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悪役令嬢、爆誕

 私の幼馴染みであり親友のファナが森で行方不明になった。


 彼女は数日後、無事に帰ってきたけれど、それからと言うもの、なんだかボーッとしていて別人のようだった。


「私ね、恋をしたのよ!」


 それは突然の宣言だった。

 彼女は私が唖然とするのを聞こえてないと捕らえたのかもう一度言う。


「私ね、恋を────」

「あー、はいはい分かってる分かってる。

 こいね、こい。

 池で泳いでるの見ると和むよね~。」

「そっちの鯉じゃないわよ!」

「わざと事故を起こしたとか?」

「それは故意! いい加減にして!」


 そう叫ぶと親友は地団駄を踏む。

 こらこら行儀悪いぞ。


 こんなこと失踪前ならしなかったのに。

 これが濃いの魔力というやつだろうか。


「そうじゃなくて恋したっていってるの!

 男の子に私はアイラブユー、の恋!」

「いや私はアイラブユーって、自分のこと二回言ってるし……

 まぁいいや。で、相手はどんな人なの。」

「んー、とねぇ……」


 散々ボケ倒したのに呆れて会話を止めないところを見ると、相当話したい内容なのか、ファナは人生最高の思い出でも噛みしめるかのようにうっとりとした目で相手の特徴を挙げ始めた。


「まず髪が黒くて……」

「うん。」

「筋肉がガッチリしていて……」

「うん。」

「そして何より優しいの!!」

「へー。」

「ちょっと聞いてる!?」

「聞いてる聞いてる。聞き流してる。」

「聞いてないって事じゃない!!」


 まぁ、わざと興味ないような態度を取ったけれど、正直意外だった。

 彼女は恋に恋する17歳、という感じで実際に男の人と話したことがほとんどないことは親友の私がよく知っていた。


「よかったね。」

「うん、よかったの!!」

「うれしかったんだ。」

「うん、うれしかったの!!」

「でもその恋難しいと思うよ、オススメしないよ?」

「え、どうして?」


「だってあたしら……」


 そう、親友の恋には一つ問題があった。



「だってあたしらエルフじゃん。」



「ん……?」


 いや、ポカンとしないでよ、聞こえていたでしょ。


「だってあたしらエルフじゃん。」

「聞こえてたけど、その上で、ん……?」


 もぉ、何言ってるんだこの子は、これはいちから私が説明しなければ……


「まず、大前提としてあんたが恋してるのはニンゲンの男性って事でいいんだよね。」

「当たり前でしょ?

 エルフの男の人は皆殺されちゃったし、オークなんかに恋するはずないじゃない。

 そもそも黒い髪って言ってるんだから、金髪しかいないエルフや髪の毛のないオークは有り得ないでしょ。馬鹿なの?」


「うん、私が馬鹿かどうかは置いといて次の質問ね。

 さっきあんたが言ったようにエルフの男は皆殺されちゃったけど、それはニンゲンのせいであって、ずっと私達はニンゲンと敵対している。そうだよね?」

「何今更確認して、常識じゃない。からかってるの?」


「うん、私があんたをからかってるかどうかは置いといて。

 あんたの両親は昔ニンゲンに殺されてるし、そのせいで私のママが家長である「シャロット家」で、私達と長年暮らしている。そうだよね?」

「そうね、シャロット家の人たちにはとても感謝しているわ。」


「うん、じゃあおかしいじゃん。」

「ん……?」


 まだ理解してないのか、この子は。


「なんであんたは宿敵であり親のカタキであるニンゲンへの恋なんて堂々と宣言しちゃってるわけ?」

「え、だって好きなんだもん。」

「……」


 恋は盲目と言うけれど、ここまで盲目になることがあるのだろうか。

 正直ニンゲンは私が憎む生き物四天王のラスボスだったので、どうもファナの言うことは理解できなかった。


 ニンゲンてあれだ、滅びればいい。何でもいいけどとりあえず酷い目に遭って滅びればいい。


「そもそもあんた、そのニンゲンとはいつ会ったの?」

「ああ、森で迷子になったときよ。」

「えぇ……」


「ホントはねホントはね、彼を見た瞬間ズキュンていうかドキュンていうか、なんか矢で刺されたっていうか、そういう感覚で……」

「え!? やっぱり襲われたの!? 怪我してない!?

 ほらやっぱりニンゲンは危険じゃん!!」


「違う違う、心がよ心が。ハートと心臓を同時に刺されたみたいな。」

「ハートと心臓って、それだとあんた大切な循環機関二回貫かれてるよ……」


「感覚よ感覚!! まだ貴女には分からないかしら……

 これきっと一目惚れってやつよ!!」

「おいおいまじか。」


「それでねそれでね、帰り道が分からなくて困っていたとき休む場所を提供してくれたり、彼が分かる道まで案内してくれたりしたの!」

「え!? ニンゲンの領地まで迷ってたの!? しかももしかして家に上がったの!?」

「うん。」

「それって凄く危険じゃん!!」


 それを聞いて鳥肌……は立たない、エルフだから。

 でも冷や汗が出る。もしかしたら森で迷ったファナは、永遠に私の前から消えていたかもしれないのだ。


「ていうか、それ相手がニンゲンじゃなくてもそれってすごくデンジャラスだよ!!

 メイドのアリシアがいってたよ! 同じ部屋で男女が二人きりになったら男はオオカミに変身するって!!」


「はい? エルフやニンゲンがオオカミになるわけないじゃない、アリシアにからかわれたのよ貴女。

 それに彼はエルフの私にも優しくしてくれた凄くいい人よ?」

「エルフって事隠さなかったの!? よく殺されなかったね!!」

「だからいい人なんだって言ってるじゃない。」


 ん? まてよ、少し違和感があるぞ。

 私はファナが森から戻ってきたときのことをよく思い出してみる……


「あんた、この時期出かけるとき必ず耳当てしてるよね?」

「うん、私が寒いの苦手なの知ってるでしょう?」

「で、迷子から帰ってきたときもしてた。もしかして迷子の間ずっとしてたの?」

「そうね。」


「じゃあ、相手はあんたがエルフだって気づいてないんじゃないの?」

「あっ……」


 そうだ、ニンゲンと私達エルフは不覚にも「見た目だけなら」1000歩譲ってなんとか似てなくもないと言えるかもしれない種族である。

 この美しくとがった耳さえ隠してしまえば、愚かなニンゲン相手ならなんとか正体を隠せないこともないだろう。


「でも……」

「でも……?」

「でも好きなのぉ~~!」


 何だろう会話していて凄く疲れる。

 シャロット家の箱入り娘(自覚はある)であらせられるこの私は、普段ママやファナ以外にはメイドや従者くらいしか話し相手がいなかったので、話の通じない相手との会話には慣れていなかった。


「そのニンゲンは絶対危ないよ、ファナ……

 諦めて別の恋やら仕事やら趣味を探そうよ……」

「いいえ、私決めたの!! 必ず私はあの人と幸せになるの!!」

「またそんな飛躍した世界まで自分の妄想をトリップさせて……」


 ダメだこりゃ、完全にお手上げ。

 恋する少女は無敵である。


 こうなったら時が立つのを待ってファナには、ニンゲンとのこの忌々しい恋とやら(あくまでも認めない)を忘れてもらうしかない。

 それまで私には憎む相手のいいところを散々聞かされるという酷い生活になりそうだが……


「実はね……また会う約束をしているの!!」

「はぁ!?!?!?」


 いやそれはダメだろう!! 前回の接触は恐らくファナがエルフとばれなかったための奇跡的生還といっても過言ではないだろう。

 次会ってファナがエルフとばれたら、きっといや絶対にそのニンゲンに殺されてしまう。


「ダメダメダメダメ! 絶対ダメ!!」

「でも約束は破れないわよ。受けた約束は必ず守る、シャロット婦人もよくおっしゃってるでしょう?」

「うっ……」


 それを言われると痛い。何せシャロット婦人とはつまり私のママのことだ。


 美人で若々しい自慢のママだが、約束を破ったときだけはドラゴンも恐れる大魔神に変身する。

 6歳の頃のあれは幼少期二番目のトラウマである……


 ちなみにぶっちぎりの一番は言いたくないし思い出したくない。


「で? その不届きも……彼とはいつ会う約束をしてるの?」

「明日よ。」

「明日、へぇ明日……明日!?」

「何度繰り返すのよ。」


 ちょっと待って、一週間いやせめて5日あれば何かファナを行かせないための説得を出来るかもしれないが、明日となると話は別だ。

 このメルヘンちゃんは一晩耳元でささやき続けたって止まらない。


 普段ぼんやりしてるのにこうと決めたら変えないのも幼馴染みのあたしがよく知っている。

 要するに頑固なのである、石のように。


「そ、そうなんだ行ってらっしゃい……」

「ということで明日の夜こっそりお屋敷抜け出すからよろしくね!」

「う、うん……」


 私はファナを止めなかった。否、止めれなかった。

 あんなキラキラした目をしたファナは初めて見た……


 しかし私にだって考えがある。

 シャロット家長女の名にかけて、どんな汚い手を使ってでもファナとそのニンゲンの仲を引き裂いてやる。


 これは彼女のためなのだ、仕方がない。

 え、私完全に悪役? それならそれでかまわない。



 覚悟しろニンゲン……いわゆる悪役令嬢となったアタシに勝てるとは思わない事だ……!!

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