ジャンティ
前話より短いです
「今日からお世話になります、ジャンティです。」
「うむ、まさか本当に手に入るとはな。」
バードの前には青色の髪の一人の少女がいた。彼女の名前はジャンティ。歳は十三で身長百五十cm位だろうか、くりくりの瞳が可愛い俺の奴隷三号だ。彼女を手に入れた経緯を考えると頭が痛くなる。先日、バードは大学の生徒の間で有名な酒場に出向いてみた。一部の店員や客は俺達のことを不審な目で見ていたが概ね簡単に店に入ることが出来た。これも変装のおかげだろう。そして、バード達は暫く店を楽しんで帰ろうとすると変な太っちょに出会った。太っちょは伯爵家に連なる者らしく何故かバード達を魔法で襲って来た。俺は何故襲って来たのか分からなかったので聞いてみた所、どうやら貴族特有のプライドがバード達を許せなかったらしい。そんなことを言われても此方としては困ってしまうので、うまい具合に話を逸らしつつこの貴族に罰を与えて相手が悪いことにしようと考えた。それから何を言ったのかは余り覚えていないが、上手く貴族に罪を擦り付けることが出来たみたいだ。その結果、次の日にその貴族の使者と名乗る者が来たのでミュアとネクロと相談した結果、貴族の男がしようとしていたことを少し変化させて因果応報の様な罰を提案して様子を見ようとしたんだ。しかし、結果は彼女を見て分かるように彼等は直ぐに行動を移した。
「それにしても貴族ってのは本当によく分からないものだな。それで、これからどうしようか。何か言い意見はないか? 」
「はい。まずはジャンティの扱いについて検討してみてはどうでしょうか。」
「私達の様にするのですか。売り払うのですか。それとも城に預けますか。」
バードは目の前の女性について考えた。彼女は現在バードの奴隷に成り下がっている。この状況で分かると思うが、バードが要求したことは娘を勘当して奴隷としてバードに渡すことである。他にはあの店にいた人物達関わる人達に手を出さないことと、クルヴェルトと名乗る人物個人の資産を全部、後はジャンティと仲が良い使用人を奪って、他には何をしたかな。まあ、もしかしたら命を無くしていたかも知れないし、これぐらいは当然だよな。あのぽっちゃりが成人していなかったし、かなり譲歩したと思うんだよな。まあ、そんな感じで彼女を手に入れたが彼女の扱いはもう既に決めている。
「彼女は君たちに近い扱いをするつもりだ。と言うのも彼女の役割はこれから通う大学の課題を私に代わってすることだ。」
「御主人様の課題ですか。」
「ああ、私は面倒なことが大嫌いだ。しかし、大学に行くと課題をしないと成績をくれないらしい。普通ならばジャンティは今年から大学二回生だったから一回生の課題は直ぐに終わるはずだ。終わらなくても終わらせて貰うがな。」
「かしこまりました。それでは、何時も通りでいいですか。」
「ああ、良いぞ。ジャンティ、他の者に私達の情報を漏らすことを禁じる。特に私と奴隷達でいる時の話は禁ずる。良いな。」
「かしこまりました。」
バードがジャンティに確認するとジャンティは優雅に頷いた。彼女は奴隷としての教育を受けてはいないが、貴族令嬢として教育を受けているので自分の見せ方を知っている。カラアゲ王国に置いて妻は夫の三歩後ろで人知れず自分の才覚を発揮することが最も良いこととされている。だから、貴族令嬢であったジャンティは奴隷としての教育は受けていないが、教育を受けた奴隷やメイドの様に主人を立てる動きが出来て当然だ。現に、先程の動作はまさにそれであった。
「では、リラックスをしても良いぞ。」
「はい。」
「うん。分かった。」
バードがそう言うとミュアとネクロの態度は大きく変わった。先程までバードの後ろに控えていた彼女達はバードに抱きつきだしたのだ。バードは少し苦しかったが二人を優しく撫でた。ジャンティは目を見開いて見ていた。
「ああ、驚かせてしまったな。まあ、こういうことだ。彼女達は幼い時から俺の奴隷だったから年相応に甘えてくるんだ。別に無理やり甘えさせている訳でもないから俺がリラックスしてくれと言った時は何時も通りの君でいてくれて良い。だが、普段はそういう態度はとってはいけないし、このことは勿論秘密にしてくれよ。」
バードがジャンティに話しかけている時もミュア達はバードを放さなかった。寧ろ、更に強く抱きしめてジャンティを睨んだ。
「バー君は譲らないからね。」
「こら、バー様を困らせる様なことは言わないって約束でしょう。」
「ニュアだってそう思っている癖に言わないなんておかしいよ。バー君は言わないと分からないことが殆どだって言っていたじゃんか。」
「別に今言うことではないでしょう。私だっていう時には言います。唯、バー様の前で言うことかどうかと言っているのです。それとネクロはもう少しそっちに寄りなさい。バー様の逞しい胸に私が触れられないでしょう。」
「嫌だ。ここは私の場所だもん。ミュアはそっちで我慢してよ。」
「落ち着け、ミュア、ネクロ。二人とも離れろ。俺の身体は俺だけのものだろうが。」
バードは両腕にくっついている二人をどかした。二人は名残り惜しそうにしたがバードが一瞥すると大人しく引き下がった。
「それで、ジャンティは何かしたいことはあるか。」
「急に言われましてもどうしたらいいか分かりません。と言うのが正直なところです。昨日まで学生として大学にいましたから。」
「そうか。そうだよな。いきなり奴隷にされても困るよな。まあ、何かあったら言ってくれ。それと、俺は騙されるのが大っ嫌いだから嘘はつかないでくれよ。これは命令では無くてお願いだから。」
「かしこまりました。」
ジャンティが頭を下げたのを見て、バードはミュア達に向き直った。バードはこれからのこと再びを考える。ミュアとネクロが奴隷であるから外で何かをするという選択肢は殆どない。また、バード自体が王族であるから外で活動すると目立ってしまう。でも、室内で何かしようと思っても特にやりたいことがない。
「ミュアとネクロは何かしたいことがあるか。勿論、出来る範囲になるが。」
「私はバー様と一緒に料理がしたいです。」
「ネクロはお風呂がいいかな。久々に泳ぎたいな。」
「泳ぐにしては屋敷の風呂は狭いだろう。料理か、俺は余り得意じゃないんだけどな。よし、今日は料理にしよう。ネクロの願いは今度にしてくれ。ジャンティはこの部屋で出来ることなら好きなことをしても良いぞ。そうでないならば台所に俺達がいるから聞きにこいよ。」
ジャンティはそのまま部屋にいるようなので、言うことは言って台所に向かった。台所にはキッチンメイドがいたが無理やりどいて貰った。王族の方が台所なんかに来るなんて恐れ多いとか何とか言うが、王族ですら料理を作る祭りがあるのだから台所に入ること位はどうってことないことである。
「さて、何を作ろうか。」
「一品目は唐揚げにしましょう。毎食唐揚げは必須ですからね。」
「白パンがいいなあ。パン作りって楽しいもんね。」
そう言うことでパン作りと唐揚げ作りが始まった。今日の唐揚げは醤油味だ。初めに鶏型の魔物を絞める。お肉は新鮮な方が美味しいから絞めから入れるこの環境は素晴らしい。そして、絞め終わると血を抜くために置いておく。
次はパンだ。分量を適当に計ってこねる。こねこね、こねこね。両手に体重を乗せてこねこね、こねこね。
「それで、どうしてお前達は俺に抱きついているのだ。しかも、裸エプロンで。」
「申し訳ありません。鶏を絞める時に汗を掻いてしまい、大事なメイド服を汚すわけにはいかなかったので脱がして貰いました。本当ならばエプロンも脱がないといけないことは分かっているのですが、私の裸でお目汚しをする訳にもいかず、この様な奇妙な格好になってしまいました。」
「バー君が大好きだから。」
「それは抱きつく理由になっているのか。それにそんな恰好ではパンをこねることは出来まい。」
「それは大丈夫。見てて。」
そう言うとネクロは全員の生地を一つにまとめてバードの背中にもたれながら生地をこねだした。ミュアはその光景を数秒見ると瞬時に自分の身体をバードの前に移動させてバードの腕を自身の身体に巻き付けた。
「こういうことですね。流石はネクロ、良く考えられています。」
「どうしてミュアはそこにいるの。ミュアがそこにいたら上手く捏ねられないじゃん。」
「では、私が捏ねます。バー様、少し体重を私に掛けて下さい。」
「あー、ずるい。」
ミュアとネクロが言い合いを始めたのでバードは一人で生地をこね始めた。生地を捏ねる感覚は気持ちが良い。もちもちとしていて心の安らぎになる。ミュアとネクロを自由にすると姦しく、縛ると静かすぎる。程よい騒がしさが無い日常はストレスを感じる。そんなストレスを解消する様に生地を捏ねる。
「終わったぞ。一次発酵をする為に魔法オーブに入れて置いてくれ。オーブに入れたら俺は風呂に入っているから来たかったら来てくれ。」
「そんな。」
「もう。」
バードは生地をミュア達に渡して浴槽に向かった。バードは幼い頃から風呂に入ることが好きだった。王族ならでは贅沢としてここ最近は朝に一回、夜に一回風呂に入る程だ。今朝はまさかのジャンティが家に来るという騒動で朝風呂に入ることが出来なかったので昼に朝風呂になったのだ。
「そうだ、一応ジャンティも誘ってみようか。」
バードは自分の部屋にいるジャンティの元に向かった。
「おーい、ジャンティ。風呂に入るが一緒に入るか。」
床に座っていたジャンティはバードを見ると目の輝きが薄れたが、口の端をぎゅっとかみしめて口を開いた。
「かしこまりました。ご一緒させて貰います。」
バードはジャンティの姿が少し変に思ったが気にせずジャンティを連れて風呂に向かった。ジャンティを連れて脱衣所に向かうと当然ミュアとネクロがいた。屋敷のお風呂は一つしか無いので当然彼女達とも出会うのだが、彼女達を見たジャンティはバードの裾を握りしめて震える声で言った。
「で、殿下。一生のお願いです。初めてだけは、初めてだけは、せめて二人っきりにさせて貰えませんでしょうか。」
バードはジャンティの言葉が理解出来なかった。元伯爵令嬢が風呂に入るのが初めてだと言ったのだ。そんなことがあり得るのか。もしあり得ると言うのなら酷過ぎると言うほかない。普通の貴族であれば幼い時から何度も社交パーティに出ていて、様々な匂いが服や身体に染み付く。それが全て悪い匂いとは言わないが、混ざった匂いというのはあまり良くない。そして、それは貴族の世界では相手をいじめる口実になる。
「よし、分かった。だが、最初だけだぞ。ミュアやネクロだって入りたいんだから。」
バードはジャンティに小声でそう言うと、ミュアとネクロに適当な理由をつけて部屋に戻らせた。
「では、入ろうか。」
「はい。」
バードはジャンティの手を握って脱衣所に入った。ジャンティは貴族令嬢にも拘らず自分で服を脱ぐことが出来た。バードはそのことを関心しながら自身も服を脱ごうとするとジャンティと視線が合った。ジャンティは風呂に入る前から顔を真っ赤にしていたが、バードは特に気にすることも無くジャンティの手を握って浴場に向かった。
「ジャンティは初めてなんだろ。俺がゆっくりと教えてやるよ。」
「ありがとうございます。」
バードはジャンティに風呂の入り方を一通り教えた。教えたことは身体を洗うことと、湯銭にはゆっくりと入ることなど、本当に簡単なことだけだ。ジャンティは恥ずかしがっていたけど、覚えは悪く無いようで直ぐにルールを覚えた。実際、ジャンティは奴隷なので風呂で入る時は主人、つまりバードと一緒に入らないといけないので基礎以外はその時に教えれば良いので今回教えた内容が簡単過ぎただけかも知れないが。
「ふうー、どうだ。風呂は良いものだろう。俺は幼い時から風呂が好きでな。嫌な気分の時は何時も風呂でお湯と一緒に嫌な気持ちを流していたものだ。」
「そうですか。殿下も辛いことがあったのですね。」
「世の中大なり小なり辛いことがあるものだ。まあ、俺のことはどうでもいい。俺のことよりもジャンティのことだ。昨日まで貴族令嬢だった貴女が急に奴隷になったのだ。奴隷にした張本人が言うことではないが、貴殿の思いの丈をぶつけてくれないか。」
バードはジャンティの顔を自身の目の前に移して言った。ジャンティは目を逸らそうとしたが、バードの有無を言わせない目力によって強引に目を合わせられた。
「殿下、それは少し狡く思います。私を無理矢理奴隷にした後に気持ちを言えと言うなど。しかも、ここは浴室で私は裸です。何時でも殿下は私を好きな様に出来るのですよ。私が殿下に意見を言うことがどれだけ勇気のいることだか分かりますか。」
ジャンティは目を潤ませながらバードを睨んだ。その瞳には決意と言うよりも諦めが強く浮かんでいる。だが、彼女の気持ちも分からなくはないだろう。自信の持っているものが全て失われたのだ。恨み辛みは生まれるかも知れないが、その感情を抱く人間は活力がある人間なのだ。ジャンティは風呂に入ることによって、少し心のゆとりが出来たが出来ることは愚痴の様にバードに文句をいうだけだ。
「理解は出来るが実際のところは分からない。人の感情は知っていると思うことは出来るが真に知ることは出来ないと俺は思っている。貴殿が俺に対して思っていることは恨みや憎しみ、妬みと言ったものがあるとは思うがそれが全てではないと思うし、それが全てだと思っている。色々言っているが、要するに分からないということだ。」
「そうですか。殿下はおもてになりますか。」
バードは突然の話題転換に疑問を抱いたが特に文句を言う訳でもなく質問に答えた。
「俺がもてるかどうかか。分からないな。王子としての俺はもてるかも知れないが、俺個人の人格を見て俺のことを好いてくれる人間は少ないと思う。だから、もててはいないと思うぞ。それがどうかしたのか。」
「いえ、少し気になっただけです。」
「ふむ、そうか。ジャンティは俺のことはどう思う。正直な気持ちを言ってくれて構わない。違うな、正直に言ってくれ。」
「私は殿下のことを好いてはいません。でも、嫌っているかどうかと言われるとそうでもありません。殿下が私のことを無理やり奴隷にしたことはとても悲しいです。ですが、憎いかと言われれば違います。今の私の状態を一言で言うと諦念だと思います。私の人生が良い方向に向かう可能性は低いと思っていました。私は生まれた時からずっと政治の道具です。お茶会に行っていたのもそう、大学に行っていたのもそう、殿下の奴隷になったのだってそうではないですか。私なんて所詮そんなものなんですよ。すいません、自分のことばっかりで。殿下の質問に答えることが出来ていませんね。」
「いや、よい。ジャンティの気持ちを知れて良かった。それよりももう少し近くよってくれ。」
バードはジャンティを自分の近くに寄せて抱きしめた。王族が使う為に大きく作られた大浴場の一角で抱き合うバードとジャンティ。奪う者と奪われた者の気持ちが解けて漂っていた。
「バー君、長湯し過ぎ。もうパンが発酵し終わったよ。」
「バー様、大丈夫ですか。長湯は御身体に触りますから気をつけてくださいね。」
「ああ、ありがとう。ジャンティと少し話をしてな。ジャンティは中々良い女だと分かったよ。なあ、ジャンティ。」
「バード様、ご迷惑をお掛けしました」
ジャンティはバードにもたれかかりながら頭を下げた。その姿を見たミクロとニュアはジャンティを睨んだがバードはそんなことは知らん、と言った顔をしてジャンティの膝の後ろと首の後ろに手を入れて抱いた。ミュアとネクロは何かを言おうとしたが、その前にバードが口を開いた。
「今日奴隷になったばかりでジャンティは疲れているみたいだ。俺は部屋にジャンティを連れて行ってベッドに寝かそうと思う。そうじゃないとお前達と料理の続きが出来ないからな。ミュアは他の使用人に俺の部屋に近づかない様に言ってくれ。ネクロは料理の準備だ。美味しいものを作るぞ。」
「うん! 」
「はい、バー様! 」
バードはジャンティを自室のベッドに運びこんで台所に移動した。
「ミュア、ネクロ、我慢してくれてありがとうな。」
「別に大丈夫だよ。」
「はい、今日から一緒に住むことになったのですから少しは譲らないといけませんからね。」
「そう言って貰えると助かる。では、作ろうか。」
バードはネクロとニュアの行動と発言の違いに疑問を持ちながらもそのことについて突っ込むことはしなかった。藪蛇だと思ったからだ。バード達が風呂に入っている時間やジャンティを寝かしつける時間が長くてパン作りの工程は大分進んでいた。現在、バード達が行っているのはパンの形を作る作業だ。パンの形を作るのは個性がでると思う。趣味、手先の器用さ、性格も分かる。バードはパンの形に特に興味が無いので丸くしただけ、ミュアは花、ネクロはハート型にパンを作っていた。
「ジャンティのことはどう思う。」
バードはパン作りの最中の何てことない話題にジャンティの話を出した。ジャンティの話はどちらにしろしないといけない話題だし、第一印象は非常に大事だと思っているからだ。
「そうですね。私は貴族令嬢については基本的にジャンティ以外には一人しか知りませんけど、その人とのイメージが強かったばかりにギャップが凄いですね。ですから、まだ戸惑いが大きいですね。」
「ネクロはあんまり好きなタイプじゃないかな。あの人は何だが自分が悲劇の主人公みたいな思ってそうだし。後、あいつは多分そんな自分に酔っている。 「貴族から奴隷に落とされた私、周囲の目が羨望から嘲笑に変わる。でも、仕方がないの。私は無理矢理奴隷にしてでも欲しい女。殿下は顔も悪くないし、お金も持っている。私に首ったけだから色々とお願いしちゃおっかな。」 とか思っていそう。バー君の目にはネクロしか映っていないのに。これだから元お嬢様は。」
「ネクロの意見は概ね分かります。しかし、間違いもあります。バー様の心は私が掴んでいます。」
「はいはい、もう止めろ。お前達の気持ちは分かっているから。もう少し落ち着け。」
バードはジャンティを迎え入れたのは間違いだったかな、と思ったが直ぐに首を振る。どうせ大学に行くと王族であるバードに近づこうとする者は何人もいる。その度にこんな風に嫉妬話を聞かされたら流石のバードも辟易してしまうだろう。今でさえも少し面倒になってきたのだから。
「まあ、大体お前達がジャンティに対してどういう感情を抱いているかは分かった。しかし、そんな感情を抱いていても一緒に住むという事実は変わらない。ここは腹をくくって話す機会を作った方が良いだろう。」
「何するの。」
ネクロの質問にバード笑みを浮かべて一つの案を出した。
「食事会をしよう。奴隷少女だけの食事会,奴隷女子会を。」
「私達だけですか。」
「えー、バー君は参加しないの。」
ミュアやネクロがバードが参加しないことに不満がありそうだったがバードはこの意見を覆すつもりは無かった。この方法が一番楽だとバードは思っているのだ。幼い時からバード達は一緒に生活をしていた。その中でお互いの意見が食い違うことは何度も何度もあった。その一つ一つは決して大きな食い違いでは無かった。しかし、それが積み重なっていくと必ず爆発し、その衝撃は人間関係に大きな罅を与える。そんなことになる位ならば故意に小爆発を何度もさせた方が良いのだ。
「俺は参加しない。女同士だけで話したいこともあるだろう。というか、俺に見せたくない会話だってあるだろう。俺は半ば無理矢理お前達に嘘をつかせなくしているが、お前達が見せたくない姿だってあるはずだ。」
「私達はいつでもバー様に見て頂いても構いませんよ。」
「ミュアは分かっていないよね。女の魅力は分かりそうで分からない所にあるってことを。」
ネクロが挑発する様にミュアに言うと、ミュアは目を細めてネクロを睨みつけた。
「では、ネクロはバー様に何か隠し事をしているのですか。」
「していないよ。でも、それをしている様に見せて焦らすのが良い女なんだよ。ミュアは分かっていないよね。」
「そうですね。ネクロの考えでは多くの人から好感をもたれるでしょう。しかし、本当に好きな人からは好かれることは無いでしょう。ネクロは好きな人に合わせることが出来ないのですから。その辺私は違います。私はバー様一色、バー様も私一色、二人は二人で一つなのです。常識といういつ崩れるか分からないもので判断しようなどと考えているネクロには理解出来無いでしょうね。」
「何を。」
「何ですか。」
「うるさいぞ、お前達。兎に角女子会を開くからある程度お互いの心を理解できる様にしておけよ。」
バードは二人の話を終わらせて台所を抜けた。