プロローグ~想像の世界に迷い込んだ創造主~
想像してみて欲しい。
自分が描いた世界が現実になったって気分を。さぞや楽しい想像ができるであろう。
自分が描いた、現実には存在しえない自然の風景。現実に存在しえない常識、異能…そして、死を運んできた、獲物を捕らえんとする狩人の目をした未知なるモンスターの群れ…はっはー、楽しすぎて色んなところから汗が拭いてやがる。
そう、今俺の目には、俺が空想に描いていた世界が映ってる。
初めて見るが、それらへの知識はある。だけど、実際にこの目で見れるなんて、考えもしなかったのだ。考えを表に出そうものならほぼ間違いなくカウンセラー行きだろうが。
四方に広がる木々と、その奥からやってくる紫の肌を持つ人間型のモンスター。そして、へたり込んでる俺に背を見せる、眉目秀麗って四字熟語を絵に描いたような、切れ長の瞳を持つ、絶世の銀髪碧眼美女。身の丈ほどある長剣を構え、モンスター達を睨む。
双方動かない。しかし、モンスターの群れの一匹がジリッ…と足を動かした音をきっかけに、攻撃は一気に始まり、そして、終わった。
それはあまりに一瞬だった。
まず少女が、にじり寄ったモンスターの頭を、一突きで吹き飛ばした。地面に落下し割れた電球のように爆ぜた仲間の頭。あまりに速く衝撃的なその一瞬に気を取られた群れを弧を描き一気に叩き切った。
「はあああああああああ!」
少女の叫びと共に上半身と下半身を分離されるモンスター達の血しぶきと断末魔が飛散する。俺はその光景に戦慄したのか、まるで地面と尻が融合したかのように動けなくなっていた。
少女はこちらを振り返らない。一体どんな顔をしてるのだろうか?血に飢えた悪魔のような顔か?戦いで興奮した鬼のような顔か?冷静に考えてみれば俺を助けるために戦ってくれてたわけだからそんな風に怯えるのは失礼なんだが、この時の俺は、とても冷静になんてなれなかった。目に耳に肌に、現実にはない未知の情報が滝のように流れ、叩き込まれているのだから。
少女は振り返る。長い銀髪をなびかせて…俺に、微笑みを見せてくれた。
「ケガはありませんか?神様」
「神様」…そう、俺は、
この異世界の「神様」らしい。