表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/53

13 その深奥に巣喰うモノ

もしかしたらグロ描写かもしれません。注意。











 轟音。


 それはとても人の肉を打つような音ではない。

 例えるならばそう、巨人が地を踏み砕くような。

 その衝突音にふさわしい衝撃が生み出され、男二人を瞬く間に打ちのめした。


(……酷いな)


 ヒノキの様子を一瞥し、ハイガは思わず目をそらしそうになる。

 探索を終了し、帰還転送陣ゲートに急ごうとした矢先、目の前に現れた光――小さな、ガラス細工の少女のような造形の光。


 そのすぐ後をついてゆけばこの有様だ。

 様々な暴力を眼にし、時にはその対象となることもあったハイガだったが、今、眼の前の少女が負っている傷はそのどれよりも酷い。

 痛めつけるためだけの、悪意しか存在しない傷つけられかた。


 外見からだけでも大小数十の裂傷、手足は曲がってはならない方向に曲がっており、自然回復の見込みはあるまい。

 死を待つしかない。

 というよりも、いまだ死んでいないことが不思議なほどの重傷。


「なっ……何だ――!?」


 一人まだ殴り飛ばされていない男は、目の前のハイガの鬼気すら感じさせる圧に、怯えを自覚する以前に体を震わせた。


 ――殺される。


 それは『逆らってはいけないもの』であり『敵いはしないもの』であると男は野性的な本能で感じとり、とっさに逃げ出そうとする。

 が、それは無駄な努力に過ぎない。

 動き出すこともできぬ間にハイガの拳が男の顔面を捉え、異様な音をたてて吹き飛ばす。


 男は抵抗すらできずに体ごと吹き飛び、意識を消失した。

 仮に抵抗していたならば、頭部が胴体からちぎれ吹き飛んでいたことだろう。


「ヒノキちゃん、ヒノキちゃん!」


 吹き飛んだ男に目もくれずヒノキに駆け寄ったカルーアが、必死に声をかける。

 しかし反応はない。

 もう、それを成すための力さえ残ってはいないのだ。


「……ハイガさん!」


 振り返り訴えかけるカルーアの眼。

 ハイガはそれに一も二もなく頷き、倒れ臥す少女の様子を見る。


 状態は酷い。

 生命維持の要所である呼吸機能・血流機能・筋機能が完全に破壊・断絶し、生きているというよりも死んでいないと表現するのが適切な状態。

 とてもではないが、尋常な方法で助けられる傷ではない。


 なれば取るべき方策は一つ。

 リスクを織り込んだ、尋常ならざる・・・・・・方法だ。


 瞬間的に【限解保持ボックス】からある液体を展開・出現させ、それをヒノキの口元へとあてがう。

 有無を言わせずに瓶を傾け、その液体をヒノキの口に含ませようとする。

 が。


「……っ、ぁっ……!」


 ほんの一口だけ口に含まれた液体は、大量の吐血と共に吐き出される。


(手段を選んでる場合じゃない、か……!)


 ほんの一瞬の躊躇。

 しかしそれを実行しようとした矢先、既に瓶はハイガの手から奪い取られていた。


「……ッ!」


 目の前には、口移しでヒノキへとその液体を与えるカルーアの姿。


「吐き出……!」


 カルーアを制止する声を寸前で留める。

 今ここでそれを止めたところで、もう遅い。

 ならば、ヒノキにソレを飲ませてしまってからでなくば、意味がない。


 焦燥に駆られながら二人の様子を見守る。

 使いようにより、人体にとって致命的な毒にもなりうる代物。

 それがこの薬だ。


 だからこそこのカルーアの行動は、ヒノキを救うためとはいえ、あまりに無鉄砲に過ぎた。

 ヒノキとカルーアの口が離れる瞬間、カルーアはよろけた。

 ハイガはそれを抱き留め、第二の脳マギ・サーキットを展開、腕の中の少女の存在そのものを規定・観測・確立させる。

 何事も起こらないことを確認し、冷や汗とともにハイガは言葉を吐き出す。


「……カル。考えなしに過ぎるぞ」

「でも、もしハイガさんがヒノキちゃんにこうしても、私じゃハイガさんと同じようにはできませんから」

「……まあ、確かにな」


 ハイガがカルーアの代わりにヒノキに口移しで液体を飲ませたとしても、やはりハイガが危険にさらされる。

 その場合カルーアではハイガのケアができないので、正しいと言えば正しい選択ではある。

 が……


「せめて一言相談しろ……ひやひやしながら見ているこっちの身にもなってくれ」

「……緊急事態だったので。……それより、ヒノキちゃんは?」

「ああ、大丈夫だ。……ほとんど意識が無かったのが良かったんだろう」


 そこにあるのは、死に瀕した少女の姿――ではなく。

 文字どおりに・・・・・・傷一つない・・・・・ヒノキの姿であった。


「……竜の血液は、やっぱり別格か」


 その結果にハイガは安堵の息をつくのだった。







 もちろん、ただ竜の血液を口に含んだからといって、このような人智を超えた回復現象が発生するわけではない。

 順を追って説明する必要があるだろう。


 まずハイガがこの現象に気づくきっかけとなったのが、蒼鱗竜の討伐後に摂取したという最高位回復薬エリクシールにより、体の負傷がほぼ全快にまで回復したことであった。


 当然のことながら、こんなことは普通にはありえない。

 液体を飲んだだけで怪我が回復するのならば医者などいらない。

 むしろほぼタイムラグなしに全快にまで治療が完了するのだから、医者にかかるよりもよほど良い。


 もちろんのこと魔術の存在というその一点以外においては、ほとんどがハイガの居た世界に文明程度の劣るこの世界である。

 そんな液体が存在するというのは、不思議だとかそういった感想を通り越して理不尽ですらある。

 ハイガはガーレフに頼み込んでエリクシールをほんの数滴譲ってもらい、またイーリアまでの道中で様々な回復薬を購入・分析していった。


 結果、判明したのは――回復薬とは、『魔獣の血液を素として製造される、一種の魔道具マギ・クラフト』であるという事実だった。


 この世界の人間は魔術を有しながらもその活用方法を理解してはいないが、しかし僅か数例とはいえ、魔術を原理が分からずとも使用している例がある。


 それは例えば魔力計であり、回復薬だ。

 実際にハイガが製造現場を目にしたわけではないので断定はできないが、おそらくそれらの品は、誰か一人の魔術師の開発した、ただ一つの絶対的な手順により製造されているのだ。


 つまるところ、場所、時間、手順、詠唱……そういったあらゆる要素を一から十まで厳密に定め、それに完全に従った場合、魔術儀式として成立する……そうした方法により魔力計や回復薬は、魔道具と認識されないまま製造されている。


 では何故、魔獣の血液を加工することでそれが回復薬となりうるのか?

 これに関してはあまりに対象が微小すぎるために推測でしか語れないものの、ある程度の説得力を持った理論は考えられる。


 まず、回復薬による回復の形態を考えねばならない。

 回復薬による回復の顕著な点としては大きく、その即時性と完全な再生が挙げられる。


 それから導き出される回復の形態とは何か?

 それは、自己治癒力の強化でも欠損組織の再生でもなく……『再現』である。


 回復薬による回復とはつまり、『傷の修復』ではなく、『健常状態への回帰』なのだ。

 これは一見同じことのようにも思えるが、しかし実際には決定的に異なる。

 傷の修復による回復というのも人体の神秘と呼んでよい現象ではあるが、健常状態への回帰というのは起こっていることのレベルが違う。

 ある種の時間遡行。

 それはもはや、人、否、自然の在り方に反するものと言い切ってよいだろう。


 この回復薬による回復の特徴的な形態と、魔獣という存在の特性を併せて考えると、ある仮説が立てられる。


 魔獣とは、動物が魔術陣的形質を身体に有し、また獣ゆえの理性・意識の希薄さから自己規定が緩く、魔術に容易く感応し、姿形・性質までもが変質した異形である。


 それならば、だ。


 生体の状態を魔術的に不安定にさせ、揺るがせるという魔術的形質、あるいはその強力な触媒となりうる性質を持った、いわば液体状の魔術陣。

 それが血液として魔獣に流れている、という推論――それは、決してありえないことではない。


 血液は液体である。

 そこに魔術陣的な性質をもたらす構造が存在するというのは一見、考えづらいことにも思えるが、実のところそうでもない。


 例を挙げるならば、血液に含まれる遺伝情報。

 これは人間においてはDNA、二重螺旋構造をとっているが、これも弄りようによっては一種の魔術陣となりうる。


 もし、魔獣の遺伝情報そのものが、そういった性質をもたらす魔術陣を形成するような構造をとっていたとするならば――?


 無論、この仮説が成立したとて、ただの血液の状態ではそれほどに効果はない。

 しかしそれが魔術的加工により濃縮され、その形質を特化して引き出されていたら――どうなる?


 結論を述べると、それを人体が摂取すると、まず、一時的に自己規定が甘くなる。

 つまるところ、自分という肉体のありようが一時的にではあるが崩壊してしまうのだ。

 しかしそのままということにはならず、現実による魔術という虚構への修正力の働きにより、肉体は自我により規定され、認識・確立される。


 そして。

 その際に自我により認識される肉体というのは、傷のない、健常な肉体なのである。


 それはそうだ。

 大抵の人間にとっては傷とは時間をかければ治るものであるし、傷のある自分を自分の真の姿と認識する者など、そうはいない。


 もっとも、例えば腕を失うといったあまりにもわかりやすすぎる肉体欠損であれば、時間が経ってしまえば肉体もそれが正常であると認識してしまい、回復薬の効果は無くなってしまうのだが。


 この現象の面白い点は、本人に意識が無くとも肉体は正常な機能を記憶しているというところである。

 考えてみれば、傷というのも本人が治れと念じるから治るものではない。

 肉体そのものが正常な肉体の設計図を有し、細胞一つ一つがそれを忠実に再現するからこそ、肉体の回復という現象が起こるのである。


 だからこれは当然の現象といってもいいのではあるが、このためむしろ、意識のない方が回復薬の効果が高いという一種矛盾のような効果が生まれている。

 自我があればその傷の重さを当人が意識せざるを得ないため、意識が無いということは回復薬の服用においては有利となりうるのだ。


 ――と、まあこれが通常の回復薬による回復のメカニズムである。


 ハイガが今回使用した『竜の血液・・・・から製造した回復薬』に関していえば、それはさらに一線を画する効果を持つ。


 基本的に回復薬の原料となる魔獣の血液について、その魔獣が強大であればあるほどにその効果は高い。

 それは、強大な魔獣というのは大抵、元の姿とは似ても似つかぬほどの変容を遂げた個体……すなわち、より生体への干渉力の強い魔術的形質を血液に有する存在だからである。


 世界ネルヴァに数多存在する魔獣。

 その頂点に存在するのが、竜という生命体である。

 それに加えて、ハイガ自身による加工。

 この世界の回復薬の製造方法のような、かろうじて儀式として成立する方法ではない、真なる魔術師による加工である。


 中位回復薬ミドル・ポーションを製造するための原料により最高位回復薬エリクシールとほぼ同等の効果を持つ回復薬を作り出すハイガの手腕が、竜の血液という伝説級のアイテムとあわさる。

 それはもはや、生み出されるものが尋常なものであると考える方が難しい。


 出来上がったものは、ほとんど薬を通りこして毒に近いようなシロモノであった。


 生きてさえいればどれだけ体が原型をとどめておらずとも完全に回復させてしまうという、その呪いじみた回復性能はもちろんとんでもない。

 だがしかしそれ以上に、あまりにも生体への干渉力が強すぎるために、あまりに過敏に――それこそ、その時の思考にまで肉体が影響を受けてしまうのだ。


 これが願いではなく『ちょっと考えてみた』といった例にすら反応し得るのだから、少し用法を間違えればとんでもないこととなる。

 引き起こされるのはいわば肉体の幻想化――ひいては魔獣化であり、これが完全に進行したならば、もはやその存在は人間と呼べるものではなくなる。

 実際、ハイガが初めて竜血薬の生成に成功し試みに服用した時の効果などは、あえて詳細は省くものの、凄まじいものであった。


 今回はヒノキに意識が無く、また口移しでヒノキに竜血薬ドラグ・エーテルを与えたカルーアは、ハイガが直接観測・規定しなおしたために大事には至らなかった。

 しかしことと場合によっては、怒りや不安、憎悪といった感情により、ヒノキやカルーアが人間ならざるナニカに変容を遂げていたとしても不思議ではなかったのである。

 ハイガが何事も起こらなかったということに対して安堵の息を吐いたのも、無理からぬ話であろう。







「……さて。とりあえず、ヒノキは俺たちの家まで連れてくってことでいいか?」

「当然です! ……こんなところに、ヒノキちゃんを一人で放り出しておけないですし」


 ハイガがヒノキをそっと持ち上げ、ゆっくりと歩き出す。

 無論のこと、【探索地図マップ】により、戦闘は極力避けてゆくつもりだ。


 と、そこに。

 もちろんのこと目に入る、転がった三人の男たち。


「……どうします、コレ?」


 そう言うカルーアの声には、これまでに聞いたこともないほどの嫌悪感が籠っている。

 触ることすら汚らわしい、言葉にすればそんなところだ。


「ほっとくぞ……ギリギリ死んでないみたいだが、殺すほどの価値もない。勝手に魔獣に食われて死ぬだろう」


 そう言ってすたすたと歩みを進めるハイガ。

 カルーアも軽く頷き、その歩を進める。


 二人は基本的に善良ではあるものの、別に正義の味方ではないのである。

 ハイガもカルーアも自分の守りたいものを守るためならば命すらかけるが、嫌悪するモノにかける情はない。

 振り返りもせず、安らかな息を立てて眠るヒノキを大切に抱えて二人は帰路を急いだ。







◇◇◇







 迷宮第四階層。

 日が堕ち闇に呑まれ始めたその階層で、男たちは絶望に喚いていた。


「見えない、見えない……見えない! ここはどこ、誰でもいい、助けろ、助けてくれ……!」


 ぶつぶつと呟き続ける男の眼窩は血に染まっている。

 昏倒している間に、小魔獣に齧られたのだ。


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない死にたくない死にたくない……」


 がたがたと震える男は、顔面に受けた硬く握り締められた拳の感覚をフラッシュバックさせ、呆然自失だ。


「あぁぁあぁあぁぁああぁぁぁあぁ、俺の、俺の、腕……!」


 ただひたすらにわめきたてるその男の右腕は、もはや右腕だったもの――残骸と表現するほかないものとなっている。

 ここまで逃げてくる途中で噛み千切られ、そのままプライドも何もなく逃げ出したのだ。


 周囲にはこの獲物は自分のものだと牽制しあう魔獣の影が見え隠れし、おそらく男たちの命はあと十分もないだろう。

 己の生命の終わりに直面し、男たちはただ喚き続ける。


「あいつらだ、あいつらのせいだ、全部あいつらが悪い、何もしてないのに、俺たちを……」

「そうだ、なんで俺らがこんな目に……!」

「クソックソックソックソッ……俺たちが何をした……!?」


 逃れようの無い現実を前に男たちが吐き出すのは、墨汁よりもなお黒く、汚泥よりもなお粘質な、ただの憎悪だった。


「なんで、まともに迷宮に潜ってる俺らがこんな理不尽に……!?」

「俺たちが見つけた導きの燐光フェアリーも、あのクソガキのせいで取りのがしたんだ……」

「全部、全部、あいつらの……!」


 この塀に囲まれた迷宮都市に生まれ、ただ生まれ持ったものに依存し、広い世界を知らずに生きてきたが故の、どこまでも狭い視野とあくまでも自分本位な認識。

 何が罪であるのかすら理解していないのだから、後悔も反省もあるはずがない。


 あるのはただ、純粋な憎悪。


「あぁぁぁあぁぁぁ、あぁぁぁぁああぁぁぁ……! クソ、クソ、クソがぁぁぁぁ……!」


 もはや言語にすら至らぬ憎悪をひたすらにわめきたてる男たち。


 その、自分たちのことしか見えていない男たちには、


『あははは、あははははははははははははははは!』


 周囲の魔獣が一瞬のうちに霧散したことも、

 何か不可視の存在がここに現れたことも、

 夕闇がなおその色を濃くしたことも、何一つとして認識できない。


『おもしろい、おもしろいなあ……! なんだか『彼』みたいな雰囲気を感じたからこんなとこまで来てみたら、コレかよ! あはは、あはははははははは! 期待外れ、それにしても酷すぎる無様! あははははははははははは!』


 その不可視の存在の声は男たちには聞こえない。

 もっともその存在の声を聞くことのできる者など、今この世界にはたったの一人しか存在しないのだが……


『あっは、あっはははっはあははは! ……だめだ、おもしろすぎる! こいつら、死ぬ寸前に恨み言を吐いてるよ……! それ、何の意味があるの!? もっとほら、諦めずに立ち向かうとか仲間のために体を張って囮になるとか、そういうのさあ……! あ、無理か! 馬鹿だし! あはははははははは! あは、あは、あはははははははははははは!』


 ただただ憎悪を吐き出し続ける男たちを、その存在は嗤い続ける。


『ひっ、ひぃ! だ、だめだ、笑いが止まんない! はあー、はあー、はあー、はあー……ふぅー、深呼吸ー……ぶっ! ふふっ! だめだ、やっぱだめだ! いるんだなあこういう人間って! あは、あはははははははは!』


 男たちが周囲の魔獣が消え去ったことにようやく気付いたころ、その存在はようやく笑いの発作を収めた。


『ふぅー……本当に、たまーにこういう滅茶苦茶笑えることがあるから、浅い階層も捨てたもんじゃないよな……。ん? あれ? あれれ?』


 魔獣がなぜか消え去ったことに歓声を上げる男たちの様子に、その存在は不満げな声をあげる。


『えー……ちょっとちょっと、そりゃないだろー。白けるなー、ほんと白けちゃう。そういうのいらないって、安易なハッピーエンドとかなんかそういうの。……あれ? あれ? あっちゃー、魔獣どっかにポイしたの僕じゃん……』


 喜色を浮かべる男たちと対称的にテンションを下げていたその存在は、不意に声のトーンを上げた。


『……ああ、そうだ! 面白くないものは面白くすればいいんだ! つまらないおもちゃは面白おかしく作り変えればいい! ここは僕の庭、僕の遊び場だ! ああ、あったりまえのことじゃないか! なあ、そうだろう!?』


 帰還転送陣ゲートまで逃げ帰ろうとする男たちを、その見えざる手で包み込む。


『こねこね~♪』


 そして、男たちを文字通り粘土細工のように捏ねはじめた。

 男たちは疑問すら浮かべる暇もなく、その意識を消失する。

 半面、不可視のソレは楽しそうに男たちを加工していく。


『ふんふーん♪』


 ぐちゃり。

 肉を捏ね、生命を弄ぶ音が夕闇に湿り気を帯びて広がる。


 ぐちゃり。

 ぐちゃり。

 ぐちゃり。

 ぐちゃり。


 そこに現出するものは、もはや人間どころか化物と呼ぶもおぞましいナニカ。


『うんっ、上出来! やっぱり触手! 触手だよね! 手とか足とか代わりになくなっちゃったけど、まあいいや! 足なんてその触手があれば十分でしょ! ……ヤシの実みたいにぶら下がってる三人の頭もとってもステキっ! やったぜ! うわっ、かっこいいっ! でも憧れないっ!』


 ひとしきり自画自賛した後、その存在はこらえきれないとばかりに吹き出した。


『ぶふーっ! やっぱだめだ、いいところを挙げてみたけど、それ以前に圧倒的に醜悪! あはははは、あはははははははははははははは!……………………………………あーおもしろい。おもしろいなあ…………なんか、むなしい……帰ろ』


 だんだんと熱が冷めて面倒くさくなってきたソレは、造り出した怪物をその場に放置してその場を離れた。

 長大かつ膨大な触手を蠢かせながら夜の闇へと消える醜悪なる怪物のことなど既に忘れ去り、もはや興味などない。


 と、帰る途中に、ふと思い出したことがあった。


『そういえば……君に似てたアレは結局、誰の気配だったんだろうね……ねえ、クロック・・・・……?』


 奥深きに見通してはならぬ深淵を戴き、迷宮はなお、その夜の闇を深める。









はい、設定解説回及び露骨な伏線回でありました。

暗い雰囲気はこの辺りで区切りです。


さて、ここで陰鬱な雰囲気を振り払うために、大事なことをお知らせしたいと思います。

今回登場の竜血薬。

デメリットばっかりみたいな言い様ですが、使いようによってはとんでもない作用が引き起こせます。

具体的には、つまりアレです。


竜血薬ドラグ・エーテルを使えばTS展開すら可能。


大事なことなのでもう一回言います。


竜血薬ドラグ・エーテルを使えばTS展開すら可能ッ!




いや、別にそんな展開ないですけど。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ