるほど校舎らしからぬ立派さを醸し出していた。
それと対比してしまうと……。
勿論ボロボロの古い小屋というわけではない。プレハブ建てではあるがしっかりとした作りをしているようだし、穴が開いてるわけでもない。電線があるところを見ると電気もちゃんと通っているのだろう。
ここは敷地内の離れにある。全ての部室が校舎内にあるこの学校で、当然捜査部の部室も校舎内にあると思っていた。当初校舎内を探し回った。だが見つからず、仕方なく教師に場所を聞いてここを見つけたというわけだ。
「まあ、時間は掛かったけどこれで漸く第一歩、だな」
暫く呆然と小屋を観察していた秋真だったが意を決して扉の前に立った。
彼はとある目的の為にこの高校を受験したのだ。
赤枝高等学校は生徒の目的に合わせた教育を行うという理念の基、進学を望めば特進クラスのような、就職を望めばそれ相応の専門教育を受けられるのだ。それによる生徒の進学、就職率は有名校に引け劣らない。更には校舎は綺麗で新しいし、制服はオシャレで人気も高い。こういった理由から赤枝高等学校の入試倍率はなかなかのものだった。
だが、秋真の目的は就職でも進学でもなく、また校舎や制服といった理由でもなかった。ここにしかない部活。そう捜査部に入るためにこの高校に進学したのだった。
「……よし!失礼します!」
気合を入れ直して勢いよく扉を開ける秋真。
まず目に飛び込んできたのは、プレハブ建てとは思えない綺麗に整理された室内。豪華そうなソファーに机。その奥には整えられた複数の事務机。
そして、着替え中と思しき下着姿の美しい少女の姿だった。